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2025.11.26
  • レジオネラ文献

歯科用ユニットに潜在するレジオネラ感染のリスク

著者
伏見 華奈, 齋藤 敦子, 更谷 和真, 土屋 憲, 池ヶ谷 佳寿子, 加瀬澤 友梨, 徳濱 潤一, 原田 晴司, 柴田 洋, 髙森 康次, 増田 昌文
出典
日本環境感染学会誌, Vol. 33, No. 4, 136-142 (2018)
DOI:https://doi.org/10.4058/jsei.33.136

日本では歯科ユニットから供給される水の水質基準は確立されておらず,歯科ユニットのレジオネラ汚染に関する報告も見られず,医療従事者の汚染に対する関心が低いことが伺える。当院では院内感染対策の一環として,1997年より定期的に院内給水系のレジオネラ属菌環境調査を実施しており,2014年には歯科ユニットからの給水も環境調査の対象に加えた。その結果,2号歯科ユニットからは60 CFU/mLのレジオネラ属菌が検出された。部位別に見ると,うがい水,低速ハンドピース,ユニット内のエアーウォーター,スリーウェイシリンジなどからも1,000 CFU/mLを超えるレジオネラ属菌が検出された。対策として給水の温水器の停止,回路のフラッシングを実施し,希釈次亜塩素酸ナトリウムを通水した。しかしながら,レジオネラ属菌は検出限界以下にならず,ユニットの構造上,高温殺菌や高濃度消毒剤の使用といった対策を講じることができず,やむを得ず歯科用ユニットを交換した。近年のレジオネラ感染症は,感染源が明らかでない単独の感染が報告されていることがほとんどであり,これまで認識されていなかった感染源が存在する可能性が示唆されている。歯科ユニットからの給水によるエアロゾル発生は,レジオネラ感染のリスクを極めて高くする可能性がある。汚染防止,歯科ユニットからの給水による汚染抑制,レジオネラ感染防止のための適切な管理基準や管理方法を確立するため,歯科ユニットメーカー,使用管理者,行政が協力して取り組んでいくことが期待される。