EMA-LAMP法を用いた生菌レジオネラ検出方法の検討

目的

生菌のみを迅速に検出可能な検査方法が求められているなか、エチジウムモノアジド(EMA)の特性を利用してレジオネラ生菌のみを検出するEMA-LAMP法について検討した。

方法
①標準株:生菌の菌数101 -105 cfu/ml、死菌101 -105 cfu/mlの菌懸濁液をEMA濃度0〜20 ㎍/mlになるよう添加し、反応後、DNAを抽出し、LAMP法を行った。
②浴槽水分離株:生菌及び死菌105 cfu/ml。EM濃度0、20㎍/ml ①同様、LAMP法を行った。

結果
標準株は生菌はすべてのEMA濃度で陽性、死菌0㎍/mlのみ陽性。浴槽水分離株は生菌は0、20㎍/ml共に法陽性。死菌は0㎍/mlのみ陽性であった。以上の結果より、EMAを添加した場合は生菌のみが陽性となり、EMA-LAMP法により生菌レジオネラのみを検出可能であると確認された。

環境水のレジオネラ属菌検査の精度向上への取り組み

目的

標準的な環境水のレジオネラ属菌検査の場合、培地がレジオネラ属菌以外の細菌類や真菌類に覆われてレジオネラ属菌のコロニーが確認できない検体(検出不能)が約5%存在するが、この検出不能率の低減が望まれている。今回、試料の前処理方法の改善、及び新たな培地の使用により検出不能率を著しく低減させたので報告する

方法と結果
1.酸処理用緩衝液について環境水161検体の100倍濃縮液を0.2 MHC1-KC1緩衝液と0.2M酸性リン酸緩衝液を用いて10分間酸処理後、GVPC培地に接種しレジオネラ検査を行った。結果、0.2M酸性リン酸緩衝液は酸処理時のpHを安定してpH2.2付近に保つことができた。また酸性リン酸緩衝液の方がHC1-KC1緩衝液よりも細菌類による培地汚染を減少させ、検出不能検体を減少させることができた。
2.CATα培地による有効性について2006年9月〜2008年3月の検査で検体の100倍濃縮液を0.2M酸性リン酸緩衝液で酸処理後、GVPC培地に接種し検出不能となったのは22、439検体中900検体(4%)であった。冷蔵保存したこれら検体の100倍濃縮液を①酸処理し、改良したCATα培地に接種②熱処理と酸処理をし、CATα培地に接種③熱処理と酸処理をしGVPC培地に接種の3通りの条件で検査を実施した。結果、検出不能率は①0.8%(188検体)②0.2%(43検体)③1.6%(352検体)であった。

考察
酸性リン酸緩衝液を用いることで検水のpHをよりpH2.2付近に保つことができ、効果的な前処理が可能となった。また、前処理として熱処理と酸性リン酸緩衝液による酸処理を併用しCATα培地を使用することで、検出不能となる割合を1/20に低下させることが出来た。よって本法は検出不能検体を減少させ、レジオネラ属菌検査の正確性を確保する上で有用といえる。

分離集落の特徴を利用したレジオネラ属菌分別法の有用性

目的
レジオネラ属菌の培養検査を行う場合、多くのレジオネラ属菌検査マニュアルに記載される特徴をもつ集落はレジオネラ属菌、非属菌を問わず多数存在し、雑菌との分別が困難である。そこで、分離培地上の集落に斜光を当てると外観がカットグラス様を呈するという特徴を利用した観察法を取り入れることで、正確、且つ簡便にレジオネラ属菌の確認、釣菌、菌数の測定などをできるか検討し、その有用性を明らかにする。

方法
1.基準株について5種類の供試菌株を現在普及している市販分離生培地数種に培養し、分離培地に斜光を当て分離集落の観察を10日間、毎日行った。
2.環境試料について浴槽水、冷却塔水(非濃縮、100倍濃縮)試料を熱処理、酸処理し、10日間培養し、毎日斜光法で観察し、発育集落においてレジオネラ属菌と他の細菌との分別が可能かどうか検討した。

