レジオネラ属菌を検出するためのアメーバ共培養法に関する検討

目的
レジオネラ症防止対策には培養法で検出可能なレジオネラ属菌だけでなく、培養不能レジオネラの生息状況も把握しておく必要がある。本研究では浴槽水中の人工培地で培養できない状態、また培養不能菌種を含めたレジオネラ属菌を検出するために、アメーバ内で増殖することを利用したアメーバ共培養法の検討を行った。

方法
レジオネラ標準株を用いたアメーバ共培養法はco-cultureとco-culture/PYGCの2系列で検討を行った。本研究での培養増殖条件を実際の浴槽水試料に適用するためレジオネラ属菌以外の微生物類を抑制する抗生物質Vancomycin及びPolymyxin Bを添加し、アメーバ共培養法を行い、レジオネラ属菌増殖への影響を検討した。

結果
co-culture/PYGCは、初期菌数102〜104cfu/mlが7日後に約105倍に増殖した。co-cultureは、最も増殖した場合でも101倍程度であった。これらの結果から、レジオネラ標準株を用いたアメーバ共培養法はco-culture/PYGCの方がレジオネラ属菌が増殖することが確認された。抗生物質の影響については添加しない時と同様にレジオネラ属菌が増殖することが確認された。現在、実際の浴槽水試料からアメーバ共培養法によりレジオネラ検出を行っている。

LAMP法による浴槽水からのレジオネラ属菌検査結果

目的
浴槽水等2、821検体のLAMP法と培養法の検査結果を解析し、LAMP法によるレジオネラ属菌迅速検査の有用性を評価した。また、レジオネラ属菌が検出された浴槽施設において化学的除菌洗浄を実施し、その洗浄効果の評価にLAMP法を用いた例を紹介する。

方法と結果
浴槽水等2、821検体をLAMP法及び培養法によってレジオネラ属菌を検査した。浴槽水の場合、培養法では2393検体中321検体、Lamp法では1042検体がレジオネラ属菌陽性であった。培養法陽性でLamp法陰性の不一致は29検体、培養法陰性でLamp法陽性の不一致は750検体であった。培養法陽性でLamp法陰性の不一致は生じない必要があるが、今回29検体存在した。内、9検体は同一施設の検体で、同施設から分離されたレジオネラ属菌は既に報告されている菌種には該当しなかった。検出できない未知のレジオネラ属菌種が存在することに注意が必要である。次に、浴槽設備の化学的除菌洗浄前後でLAMP法および培養法により洗浄効果を評価した。洗浄は、残留遊離塩素濃度500mg/L以上で1時間以上循環させることを原則とした。洗浄前は全ての系統でLAMP法、培養法ともに陽性だった。洗浄後は7系統中5系統でLAMP法陰性、培養法は全て陰性だった。洗浄後、LAMP法で陽性となった2系統については生菌は塩素で殺菌されたがDNAが分解されず残存したと推測される。培養法で不検出という現行基準に対して、LAMP法は安全側で迅速に判断できることが改めて示された。以上のことからLAMP法は浴槽水の衛生管理に有用であると判断する。

TRC法を用いたレジオネラ属菌16S rRNA検出試薬TRCRtest Legionellaの開発

目的
レジオネラ属菌16S rRNAを標的とし、迅速かつ高感度にレジオネラ属菌の検査が可能な遺伝子検査試薬TRCRtest Legionellaを開発し、その性能を評価したので報告する。

方法
Legionella pneumophillaを含む8種の培養液を用いて感度試験を行った。
②冷却塔水45検体について、培養法、及び遺伝子検査法(A法・B法)との比較を行った。

結果
①1〜30CFU/assayであった。
②検出率は、培養法40%、本試薬64%、A法71%、B法56%で、培養法より高感度であった。また培養法で陽性の検体については本試薬、A法B法でも全て陽性であった。

