“環境対策に適応したシステムが
製紙業の未来を変える”

　近年、世界規模でのSDGsへの取り組みが本格化する中、製紙各社は環境対策の一環として節水を推進している。しかし、節水のために製造ラインに使用する水の再利用（クローズドシステム化）が進むことで、さまざまな課題も生まれていた。例えばピット内の酸化還元電位低下は、硫化水素濃度の上昇に影響を及ぼす。

また嫌気環境の原因となるスライム・有機酸由来のBOD（生物的酸素要求量）の上昇により、有機酸・硫化水素による臭気問題が発生してしまうなどさまざまな問題が発生している。このような製紙工程における水処理課題の解決を目指して、アクアスは独自システムの開発に挑んだ。
　アクアスクリンジェットは、専用エダクターをピット内底部に設置し、負圧を利用して3倍量の水を噴出する。その効果で水流をつくり出し、スラコン（スライムコントロール）剤を循環させてスライムの発生を抑制するというシステムだ。
有機物であるパルプから製造される紙製品は、バクテリアが増殖しスライムが発生しやすい。さらに節水のため製造工程内で使用する水をリサイクルして使用することで、こうした問題がより発生しやすくなっていた。このシステムを導入することで、スラコン剤を約20％削減できたお客様もある。またこのシステムには電力が不要という省エネの面もあり、有機酸由来のBOD削減による環境負荷の低減や作業負荷・安全性の向上を実現など、さまざまなメリットもあるという。アクアスクリンジェット設置にあたり、ピットの形状、白水の流入出経路、最適なエダクターの種類、設置方法、設置向き、水量、水質などを分析し、シミュレーションをするという独自のノウハウがある。
「アクアスクリンジェットは、環境負荷の低減と運用の効率化に加えて、堆積物削減によるピット内部の硫化水素換気時間の削減にも貢献します。清掃作業を軽減できるので、清掃中の熱中症や転倒事故防止にもつながります。製紙工程における水処理ニーズに最適化したシステムなのです」と、アクアスの営業担当者である水島は語る。

“環境から安全面の改善まで
全国に広がるアクアスクリンジェット”

　2021年、アクアスとはこれまで取引実績のなかった製紙会社から相談が寄せられた。国で定められている排水放流基準にあるBODの基準値が引き上げられるため、基準ギリギリの現状を改善し、地域住民の苦情である環境臭気の課題を解決したいという。本来、こうした課題には時間をかけて取り組んでいくが、基準変更への対応は急を要する。

そこで工場内を調査し、最も汚れているピットを特定して水質分析を行って最適な薬品を準備。そのピットにアクアスクリンジェットシステムを設置することになった。200㎥もある巨大なピット内に水流をつくり、スラコン剤できれいにしていく。結果として、総合排水槽でBOD約10％の削減、臭気の原因である硫化水素・有機酸の量を90％削減することができた。そして排水のBOD負荷の低減と地域住民からの環境クレームを解消するだけでなく、清掃の手間が減って、安全面の改善にもつながったのだ。「環境課題を解決した時に、お客様から手を握っていただき本当に感謝していると言われた時は、大きな喜びがありました。その後、この実績を踏まえてアクアスクリンジェットシステムに関する提案をしたところ、さらに多くのお客様を紹介してもらうこととなり、全国の製紙会社への拡販につながったのです。」

“地域密着型営業が目指す
製紙業界水処理No.1シェア”

　アクアスのバリューの1つは、地域密着型営業だ。全国展開の支店でお客様とのコミュニケーションを深め、要望や課題をしっかりと把握することを大切にしている。そのことにより、解決のための前提が立ちあがってくる。「何よりもお客様に共感することです。脱プラスチックが進み、紙製品は増加傾向にあります。しかし、一方でサステナブルな社会の実現に向けて環境対応の強化・節水も必要不可欠です。

紙製品の使用用途によってさまざまな加工を施していく中で、ますますアクアスクリンジェットシステムのニーズは高まってくるはずです。」
　2019年に開発されたアクアスクリンジェットはバージョンアップを予定しており、さらなる効率化が期待できる。「この撹拌添加システムの有用性を知ってもらえれば、製紙業界で広くお役に立てると思います。全国の製紙会社の中で水処理薬品No.1シェアを目指し、将来は業界のNo.1メーカーになることを目標にしています。」環境対策に貢献する撹拌添加システムであるアクアスクリンジェットは、ますます成長を続けていく。