結果
1.基準株について5種類ともすべての分離培地上で特徴的な外観構造を呈した。この形態的特長が通常の検査においても有効と考えられる。但し、菌株により見え方が異なる場合があること、培養時間の経過とともに特徴を確認しづらくなる場合があった。
2.環境試料について培養3日目以降に発育が認められた集落で特徴的な形態を示したものが多く認められた。釣菌した10、620集落の内、10、199集落(96%)がレジオネラ属菌と同定され一方、形態的特長の認められなかった集落はすべて非レジオネラ属菌であった。さらに実体顕微鏡を使用するため培地上に発育してきた微小な集落の確認、多数の雑菌の中で僅かな隙間に発育したレジオネラ属菌も確認することができた。

考察
斜光を利用した観察法により、L.pの13血清群、及び17種類のレジオネラ属菌が効率良く検出された。それらはカットグラス様の特徴的外観を有していた。環境試料でも本特徴を有した集落の96%がレジオネラ属菌と同定された。今回の結果から、本法は分離培地上での分別、菌数測定、判定日数の短縮などの面から極めて有用な方法と思われる。但しレジオネラ属菌の50超の菌種すべてに形態的特長が認められるかどうか、また本特徴も培養時間の経過とともに確認しづらくなるなど、今後の研究と注意も必要である。

浴槽水からのレジオネラの単離、および定量化における免疫磁気分離法の評価

目的
日本のレジオネラ症の殆どは浴槽水が原因と考えられている。浴槽水の濃縮は通常ろ過法で行われるが、環境微生物が多い検体の場合には分離、計数が困難な場合がある。そこで、従来法(ろ過法)と新規の免疫磁気分離法を比較検討した。

方法
種々の泉質の浴槽水等191検体について従来法と免疫磁気分離法の濃縮方法について比較検討した。浴槽水45mLに10X緩衝液5mLとビーズ0.15mLを加え1時間混合後、磁石でビーズを回収し、50mL1X緩衝液で1回洗浄してGVPC寒天培地に接種した。

結果
①免疫磁気分離法はろ過法に比べ、感度78.3%、特異性94.7%となった。
②7検体が免疫磁気分離法で検出、ろ過法非検出。13検体がろ過法で検出、免疫磁気分離法非検出。
③雑菌除去効果は免疫磁気分離法で濃縮した場合、従属栄養細菌は追加洗浄無しで92cfu/plateのところ追加洗浄2回で非検出になった。以上のことから免疫磁気分離法はろ過法とほぼ同じ検出結果であったが、レジオネラ属菌以外の微生物の多い検体ではより有効であると考えられる。

市販DNA抽出キットを用いたレジオネラ核酸検出法の検討

目的
昨年度の本学会で浴槽水のレジオネラ属菌迅速検査法としてリアルタイムPCRの有用性を報告したが、今回はそれに用いる遺伝子抽出法について市販DNA抽出・精製キットの応用と、抽出・精製カラムからのDNA溶出量を検討した。

方法と結果
①標準菌株で菌液の希釈系列を作成し、特注品のGLカラム(GLサイエンス)と市販キット(Takara Fast Pure DNA Kit)でDNAを抽出、PCRを行い比較した。結果、検量線は直線性が高く、検出感度は10CFU/tubeでGLカラムと同様だった。
②市販キットを用いたDNA抽出法での溶出量について、20㎕(1回溶出)、50㎕ (2回溶出)を比較した。結果、検量線はどちらも直線性が高いが、検出感度は50㎕(2回)の溶出法が高く、培養法(10CFU/100ml)と同レベル(5.5 CFU/100ml)の菌数が検出可能であった。
③泉質種々の浴槽水102検体について市販キットでDNA抽出、PCRを行い培養法と比較した。結果、全ての検体でインターナルコントロールの増幅が確認され、泉質による増幅阻害(偽陰性)が無いことが分かった。またPCRと培養法の定量値の比較の結果、菌数に相関がみられたが、PCRでは死菌の反応と思われるDNA増幅が多検体で確認された。
以上の結果から、今回用いた市販DNA抽出キットは温泉の成分に関わらず十分応用できることが示された。今後は死菌DNAによる核酸検出法の陽性反応の評価、生菌と死菌のDNA鑑別法について検討する。