結論
本試薬は迅速、且つ高感度なレジオネラ属菌の検出が可能であり、人工環境水中の汚染モニターに有用であることから、感染予防に寄与すると考える。

mip sequence法を用いたレジオネラ菌株の型別

レジオネラの種々の遺伝子学的型別法のうちmip sequence法を用いてレジオネラ59菌株をタイピングし、その有用性を比較検討した。患者検体から分離された38菌株、クーリングタワー水・病院水系から分離されたLegionella anisa19菌株、基準株2菌株の合計59菌株を用いてDNA抽出を行った。結果、mip sequence法で各菌種間は明確に区別することができ、菌種の同定に用いることができた。L.pneumophillaでは血清群1以外の血清群7菌株が一群に集積し、ある程度の区別は可能であった。L.anisaは全株同一の配列で、疫学的マーカーとして用いるには限界があった。

「事例報告部門優秀賞」環境水のレジオネラ属菌検査の精度向上への取り組み

はじめに
レジオネラ属菌の検査は基本的にJIS K0350-50-10-2006に準拠して行われるが、実際の環境水検査では培地が細菌類や真菌類に覆われ、レジオネラ属菌のコロニーが確認できない検体が約5%存在する。今回検査法の改善により、この検出不能率を著しく低減させたので報告する。

レジオネラ属菌検査の概要主に、4工程①試料水の濃縮操作②濃縮試料の前処理(酸処理または熱処理)③選択培地への接種、培養④レジオネラ属菌の確定試験により構成され、その内、検出不能という検査結果に影響するのは②前処理工程と③選択培地の性能である。そこでこの2工程に関して改善を行った。

検査法の改善
1).酸処理用緩衝液の改善アルカリ度の高い温泉水や高濃縮の冷却水の場合、微生物の殺菌が不十分となる懸念があるため、緩衝力の高い0.2M酸性リン酸緩衝液(pH2.2)を用いて環境水161検体の検査を行った。
2).前処理方法の更なる改善とCATα培地の使用0.2M酸性リン酸緩衝液(pH2.2)で酸処理、一般的なGVPCα培地を用いて実施した22、456検体のレジオネラ属菌検査において検出不能となった904検体を、次の3条件にて再度検査した。①酸処理した検体をCATα培地に接種②熱処理と酸処理を併用した検体をCATα培地に接種③熱処理と酸処理を併用した検体をGVPCα培地に接種

検査法改善の結果1).
酸処理用緩衝液の改善結果0.2M酸性リン酸緩衝液を使用することで酸処理時のpHをpH2.2近くに調整でき、レジオネラ属菌以外の微生物による培地汚染を減少させ検出不能検体を減少させることができた。2).前処理方法の強化とCATα培地による再検査結果(検出不能の割合) ①酸処理+CATα培地21%(190検体) ②熱処理+酸処理+CATα培地4.8%(43検体) ③熱処理+酸処理+GVPCα培地では39%(355検体)となり、②の検出不能率は極めて低い値となった。試験条件の強化はレジオネラ属菌の生育には殆ど影響が無かった。

まとめ
0.2M酸性リン酸緩衝液を酸処理に用いること、前処理として熱処理と酸処理を併用し、CATα培地を用いることで検出不能の割合を1/25に低下させることができた。この結果から、本法はレジオネラ属菌検査の正確性を確保する上で有用と考える。この他、検査精度向上には①各操作におけるレジオネラ属菌の回収率の向上②選択培地の選定の2点に注意する必要がある。検査精度を高め、より正確な検査結果を提供することが求められる。

レジオネラ尿中抗原の陽性的中率

はじめに
重症肺炎の起炎菌の中でもレジオネラは治療法が通常と異なる抗菌薬を使用すること重症化しやすいことから、重症肺炎の場合は常に念頭におく病原体の一つである。現在、尿中抗原診断の普及により迅速診断が容易になった。しかし、レジオネラ肺炎におけるレジオネラ尿中抗原の陽性的中率的については統計学的に不明な点も多い。

