足湯からのレジオネラ属菌の分離状況

目的
手軽に温泉を楽しめることから全国各地に急増している足湯を対象に、レジオネラ属菌の生息状況を把握する。

方法
全国37都道府県の温泉水利用の足湯を採取し、試料とした。レジオネラ属菌の分離道程は第3版レジオネラ症防止指針に準拠した。

結果
1.182施設196試料中、56試料(28.6%)から分離され、全国各地の足湯に広く生息していることが明らかになった。
2.設置場所としてはホームを含む駅周辺で40.9%と最も高率に分離された。
3.100ml当りの菌数は102CFU未満が34試料(60.7%)と最も多かった。
4.分離菌種ではL.pneumophilaが優占種で、中でも1群が16株(23.9%)と高頻度に分離されたほか、L.londiniensisが7株(10.4%)、L.rubrilucensが4株(6%)あった。今回は足湯の約30%にレジオネラ属菌が生息していることが明らかになった。菌数は少ないがL.pneumophilaが優占していることからレジオネラ症発生の可能性は否定できず、各施設ではレジオネラ属菌の現状把握、衛生的維持管理の継続が必要である。

公衆浴場等シャワー水のレジオネラ属菌対策とその成果

目的
文京区では平成21年に公衆浴場のシャワー水を感染源としたレジオネラ肺炎患者が発生、また実態調査でも複数の公衆浴場のシャワー水からレジオネラ属菌が検出されたことからシャワー水のレジオネラ属菌対策に力を入れている。その結果、公衆浴場のシャワー水からレジオネラ属菌が不検出となったのでその成果について報告する。

方法
1.「公衆浴場等においけるレジオネラ症発生防止に関する対策指針」をつくり、菌検出時の対応を明記した。
2.「レジオネラ症発生防止対策事業」を予算化、年間計画に基づき施設の日常の衛生管理の充実を図る為の事業を展開した。

結果と考察
平成21年度の検査では対象13施設の公衆浴場のうち7施設のシャワー水からレジオネラ属菌が検出された。対策後の平成23年度には対象全施設のシャワー水で不検出となった。その後も、平成24年度には区条例制定に伴い、シャワー水の水質基準として「レジオネラ属菌は検出されないこと」を規定した他、自動塩素注入装置設置への助成など、施設の対策向上を支援している。

温泉でのレジオネラおよびアメーバに対する消毒方法の検討

目的
温泉の循環装置導入に伴い、ろ過装置のろ材や配管、温泉浴槽内でレジオネラが発生し、感染事例が多発することとなった。またレジオネラの発生には宿主であるアメーバを含めた消毒が必要と考えられるが、一般にレジオネラを消毒する薬剤濃度ではアメーバの殺細胞効果は期待できない。塩素薬剤に代わる消毒剤として、今回は第四級アンモニウム塩と2-フェノキシエタノールの混合液によるレジオネラ及びアメーバへの消毒効果について検討を行い、更に系内の清掃を行った後、銀イオンを添加した結果について報告する。

方法
1.第四級アンモニウム塩と2-フェノキシエタノールの混合液にLegionella pneumophilaを添加し、培養後の菌数から消毒効果を評価した。
2.アメーバのACbuffer懸濁液に混合液を添加し、細胞致死率を算出した。
3.混合液でろ過槽、浴槽内を清掃し、その後、銀イオンを添加した。

結果
1.第四級アンモニウム塩と2-フェノキシエタノールの0.03%混合液はレジオネラに対して消毒効果が認められた。
2.アメーバの細胞致死率は10分後で90%、60分後で100%であった。
3.混合液でろ過槽及びろ材の洗浄を行った結果、ろ過槽からアメーバは検出されなかった。また、混合液で浴槽内を清掃後、銀イオンを添加した結果、浴槽内からレジオネラは検出されなかった。

