フローサイトメトリー法による温泉水等のリアルタイムレジオネラリスク評価基準の有用性

目的
レジオネラ属菌(以下レ菌)汚染問題と密接につながる浴場施設等の衛星管理方法に関連して、これまでフローサイトメトリー法(以下FCM法)で測定した浴用水中粒子数が非消毒条件では従属栄養細菌数(以下HPC)とよく相関すること、FCM法に基づく新レジオネラリスク評価基準(以下新評価基準)が塩素濃度管理の困難な一温泉施設において劇的な改善効果をもたらしたとの報告があった。今回、泉質の異なる浴槽水(演歌物泉、炭酸水素塩泉、単純温泉、酸性泉、水道水及び井水)を用いて本評価基準を精査、その有用性を検討した。

方法
上水試験法に準じたpH、有効塩素濃度、HPCの測定及び新版レジオネラ症防止指針に従ったレ菌の検出を実施した
①実施期間:19年9月〜10月
②対象
N県内24浴場施設の45浴場水併せて、FCM法で測定した粒子サイズと核酸量を指標とする浴槽水中粒子の二次元散布図を作成し、予め図内に塩素剤で殺菌した細菌と未処理の細菌の計測結果を基に特定領域を定め、計測した粒子群の分布により消毒効果を判定する新評価基準を設定し、上述の培養検査結果等と比較した。

結果
新評価基準で陰性の31検体からレ菌は検出されなかった。この内、16検体からはHPCが検出されたが低い値(101-3CFU/ml)であった。一方、基準陽性の14検体中、8検体からレ菌が検出、高いHPC値(103-6CFU/ml)を示し、残り6検体の内、4検体のHPCはレ菌が検出された検体と同程度に高い値を示し、2検体については基準陽性に拘らず低いHPC値を示した。これらの泉質は共に酸性泉であった。

結論
今回示した評価基準は簡便かつ迅速に温泉水等のレジオネラリスクを探知できることから衛星管理上、極めて有用である。

Legionella anisaの同定法の比較検討

目的
L. anisaの同定はこれまで日本ではDNA-DNAハイブリダイゼーション(DDHレジオネラ極東)で行われてきたが、今回他の方法と比較した。

方法
異なる施設由来の環境分離株43株(冷却塔水由来40、湯口水由来2、浴槽水由来1)及び基準株ATCC35292を用いた。これらは青白自発蛍光を有しDNA -DNAハイブリダイゼーションでL. anisa株と同定された。これらの株について①L. anisaの特異的同定のためのラテックス粒子凝集試験キット(スライデックスレジオネラキット、日本ビオメニュー)②種の同定のための16SrRNA遺伝子の塩基配列決定(500bp)を行った。

結果
1. 16SrRNA遺伝子の塩基配列決定によりL. anisaは基準株と同配列の型と1塩基欠失ヘテロ型の2型に分類され、環境分離株43株中、72.1%が1塩基欠失ヘテロ型であった。
2.ラテックス凝集試験では陰性の株が見られ、現在までのところ感度は69%であった。

考察
16SrRNA遺伝子の塩基配列決定によりL. anisa株をすべて同定することができた。一方、フランスで開発されたラテックス凝集試験では偽陰性が見られ、日本の分離株の検査法としては十分ではなかった。

生きたレジオネラ菌の迅速遺伝子検査法の作成

目的
分離培養に一週間かかるレジオネラ菌の検出を数時間の液体培養を行い、RT- PCR法で生死を判定する遺伝子検査法を確立する。

方法
BCYE brothに懸濁し培養した。培養は0時間の培養液を保存し、一定時間培養後に培養液を採取し、煮沸後その一部をRT-PCR法に使用した。RT反応は41Cで15分行い、その液の反応液の一部をReal time PCRに使用、増幅産物のCtValueとTmを測定した。Legionella pneumophilaの検出にはi>dnajprimerを使用した。

結果
レジオネラ菌は2時間のBCYE broth培養後にRT-PCR法を実施することで0時間との増幅の違いが明確になり、生菌の増殖を確認できた。PCR法単独では0時間と2時間培養後の増幅シグナルは十分な違いが出せず、RT-PCR法との感度の違いが明らかになった。最終的に生きた菌の遺伝子検査を1CFU/10ml〜1CFU/100mlの感度でレジオネラ菌を検出するプロトコールを作成した。

