2025.11.26
- レジオネラ文献
レジオネラ肺炎の院内発症を契機とした
病院給水系のレジオネラ属菌汚染の調査と除菌
- 著者
- 中村 麻子, 島崎 信夫, 田中 梨恵, 飯田 秀夫
- 出典
- 日本環境感染学会誌, Vol. 33, No. 5, 193-202 (2018)
DOI:https://doi.org/10.4058/jsei.33.193
2013年9月,Legionella pneumophila serogroup 1による院内感染型レジオネラ肺炎の集団発生を認めた。調査の結果,病室の給湯水から採取したレジオネラDNAをパルスフィールドゲル電気泳動で分析したところ,患者から採取した喀痰のレジオネラDNAのバンドパターンと一致したことから,感染源は給湯系と疑われた。また,汚染された給湯系を調査したところ,混合水栓のひとつからL. pneumophila SG1が検出された。除菌対策として,消毒後に配管内の水温の低下を防ぐため,湯を連続的に排出した。さらに,不要な配管を撤去したことで除菌に成功した。しかし,40℃の混合水から再びL. pneumophila SG1が検出したため,92箇所について調査した。その結果,23箇所で同菌が検出され,給水系の汚染が認められた。給水系の除菌対策として,受水槽に次亜塩素酸ナトリウムを継続的に添加し,混合水栓の遊離残留塩素濃度を0.87 mg/Lに維持した。さらに,最遠位混合水栓から6分間,病室洗面台全水栓から1分間毎日放水を実施した。これらの対策により,遊離残留塩素濃度は平均0.81 mg/L(P<0.01)に上昇し,同一菌の検出率は13.6%から0.4%(P<0.01)に減少し,対策の有効性が認められた。本研究は給湯系でレジオネラ汚染が検出された場合,給水系が汚染されている可能性も考慮して調査を行う必要があることを示唆している。