「事例報告部門優秀賞」環境水のレジオネラ属菌検査の精度向上への取り組み

はじめに
レジオネラ属菌の検査は基本的にJIS K0350-50-10-2006に準拠して行われるが、実際の環境水検査では培地が細菌類や真菌類に覆われ、レジオネラ属菌のコロニーが確認できない検体が約5%存在する。今回検査法の改善により、この検出不能率を著しく低減させたので報告する。

レジオネラ属菌検査の概要主に、4工程①試料水の濃縮操作②濃縮試料の前処理(酸処理または熱処理)③選択培地への接種、培養④レジオネラ属菌の確定試験により構成され、その内、検出不能という検査結果に影響するのは②前処理工程と③選択培地の性能である。そこでこの2工程に関して改善を行った。

検査法の改善
1).酸処理用緩衝液の改善アルカリ度の高い温泉水や高濃縮の冷却水の場合、微生物の殺菌が不十分となる懸念があるため、緩衝力の高い0.2M酸性リン酸緩衝液(pH2.2)を用いて環境水161検体の検査を行った。
2).前処理方法の更なる改善とCATα培地の使用0.2M酸性リン酸緩衝液(pH2.2)で酸処理、一般的なGVPCα培地を用いて実施した22、456検体のレジオネラ属菌検査において検出不能となった904検体を、次の3条件にて再度検査した。①酸処理した検体をCATα培地に接種②熱処理と酸処理を併用した検体をCATα培地に接種③熱処理と酸処理を併用した検体をGVPCα培地に接種

検査法改善の結果1).
酸処理用緩衝液の改善結果0.2M酸性リン酸緩衝液を使用することで酸処理時のpHをpH2.2近くに調整でき、レジオネラ属菌以外の微生物による培地汚染を減少させ検出不能検体を減少させることができた。2).前処理方法の強化とCATα培地による再検査結果(検出不能の割合) ①酸処理+CATα培地21%(190検体) ②熱処理+酸処理+CATα培地4.8%(43検体) ③熱処理+酸処理+GVPCα培地では39%(355検体)となり、②の検出不能率は極めて低い値となった。試験条件の強化はレジオネラ属菌の生育には殆ど影響が無かった。

まとめ
0.2M酸性リン酸緩衝液を酸処理に用いること、前処理として熱処理と酸処理を併用し、CATα培地を用いることで検出不能の割合を1/25に低下させることができた。この結果から、本法はレジオネラ属菌検査の正確性を確保する上で有用と考える。この他、検査精度向上には①各操作におけるレジオネラ属菌の回収率の向上②選択培地の選定の2点に注意する必要がある。検査精度を高め、より正確な検査結果を提供することが求められる。

レジオネラ感染症の病態と治療

レジオネラは細胞内増殖菌であり、感染すると肺胞マクロファージや上皮細胞内で増殖し、さらに強い炎症と上皮障害を惹起し、重症化させる。早期診断と細胞内抗菌活性を示す抗菌薬など有効な抗菌薬投与が不可欠であるが、臨床像による鑑別は容易でない。近年、尿中抗原検出法の有用性が広く認められてきたが、時に陰性の症例もあることから臨床情報と併せて診断し、分離培養等の検査も必要である。重症化の要因として肺胞上皮障害の合併があげられるが、これにはレジオネラによる直接的な細胞障害、high mobility group box1蛋白が関与している可能性が認められた。以上からも、呼吸器感染症の重症化対策には肺胞上皮障害の制御が重要であり、大きな課題である。

急性腎不全を伴い血清抗体で診断したレジオネラ肺炎の一例

症例
71歳男性。発熱、全身倦怠感。当院受診。右下肺浸潤影と急性腎不全にて市中肺炎を疑われ入院。尿中レジオネラ抗原は陰性であったが、多臓器障害と肺浸潤影から可能性を残し、入院2日目からシプロフロキサキシン400mg/日を投与して治療を継続した。腎機能障害の進行、肺うっ血、呼吸状態の悪化により入院4日目より血液透析を開始、入院10日目まで計5回施行した。肺炎については培養では有意菌を認めず、尿中抗原も陰線で原因を確定できなかったがレジオネラ感染症等に準じて抗菌薬を投与した。入院31日目に退院となったが、退院後に血清レジオネラ抗体が512倍と判明し、レジオネラ肺炎と確定した。