考察
生菌の遺伝子検査法の特色は生きた病原体が陽性であるとの結果が短時間で得られた時に薬剤感受性の遺伝子検査に直ちに移行できる。抗菌剤の入った培地での発育を迅速にRT-PCR法で測定し、菌の検出と同時に薬剤感受性を測定できるが、薬剤耐性はLegionellaよりも耐性菌が報告されているMycobacteriumやmycoplasmaでより感受性測定は有用であることを併せて報告する。

浴槽水のレジオネラ対策と検査

目的
循環ろ過式のモデル浴槽を用いてレジオネラ属菌を含むバイオフィルムの形成状況と箇所を明らかにし、形成の抑制、除去の方法について検討を行い、そこから得られたレジオネラ対策と現場への応用、浴槽水のレジオネラ迅速定量検出法について報告する。

方法と結果
モデル浴槽における自然汚染、無殺菌増殖時のバイオフィルム形成箇所についてモデル浴槽の浴槽水を無殺菌状態で循環した時に、レジオネラ属菌の自然汚染、及び爆発的増殖(殺菌停止後3日間以降にアメーバと共に増殖、最高菌数105〜106CFU/100ml)が確認された。レジオネラ属菌は浴槽水やろ過器内水のアメーバ内で増殖後、浴槽水を介して浴槽系全体に拡散し、ろ過材や配管などの表面に付着しバイオフィルム(生物膜)を形成した。特に循環装置内で最大の表面積を占めるろ過材表面はレジオネラ、アメーバ等のバイオフィルムの最大の貯蔵庫となり、ろ過材の殺菌が不十分だと換水してもろ過材を汚染源として浴槽水のレジオネラ汚染が継続した。

循環浴槽系内におけるバイオフィルム形成の抑制と除去方法
1.毎日ろ過器内を5〜10ppm塩素により5分間以上逆洗浄するフィルター・リフレッシュ法での洗浄を毎日繰り返すことでレジオネラ、アメーバなどのバイオフィルム形成を抑制できた。この方法と浴槽水の塩素管理の併用で、より安全な循環浴槽水を提供できる。
2.レジオネラが自然増殖したモデル浴槽内を各種薬剤で洗浄後、部位別に洗浄殺菌効果を比較したところ、ろ過材・配管のレジオネラの殺菌除去は可能であったが、集毛器網のレジオネラ殺菌や配管接合部のゴムパッキンに形成されたバイオフィルムの殺菌・除去は困難であった。解決策として①集毛器網は毎日洗浄後、消毒用エタノールで殺菌②ゴムパッキンはテフロン加工パッキンに交換することが奨められる。

浴槽水中のレジオネラ属菌迅速定量検出法
今回の実験で、塩素管理がされ菌検出がない期間と無殺菌で菌が増加した期間の菌数の変化をリアルタイム定量PCR(qPCR)で正確に把握することが出来た。温泉水などの浴槽水で培養法とqPCR法の定量性を比較した所、両者の菌数によい相関がありqPCR法は迅速検査法として十分応用可能と考えられる。

循環式入浴施設における本邦最大のレジオネラ症集団感染事例 II 診断検査法の比較

目的
2002年7月宮崎県の循環式入浴施設においてレジオネラ症集団感染事例が発生した。295名の発症者のうち、95名に対し細菌学的検査を実施し、診断検査方の比較を行った。

方法
1.喀痰からのレジオネラ属菌の分離
2.尿中抗原の検査(EIA、イムノクロマト法)
3.血清抗体価測定(マイクロプレート凝集法、間接蛍光抗体法)

結果
1では24名中3名が、2では75名中23名が、3では66名中5名が陽性と診断された。以上のことから、PCRや尿中抗原検出は、培養や血清抗体価測定よりも陽性率が高く、検査法として有用であった。しかし、培養法は感染源特定のために公衆衛生重要である。

レジオネラ生菌のマイクロコロニー法による迅速高感度定量

目的
レジオネラ症のアウトブレイク防止にはレジオネラ生菌の迅速な定量が重要である。そこで、増殖する細菌を検出可能なマイクロコロニー法に着目し、レジオネラ生菌の定量を試みた。

