2025.11.26
- レジオネラ文献
院内給水におけるレジオネラ属菌定期環境検査の有効性
- 著者
- 伏見 華奈, 土屋 憲, 齋藤 敦子, 更谷 和真, 原田 晴司, 芦澤 洋喜, 増田 昌文
- 出典
- 日本環境感染学会誌, Vol. 38, No. 3, 99-106 (2023)
DOI:https://doi.org/10.4058/jsei.38.99
当院では1997年より給水系統123箇所においてレジオネラの定期環境検査を実施している。2008年以降のデータでは,浴室,洗面所,患者共用シャワー室,歯科ユニットなど47箇所でレジオネラが検出している。そのうち,24箇所では同一の菌種が繰り返し検出されている。これは,給水系統に菌が定着し,菌の生育・増殖に好ましい環境となっていたことを示している。長年,レジオネラに対する効果的な環境対策を実施することは困難であったが,度重なる環境検査により菌の日常的な増殖状況を把握し,増殖要因を特定することで,各箇所において早期かつ適切な対策を講じることができた。このことは,実施した対策の効果を維持するためには,定期的なモニタリングが重要であることを示している。現在までに当院ではレジオネラ症の院内感染例は発生していない。四半期ごとの定期環境検査には年間224,844円の費用が掛かるが,このレジオネラの定期検査は,院内感染対策においてレジオネラ症の院内感染予防に有効である。入院患者の感染リスク低減と費用対効果向上のため,各施設においてそれぞれの施設構造に応じた対策を講じることが重要である。