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2015.12.11
  • レジオネラ文献

循環式浴槽におけるレジオレラ症発生防止対策

著者
株式会社ユニ設備設計
小川正晃
出典
空気調和衛生工学 第77巻 第2号

我国初のレジオネラ症防止指針は、1994年3月に旧厚生省の監修で(財)ビル管理教育センターによって、公表されたが、内容は冷却塔の冷却水における防止対策が中心であった。その後、(財)ビル管理教育センターに“レジオネラ症防止指針作成委員会”が設置されて給水・給湯設備や循環式浴槽設備に関する対策が盛込まれた指針が1999年11月にまとめられた。翌2000年には“公衆浴場における水質基準等に関する指針”、“公衆浴場における衛生等管理要領”、“旅館業における衛生等管理要領”が公布された。その内容は、水質基準にレジオネラ属菌の項目を追加するとともに、衛生等管理要領を全面的に改正したものであり、従来の循環式浴槽設備の計画・設計に大きな影響を及ぼすものであった。その循環式浴槽に関する内容をまとめると、循環ろ過システム内に生物膜(バイオフィルム)が定着することを防止し、定着が認められた場合には即座に排除できる構造・設備が必要であり、エアロゾルを発生しやすい設備・装置は望ましくないとしている。では、具体的にはどのような対策をとればよいのか。

■浴槽水および上り用水(湯)の水質は2000年に改正された水質基準に適合するよう管理すること

■60度以下の貯留槽などは必ず消毒設備を設ける

■原湯(水)配管を直接ろ過循環配管に接続しない

■浴槽のろ過循環回数を1回/時間以上にすること、また逆洗浄機能のないカートリッジろ過器などは使用しない

■浴槽は常に満水状態を保ち、浴槽に常時新鮮な原湯(水)を補給してオーバーフローさせ、汚濁物質を排除すること

■浴槽水面の上部から浴槽に循環水を流すことは誤飲はもとよりエアロゾルも発生するので避ける

■ろ過器内は微生物が定着しやすいため、常に消毒剤をろ過器の直前に注入してろ過器内の消毒をすること

■回収槽は汚染物質が溜まりやすく、レジオネラ属菌が繁殖しやすいので消毒装置を設置するとともに回収槽の消毒・清掃が行えるような十分なメンテナンススペースを確保する必要がある

■気泡風呂やジェット風呂など微細な水粒を発生させる設備を設置している浴槽は毎日完全換水することまた、気泡発生装置やジェット噴射装置などは、小規模の浴槽のみに設備することが望ましい

露天風呂は土ほこりなどとともにレジオネラ属菌が入りやすく、汚染されやすいので汚染された場合に他の浴槽に波及しないように配慮したものにするその他、指針には明記されていないが、その目的を考慮すれば下記のことも計画設計上留意する必要がある。

衛生的環境の保持を考えれば、浴槽にはそれぞれ単独にろ過器を設置することが望ましい□浴槽内に湯が停滞する滞留域ができないように、循環吐出口と吸込み口の位置を決定する□清掃時に浴槽底面の吸込み口から循環配管に薬剤や清掃汚水が流れ込まないような処置が必要である。

常時連続的に塩素剤を注入することが望ましく、浴槽水の遊離残留塩素を検出して自動的に塩素剤を注入する自動塩素注入装置を設備することが望ましいこのように、適切な設備システムの構築と的確な知識がレジオネラ症防止には、不可欠である。今後もまだまだレジオネラ症発生防止対策に万全を期す必要がある。