方法
標準菌株としてLegionella puneumophila serogroup 1を用い、マイクロコロニー形成条件を検討した。決定した条件を用いて、水環境試料中のレジオネラ生菌の定量を行った。

結果
従来法でレジオネラ属菌が検出された試料すべてにおいて、同等以上の感度でマイクロコロニー法で検出できた。この結果から、マイクロコロニー法を用いることにより、レジオネラ生菌を迅速に定量できることが分かった。

環境水からのLoopampレジオネラ検出試薬キットを用いたLegionella属菌の検出

目的
レジオネラ症防止指針では環境水からのLegionella属菌の検出には基本的に培養法が用いられているが、培養に3〜10日間を要することから感染防止対策の遅れが懸念されている。このような状況のもと、栄研化学より独自に開発した遺伝子増幅法であるLAMP法を原理とする「Loopampレジオネラ検出試薬キットEが新しく発売された。Lamp法は1ステップで1時間以内にDNAを109〜1010倍に増幅でき、また極めて特異性の高い方法といわれており、本キットを用いた環境水からのLegionella属菌の検出について各種検討を行った。

方法
キット添付文書に従い、冷却遠心により100倍濃縮した検水2mLからアルカリ抽出法によりDNAを抽出後、用時調製したマスターミックスと混合、測定を行った。増幅反応および判定にはLoopampリアルタイム濁度測定装置(LA-320C、栄研化学)を用い、同時に目視による判定を行った。

結果と考察
環境水からのLegionella属菌検出において、LAMP法を原理とした本キットは検体処理を含めても数時間で結果が得られ、また、特異性が高い検出法であり、さらに培養法の検出限界以下の場合においても高率に陽性となることが確認された。以上のことから本キットを用いて検査を行うことは迅速、かつ確実なレジオネラ感染防止、あるいは感染再発防止対策に有用であると考えられる。

浮遊レジオネラ属菌の捕集方法

目的
現在、空気中に浮遊するレジオネラ属菌を検出する方法は確立されていない。そのため、ネブライザーおよび既存の多孔板式エアサンプラーを用いた測定法を検討した。

方法
クリーンボックス内で、ネブライザーにより飛散させた菌液を、エアサンプラーを用いて吸引し、培地に吹き付けた。培養後、菌液濃度と捕集菌数、捕集効率を比較検討した。気泡浴槽モデルを作成し、同様の調査をした。

結果
捕集は可能であり、菌液濃度と捕集菌数との間には、良好な相関関係が認められたが、通常の浴槽モデルと気泡浴槽モデルでは飛散量が大きく異なった。

レジオネラ属菌の選択培地に添加する抗真菌剤の検討

目的
レジオネラ菌を検出する際には、他の細菌や真菌類が邪魔となる.真菌類は低pHに耐性を持つものが多く、酸性緩衝液の前処理の効果は薄い。今回は、選択培地での真菌汚染を減少させるために、抗真菌剤の検討をおこなった。

方法
シクロヘキシミド(CH)、アンホテリシンB(AMPH)、グリセオフルビン(GRF)、チアベンダゾール(TBZ)を用いた。レジオネラに対する抗菌活性、及び組合わせによる抗真菌作用を評価した。

結果
いずれもレジオネラの選択培地として使用可能であった。CHとAMPH、CHとTBZの組み合わせは真菌類に対する発育阻害効果が高く、レジオネラの発育には影響を与えないことから、これらを組合わせて添加した選択培地はレジオネラ検査に有効であると考えられる。

レジオネラ属菌培養に影響する真菌抑制方法の検討

目的
冷却遠心濃縮法では、混入微生物の影響でレジオネラ属菌の有無の観察が不可能になる場合がある。この影響を低減させるため、特に影響が大きいと考えられる真菌について、薬剤を使用した抑制法の検討をおこなった。

方法
0.2M HCl-KCl緩衝液による酸処理、50℃30分の熱処理をおこなった。共に無効で大きく生育した真菌のうち8種をWYOαで培養し、抗真菌剤アンホテリシンBをコロニーに滴下して生長を観察した。

結果
7種の真菌に対して発育抑制作用が良好となり、レジオネラ菌には影響がなかった。アンホテリシンBはもともと培地に添加されているが、直接作用させることで効果がでるという結果となった。