遺伝子による迅速測定法を取り入れた培養法のレジオネラ属菌検出のスピードアップ化

目的
レジオネラ属菌検査の公定法である培養法は現状では結果判定までに7〜10日を要する。遺伝子増幅を利用した迅速測定法(LAMP法、及び定量リアルタイムPCR法)を用いる事により培養法の結果が判明する日数の短縮を試みた。

方法
1.試料浴場水を滅菌し、浴場水由来のレジオネラ属菌(L. pneumophila、SG1、Ⅲ、Ⅴ、L. gormanii、L.micdadei、)5種類の内、1種類づつ添加した試料A〜Eと、5種類全てを添加した試料Fを作製、これに浴場水由来の従属栄養細菌を0cfu/mL(無添加群)、10、000 cfu/mL(高濃度群)含有するよう添加した。
2.方法試料をろ過濃縮・加温処理後に選択培地(MWY及びGVPC)に培養後、出現したレジオネラ様コロニーを白金耳で釣菌してBCYEαに画線し、単離したコロニーを培養法の推定・確定試験に用いた。一方、画線した白金耳をTaKaRa DEXPAT中で攪拌し混濁させた後、遺伝子を抽出しサンプルとしてLAMP法及び定量リアルタイムPCR法でレジオネラ属菌を測定した。

結果と考察
1.試料A〜Fの従属栄養細菌無添加群①培養法で7〜8日②迅速法で5日を要した。
2.試料A〜Fの従属栄養細菌高濃度群①培養法で10日②迅速法で5日を要した。
3.従属栄養細菌が高濃度添加試料
①選択培地から釣菌してBCYEαに純培養するため2代培養する必要が生じ、測定日数が増加した。
②一方迅速法で要する5日間は選択培地による培養時間で生菌数を確定させるためにこれ以上短縮できなかった。培養法を基本とする限り、これ以上の短縮は不可能であった。
4.従属栄養細菌高濃度群において、選択培地から釣菌する際にレジオネラ属菌以外の菌が含まれていても迅速測定法の結果には影響がなく、レジオネラ属菌以外の菌に対して迅速測定法は偽陽性を示さなかった。又、迅速測定法の結果と培養法の推定・確定試験の結果は一致した。
5.今回の結果から、培養法に迅速方の手法を取り入れることにより2〜5日間の検査日数の短縮が可能と考えられた。

レジオネラ属菌培養検査の検出不能率低減の検討

目的
環境水のレジオネラ属菌培養検査において、選択培地がレジオネラ属菌以外の細菌類、真菌類で覆われている状態ではレジオネラ属菌の存在が不明のため「検出不能」と報告しているが、予てよりその不能率の低減が望まれている。前処理方法の改良や選択培地の改良が有効との報告もあり、今回、環境水のレジオネラ属菌培養検査における「検出不能」率改善について報告する。

方法
2006年9月から2008年3月に実施したレジオネラ属菌検査(22、439検体)において、検体の100倍濃縮液を0.2M酸性リン酸緩衝液(pH2.2)で10分間酸処理後にGVPC培地(MERCK)に接種した時、検出不能となった検体は900検体(4.0%)であった。冷蔵保存したこの検体の100倍濃縮液を次の通り接種した。
①酸処理後に抗生物質の添加量と種類を改良したCATα培地に接種
②熱処理(50℃で30分)と酸処理を併用してGVPC培地に接種
③熱処理と酸処理を併用してCATα培地に接種

結果
1.通常検査の検出不能率が4.0%に対し①0.8% ②1.6% ③0.2%であった。
2.通常検査法を始め各処理条件での検出菌数の分布は類似であった。
3. CATα培地の使用や、熱処理と酸処理の併用により大幅にレジオネラ属菌数が減少し結果としてレジオネラ属菌不検出と判定された検体は極めて少ないと考えられる。以上のことから、CATα培地の使用、及び熱処理と酸処理の併用は環境水のレジオネラ属菌検査において、検出不能の割合を低減する手段として有効であると考えられる。

LAMP法による温浴水等のレジオネラ属菌検査結果

目的
レジオネラ属菌の培養法による検査に比べ、LAMP法などの遺伝子検査は陽性/陰性の判定結果が数時間で得られ、現場における温浴水のレジオネラ属菌管理対策の迅速化に有用であると第34回年次大会で報告している。本報では温浴水など1、108検体のLAMP法と培養法の検査結果により、有用性を評価した。

