2015.12.11
- レジオネラ文献
レジオネラ属菌のカタラーゼの解析
- 著者
- 国立感染研・細菌一
前川純子、倉文明、渡辺治雄 - 出典
- 日本細菌学雑誌 第58巻 第1号
レジオネラ症の原因菌であるレジオネラ属菌は、細胞内寄生細菌の一種で、異物を排除する働きを持つマクロファージの中で増殖する。則ち、レジオネラは活性酸素などによるマクロファージの殺菌機構に抵抗し、増殖するための手段を備えていると考えられる。活性酸素の1つであるカタラーゼは細胞内寄生細菌の生存に重要な役割を果している可能性がある。細菌のカタラーゼはいわゆるカタラーゼ(真性カタラーゼ)とぺルオキシダーゼ活性を持つカタラーゼぺルオキシダーゼの大きく分けて2種類がある。レジオネラ症の原因菌であるLegionella Pneumophila、L.micdadei、L.dumoffii、L.gormaniiを調べたところ、L.PneumophilaとL.dumoffiiでは2本のカタラーゼ-ぺルオキシダーゼ活性を持つバンド、L.gormaniiは1本のカカタラーゼ-ぺルオキシダーゼ活性を持つバンドが存在した。L.micdadeiは1本のカタラーゼ活性のみを示すバンドが存在した。このように、レジオネラ属菌のカタラーゼは多様であり、各々のカタラーゼを解析しているところである。L.Pneumophilaの2つのカタラーゼ-ぺルオキシダーゼ(KatA、KatB)のうち、KatAは古細菌のカタラーゼ-ぺルオキシダーゼと相同性が高く、ORFのGC含量が他のゲノム領域に比べて高いことから、水平伝達により獲得されたと考えられる。KatBは、L.dumoffii、L.gormaniiにも存在しレジオネラ属菌に保存されているカタラーゼ-ぺルオキシダーゼである。KatBがレジオネラ属菌において広く、その病原性に関与していることを確認した。