- レジオネラニュース
ふろでの肺炎感染にご用心相次ぐレジオネラの死亡事故
2002/01/30朝日新聞 によると、東京都内の銭湯を利用した70代の男性が、レジオネラ肺炎で死亡した。病院や福祉施設などで相次いだ死亡事故を受け、厚生労働省は指針を出し、業者に水質や設備の管理の徹底を呼びかけている。それでも繰り返される事故。「自衛」する方法を専門家に聞いた。 「レジオネラは泥の中や川、沼などに普通にいる。菌に好ましい環境になるとすぐに増殖する。消毒と定期検査が欠かせません」と東京都立衛生研究所多摩支所の矢野一好・微生物研究科長は話す。 20〜50度で繁殖し、36度前後が最も増殖に適している。菌に汚染された水が呼吸器系に入ると、肺炎などを引き起こす。 ○危険な湯の誤飲 94年に都内で空調設備が原因と思われる集団感染があったが、入浴中に気分が悪くなっておぼれたり、湯を飲んだりした例が多い。ビルの屋上の冷却塔、給湯設備、循環式浴槽、ジェットバス、加湿器、噴水などが要注意だ。 96年に東京都内の病院で新生児が、98年に都内の特別養護老人ホームでお年寄りが、それぞれ感染して死亡する事故が起きた。厚労省は99年に「レジオネラ症防止指針」を改訂し、さらに00年12月には、公衆浴場の水質基準を都道府県に通知した。レジオネラが100ミリリットル当たり10個未満とし、こまめに水を交換すること、塩素消毒をし、塩素残留濃度を1リットル当たり0.2〜0.4ミリグラムに保つのが望ましいこと、年1〜4回以上の水質検査を行うことなどを定めた。 それでも事故が繰り返されるのは「情報が現場に行き渡っていないこと、消毒が不十分だったり、安全確認の検査を怠っていたりなどがある」と矢野さんは指摘する。 銭湯で死亡した男性が入っていた薬湯からは基準の約8倍の菌が検出されたという。漢方薬や入浴剤が入っていると、塩素消毒がしにくかった可能性もある。 各種の成分を含む温泉水も化学反応を起こすため、塩素消毒がむずかしいことがある。オゾンや紫外線を利用した消毒法が使われるが、「効果についてこまめな検査が必要だ」と矢野さんは強調する。 ○窓口作りも課題 レジオネラの潜伏期間は数日から1週間。健康な大人はほとんど心配はないが、高齢者や乳幼児、病人が感染すると、肺炎につながり、高熱や呼吸困難、意識障害を起こし、生命の危険を伴う。国内で79〜99年に報告された患者は261人で、欧米に比べて少ないが、東邦大の山口恵三教授(微生物学)は「最近7、8年にうちだけで200人以上見つかっている。実際にはもっと多いのでは」と話す。 しかし、いたずらに恐れることはなく、早期に適切な抗生物質を使い治療をすれば治るという。 レジオネラは特殊な検査でしか見つからないので、診断がむずかしく、治療が遅れる原因となりやすい。 「かぜやインフルエンザのような症状が出たとき、温泉や銭湯で誤って湯を飲んでいたら、医師にレジオネラの可能性もあることを伝えて」と山口さん。 専門知識のある医師が少ないのも問題で、医療側の窓口作りも課題だという。 ○衛生管理点検を 専門家によると、自衛策は難しいという。 銭湯やサウナなどの施設を利用するときは、衛生管理が行き届いているかどうかなどをチェックするのが理想。毎日、湯を交換する通常の家庭用のふろは、あまり心配ないが、貯湯式の給湯器は、「できれば55度以上の高温に設定し、使うときに水と混ぜて適温にするといい」と矢野さん。 96年当時8割でレジオネラが見つかった循環式浴槽は、メーカーの改善で検出率は減っているが、厳格な衛生管理が必要だ。加熱しない超音波式の加湿器は、毎日タンクの水を取り換え、絶えず内部を洗浄することを勧める。 各都道府県の衛生研究所などでは一般からの水質検査も受け付けているところもある。東京都なら、衛生研究所のほか、都予防医学協会、東京顕微鏡院、日本食品分析センターなどで、費用は1万〜3万円程度かかる。最寄りの保健所などで相談できる。 〈銭湯での死亡事故〉 東京都板橋区の銭湯で昨年12月27日、77歳の男性が、漢方薬の入った薬湯に入浴中に意識を失って倒れ、近くの病院で治療を受けたが、1月5日に肺炎による呼吸困難で死亡した。板橋区保健所の検査で、薬湯からレジオネラが検出され、男性の体内からみつかった菌とDNAが一致し、感染源と断定された。