考察
尿中レジオネラ抗原検査はレジオネラ肺炎の診断に寄与しているがL.pneumophilaS1のみしか検出できず、培養検査や抗体検査でないと診断できない症例もある。本症例では症状や経過からレジオネラ肺炎を強く疑って治療を施したため、良好な経過をたどることができたと考える。

2000年〜2009年に都内において分離されたLegionella pneumophilaの遺伝子型別について

目的
Legionella pneumophilaは臨床材料からの菌の検出率が低く、型別検査は困難であった。そこで、臨床検体や浴槽水などからの遺伝子の直接検出、及びSBT法による型別試験の構築のため当センター保存菌株についてSBT法を実施し、ST分布について検討を行った。

方法
臨床材料、浴槽水などから分離された85株についてEWGLI法に従って型別を行い、遺伝子型を決定した。

結果
1.臨床分離株及び浴槽水-STに多様性が認められた。
2.冷却塔水及び浴場施設内給湯水-ST1型が多い。多様性に乏しい。
3.臨床分離株と浴槽水由来株でSTが一致するものが認められたが、冷却塔由来株で多く認められたST1は認められなかった。

レジオネラ尿中抗原の陽性的中率

はじめに
重症肺炎の起炎菌の中でもレジオネラは治療法が通常と異なる抗菌薬を使用すること重症化しやすいことから、重症肺炎の場合は常に念頭におく病原体の一つである。現在、尿中抗原診断の普及により迅速診断が容易になった。しかし、レジオネラ肺炎におけるレジオネラ尿中抗原の陽性的中率的については統計学的に不明な点も多い。

方法と結果
呼吸器症状を有し、レジオネラ尿中抗原を測定した患者1、991人の解析を行った。1、991人中、陽性だった41人の内、肺炎患者は25人であった。この内、レジオネラ肺炎を否定できなかった症例は6人であった。肺炎を呈する症例において、レジオネラ尿中抗原の陽性的中率は6/25人、24%であった。

考察
本解析での陽性的中率は低い。肺炎全例に用いるべきか、再検討の余地がある。但し、重症肺炎では実践すべきであろうと考える。

急性腎不全を合併したレジオネラ肺炎の1例

症例
37歳男性。40℃の発熱と下痢で近医を受診し、急性腸炎と診断され、第4病日に右肺炎、第5病日呼吸器管理、第6病日に無尿となった。尿中レジオネラ抗原陽性でレジオネラ肺炎とされ、当院に転院となった。精査にて、両肺に融合影、右肺全体に透過性の低下、蛋白尿・血尿、尿沈渣では顆粒円柱・上皮円柱を認めた。また低酸素血症、腎機能障害を認め、急性腎不全呼吸不全を合併したレジオネラ肺炎と診断した。シプロフロキサシン、アジスロマイシン、メチルプレドニゾロンを投与し、人工透析を行った。

考察
本症例は肺炎発症から急速に腎機能が低下したが、レジオネラ肺炎の早期診断により適切な治療を行うことができた。レジオネラ肺炎による腎障害の病態、治療を考える上で示唆に富む症例と考える。

社会福祉施設の機械浴槽環境におけるレジオネラ属菌の検出状況

目的
2009年に横浜市内1行政区の社会福祉施設を対象に調査を行った結果、レジオネラ属菌が検出された。そこで今回は市内全域の施設で機械浴槽を対象に調査を行った。

方法
67施設の機械浴槽77基からの274試料(浴槽水、貯湯槽水、壁面など)を培養法・PCR法で測定した。

結果
274試料のうち、培養法で11施設20試料(7.3%)、PCR法で16施設33試料(12%)から検出され、L.pneumophila SG1.2.3が分離された。

考察
機械浴槽は清掃などの観点から構造上の問題があること、多くのレジオネラ症ハイリスクグループが使用することから、製造メーカーへの情報提供を含め、早急な防止対策が必要である。