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2015.12.11
  • レジオネラ文献

レジオネラ汚染対策におけるアメーバの重要性

著者
麻布大学環境保健学部微生物学研究室 古畑勝則
出典
Bokin Bobai Vol.30 ・4 p217~223、2002

下記の「レジオネラ属菌の通性細胞内増殖性」、「レジオネラ属菌とアメーバの生息状況」、「アカントアメーバによるレジオネラ属菌の取り込み」、「環境中でのレジオネラコントロールにおけるアメーバの影響」の4つの視点から、レジオネラ汚染対策におけるアメーバの重要性について説明。レジオネラ属菌とアメーバの共生は明白で、衛生学的にレジオネラ属菌対策を行うには、アメーバの存在を無視しては有効な対策は取れないとまとめている。

●レジオネラ属菌の通性細胞内増殖性レジオネラ属菌は捕捉されたアメーバなどの原生動物の細胞内でも増殖する特性があり、これを通性細胞内増殖性という。レジオネラ属菌は最終的には宿主である原生動物の細胞を破壊して水中に拡散。このときの増殖速度は培地培養より数倍早いと言われており、この性質が臨床分野においてレジオネラ症の治療を困難にしている。レジオネラ属菌に感染すると、一次免疫である白血球やマクロファージなどの貪食能を有する細胞が活性化されレジオネラ属菌を取り込むが、レジオネラ属菌はこれらの細胞内でも増殖し、症状を悪化させる。早期診断の後レジオネラ属菌に有効で、しかも細胞透過性がある抗菌薬を一次選択剤として処方しなければ、レジオネラ肺炎の治癒可能性が低くなる。

●レジオネラ属菌とアメーバの生息状況新版レジオネラ防止指針記載の空調用冷却塔水におけるレジオネラ属菌とアメーバの検出状況では、180試料の90%からアメーバが検出されている。アメーバ検出群ではレジオネラ属菌検出率は43%であったのに対し、アメーバ不検出群では17%と低かった。他の調査結果でも同様であり、レジオネラ属菌が多数生息しているような人工的水環境には宿主となるアメーバが高頻度で生息し、その共生関係は明らかである。

●アカントアメーバによるレジオネラ属菌の取り込みアカントアメーバは土壌に広く分布し、自然環境ではレジオネラ属菌の宿主となる原生動物で、レジオネラ属菌はアメーバに捕食されることによって、生理活性を維持しているものと考えられる。Steinertらの報告では増殖できない状態、VNC(Viable but nonculturable)状態のL.pneumophilaをアメーバとともに培養するとアメーバの食胞内で増殖し、培地上にコロニーを形成するようになった。また、このときのL.pneumophilaはヒトのマクロファージ食胞内での増殖能や動物への感染発症能力が回復していた。この事により、レジオネラ属菌の培地上でのコロニー形成能とヒトに対する病原性の発現は正相関であることを示唆している。

●環境中でのレジオネラコントロールにおけるアメーバの影響水環境に一旦定着したレジオネラ属菌は長期に渡り生息し続けることが知られている。このため、冷却塔使用中は殺菌剤を継続的に添加し、レジオネラ属菌を抑制することは、レジオネラ症防止指針で奨励されている。レジオネラ属菌がアカントアメーバと共存する条件下においては、単独の場合に比較して、殺菌剤に対する抵抗が高まっているとの報告がある。