2015.12.11
- レジオネラ文献
家庭用24時間風呂が感染源と特定できたレジオネラ肺炎の1例
- 著者
- 石川章1)、岡田純1)、近藤啓文1)、高山陽子2)、砂川慶介2)、江成唯子3)、石井良和4)
1)北里大学医学部内科、2)北里大学医学部感染症学、3)(財)北里環境科学センター、4)東邦大学医学部微生物学教室 - 出典
- 感染症学雑誌第78巻第10号
目的
一般家庭用循環式浴槽水が感染源であると特定できたレジオネラ肺炎の成人例を報告すると共に、レジオネラ症の診断・治療における臨床上の問題点について考察する。
症例
・88歳女性
・主訴:発熱、呼吸困難
・生活歴:1997年頃に購入した家庭用24時間風呂に1日2〜3回の入浴習慣がある。浴槽水の交換はおよそ1ヶ月に1回。
・経過:呼吸困難、発熱とともに嘔気、嘔吐が強く某病院に入院し、意識障害が出現したため等病院を紹介受診、入院。
結果
入院後、重症肺炎、急性呼吸促迫症候群を呈するRAと診断。問診にて家庭用24時間風呂の入浴習慣が判明し、レジオネラ肺炎が最も強く疑われた。その後、喀痰検査結果からレジオネラ肺炎と確定診断した。erythromycin 1、500mg/日の点滴静注を開始したことで、すみやかに急性呼吸促迫症候群に改善がみられた。感染源として患者喀痰由来株と浴槽水由来株を比較検討したところ、ともにLegionella pneumophilaであり、また相同性80%であったため起源が同一である可能性が極めて高いものと判定された。
考察
いわゆる重症肺炎に対し、エンピリックに抗菌薬、とくにレジオネラ属菌には無効であるβラクタム薬が用いられることが多い。レジオネラ肺炎では有効な抗菌薬の投与の遅れは死亡率の上昇に直結するため、常に疑いを持ち、早期診断に努めることが重要である。本症例では、レジオネラ肺炎の早期診断に問診の大切さを示した。