方法
全国の温浴水等1、108検体をLAMP法と培養法によってレジオネラ属菌検査を行った。LAMP法はろ過濃縮後の検水を試薬キットE(栄研化学)を用い、リアルタイム濁度測定装置(栄研化学)で核酸を増幅・検出した。培養法はろ過濃縮した検水を酸処理後、GVPC培地に接種、37℃で8日間培養して得た集落を計数した。

結果
レジオネラ属菌検査において培養法陽性でLAMP法陰性の割合が少ない必要があるが、検査の結果は、温浴水で0.6%、貯湯槽水で1.4%、拭取り検査で4.9%と、低い菌数の検体で培養陽性、LAMP陰性の割合が存在した。又、LAMP法の結果からレジオネラ属生菌数の定量化を試みたが温浴水でのLAMP法陽性の内66%は死菌を検出し、現段階での定量化は難しい。LAMP法は、浴槽水のレジオネラ属菌の管理基準(生菌数10CFU/100ml未満)に対して安全側で迅速に判断出来ることから温浴水系のレジオネラ属菌汚染が無いことの確認に有用と判断する。

フローサイトメトリー法による温泉水等のリアルタイムレジオネラリスク評価基準の有用性

これまでフローサイトメトリー法(以下FCM法)で測定した浴用水中粒子数が非消毒条件では従属栄養細菌数(HPC)と相関すること、FCM法に基づく新レジオネラリスク評価基準が塩素濃度管理の困難な一温泉施設において劇的な改善効果をもたらしたことを報告した。今回は泉質の異なる浴槽水(塩化物泉、炭酸水素塩泉、単純温泉、酸性泉、水道水及び井水)で本評価基準を精査し、その有用性を検討した。

方法
平成19年9〜10月N県内24欲場施設の45浴槽水について上水試験法、新版レジオネラ症防止指針などに従ったレジオネラ属菌の検出を行った。併せてFCM法で測定した浴槽水中粒子の散布図を作成し、この図内に予め塩素剤で殺菌した細菌と未処理の細菌の計測結果を基に特定領域を定めておき、計測した粒子群の分布により消毒効果を判定する新評価基準を設定し、培養検査結果等と比較した。

結果
①新評価基準で陰性31検体
・レジオネラ菌は検出されなかった。
・16検体からHPCが検出されたが低い値であった。
②新評価基準で陽性14検体・8検体からレジオネラ菌が検出され、高いHPC値を示した。
・残り6検体の内4検体はレ菌が検出された検体と同程度に高いHPC値を示した。
・最後の2検体は低いHPC値を示したが共に酸性泉であった。

結論
本評価基準は簡便かつ迅速に温泉水等のレジオネラリスクを探知でき、衛生管理上、極めて有用である。

生きたレジオネラ菌の迅速遺伝子検査法の作成

目的
RT-PCR法で生死を判定する遺伝子検査法の確立方法
BCYE brothに懸濁培養。培養に当り0時間の培養液を保存、一定時間培養後に培養液を採取し、煮沸後一部をRT-PCR法に使用。RT反応は41Cで15分行い、その液の反応液の一部をRealtime PCR法に使用し、増幅産物のCt ValueとTmを測定。Legionella pneumophila検出にはdnaj primerを、Legionella spp.検出には16S rDNA primerを使用した。結果と考察: 2時間の培養後にRT-PCR法を実施すると0時間との増幅の違いが明確になりレジオネラ菌の生菌が確認できた。PCR法単独では十分な違いが出せず、RT-PCR法との感度の違いが明らかになった。生菌の遺伝子検査法の特色は生きた病原体の陽性結果が短時間で得られた時、直ちに薬剤感受性の遺伝子検査に移行できることである。抗菌剤の入った培地での発育を迅速にRT-`PCR法で測定し、菌の検出、同時に薬剤感受性を測定することができる。しかし、薬剤耐性はLegionellaより、MycobacteriumMycoplasmaでより感受性測定が有用であることを併せて報告する。