2025.11.26
- レジオネラ文献
当院におけるレジオネラ定期環境調査と
Legionella pneumophila serogroup 5による給水汚染対策
- 著者
- 伏見 華奈, 土屋 憲, 池ヶ谷 佳寿子, 加瀬澤 友梨, 齋藤 敦子, 更谷 和真, 徳濱 潤一, 原田 晴司, 髙森 康次, 柴田 洋, 増田 昌文
- 出典
- 日本環境感染学会誌, Vol. 33, No.2, 56-61 (2018)
DOI:https://doi.org/10.4058/jsei.33.56
当院では院内感染対策の一環として給水系統のレジオネラ属菌環境調査を年4回定期的に実施している。救急センターがある1階給水系統からLegionella pneumophila serogroup 5が検出されたため,滞留水対策を実施していたが繰り返し菌が検出されていた。レジオネラの定着による系統的汚染が疑われ,救急センター敷地内の給水系統全箇所を調査し,原因究明と対策を実施した。その結果,12箇所でL. pneumophila SG5が検出され,調査時の水温は7箇所で30℃以上であった。これは,配管経路が地下の機械室およびボイラー室を通っていたことが原因と考えられた。対策として配管経路を改修し,水温の上昇を抑制することでレジオネラによる系統的汚染を制御した。解体した給水管の内腔には錆が堆積しており,これがレジオネラ増殖の温床となっていると考えられた。定期的な環境細菌調査においてレジオネラが検出されたが,適切な対策を速やかに講じることで,給水系の系統的汚染を抑制することができた。当院ではレジオネラによる院内感染は発生していないが,万一発生した場合は患者への不利益となるだけでなく,病院経営にも大きな影響を与える可能性がある。病院管理者はリスク管理の一環として,給水系におけるレジオネラの検出状況を日常的に監視し,早期に検出限界以下となる対策を講じることで,レジオネラ症のリスク低減に努める必要がある。