- レジオネラ文献
院内感染で判明したレジオネラ菌による給湯系汚染とその後の対応
- 著者
- 中村 麻子, 島崎 信夫, 田中 梨恵, 飯田 秀夫
- 出典
- 日本環境感染学会誌, Vol. 33, No. 5, 193-202 (2018)
DOI:https://doi.org/10.4058/jsei.33.193
エバンス症候群に対しプレドニゾロン45 mg/日で治療を受けていた79歳女性が,プレドニゾロン投与9日目に発熱した。胸部X線写真で肺の陰影を認め,尿中レジオネラ抗原陽性であったことからレジオネラ肺炎と診断した。院内レジオネラ感染の疑いで給水・給湯設備を調査したところ,5階から10階の全病棟の給湯設備からLegionella pneumophila serogroup 1が検出された。その後,患者由来のレジオネラの遺伝子型を決定し,給水設備から検出されたL. pneumophilaと同一の菌株であることが確認された。レジオネラの院内感染を排除するため,温水洗浄とシャワーホースの消毒,すべての温水蛇口の交換,病棟ケア制限を見直した。その後,無作為に選んだ82箇所でフラッシング後にレジオネラの培養検査を実施した。1箇所では分岐配管が認識されておらずフラッシングが不十分だったため,L. pneumophilaが継続的に検出されたが,それ以外は不検出であった。最終的に,滞留水とともにフラッシングが配管全体に行き渡ったことで,L. pneumophilaが存在しないことを確認した。また,退院・転院患者の追跡調査,病院職員の健康調査を実施した。当初の患者以外に新たな患者は発生しなかったが,給水系のレジオネラ汚染を定期的に監視するための検査時に,使用頻度の低い温水蛇口からL. pneumophilaが再び検出された。これはバイオフィルムからの汚染が原因と考えられる。これまでの経験から,給水系からL. pneumophilaが検出された場合,配管内でのバイオフィルム形成により汚染が持続する可能性があるため,長期的な対策を講じた上で,汚染除去に努める必要があることが示唆されている。この経験に基づき,当院ではマニュアルを作成した。