方法と結果
呼吸器症状を有し、レジオネラ尿中抗原を測定した患者1、991人の解析を行った。1、991人中、陽性だった41人の内、肺炎患者は25人であった。この内、レジオネラ肺炎を否定できなかった症例は6人であった。肺炎を呈する症例において、レジオネラ尿中抗原の陽性的中率は6/25人、24%であった。

考察
本解析での陽性的中率は低い。肺炎全例に用いるべきか、再検討の余地がある。但し、重症肺炎では実践すべきであろうと考える。

rep-PCR法を用いたレジオネラの型別

目的
当教室保存のレジオネラ59菌株を用いて、rep-PCR法の有用性を検討した。方法
患者検体から分離された38菌株、クーリングタワー水、付属病院水系から分離されたL. anisa19菌株、基準株2菌株を用いてrep-PCR法で解析を行った。

結果
各菌種は明瞭に区別できた。L. anisa20菌株はほぼ同一の泳動パターンを示し、L.pneumophilaの血清郡は広範なパターンを示した。考察:rep-PCR法は菌種の同定に用いることができるが、L.pneumophilaの各血清郡・菌種は区別できず疫学的マーカーとして用いるのが有用である。

循環式浴槽ろ過器内ろ材のレジオネラ属菌検出に係る前処理方法の検討

目的
循環式浴槽ろ過器内ろ材はレジオネラ属菌が付着、発育しバイオフィルムを形成するためろ材からL菌を検出するには前処理が必要だが、さらに効果的な前処理条件について検討を行った。

方法
L菌の多いろ材Aと少ないろ材Bを用いて、下記1〜3の項目において試験した。

結果
以下が効率的な前処理方法であると思われる。
1.ろ材の量:AB共に50gが適当と思われた。
2.超音波洗浄時間:Aは時間に関わらず一定。Bは24秒以上が有効であった。
3.洗浄液の種類:PBS、又はイオン交換水が適切であることが示された。

リアルタイムRT-PCR法を用いたレジオネラ迅速検査法の検討

目的
PCR法・LAMP法は迅速性に優れているが、生菌のみを検出することはできない。そこでDNAより菌の死後速やかに分解するとされるRNAを標的にしたRT-PCR法について検討した。

方法と結果
①3段階の濃度の試料水を二分し、一方は無処理のまま、もう一方は塩素処理を行い培養法、PCR法、RT-PCR法で測定した。塩素処理を行った方は培養法で全ての濃度で0cfu/100mlを示したが、PCR法、RT-PCR法では無処理と同様の値を示した。
②塩素処理を行った後、0〜96時間後にRT-PCR法で測定し、経時変化を確認したところ48時間後までは検出され、72時間後以降は検出されなかった。
③PCR法でレジオネラが検出された浴場施設の殺菌洗浄後の試料についてPCR法とRT-PCR法で測定したところ同値を示した。再度殺菌洗浄を行った後、PCR法では検出された試料についてRT-PCR法で測定したところ不検出だった。培養法では全て不検出。

考察
レジオネラのRNAは塩素処理後も長時間残存することが判明した。RT-PCR法でレジオネラの生菌のみを選別するには、前処理等を工夫する必要があると考えられる。

温泉利用循環ろ過式浴槽水におけるモノクロラミン消毒の有効性

目的
モデル浴槽において有効であったモノクロラミンによる消毒を温泉利用の循環ろ過式浴槽水に適用して、その効果を検証した。

方法
営業中の循環ろ過式入浴施設において、6日間、微生物検査・理化学検査などを実施した。浴槽水のモノクロラミン濃度は3〜5mg/Lを維持するよう定期的に投入した。フローサイトメトリー法により消毒効果を判定した。

結果
調査期間を通して、浴槽水からレジオネラ属菌、従属栄養細菌、アメーバは検出されなかった。モノクロラミン濃度測定値は投与量に比例し、全塩素濃度と平行して推移した。ジクロラミンとトリクロラミンは検出されなかった。pHは常にアルカリ側に維持されていた。フローサイトメトリー法によっても浴槽水は全て清浄パターンを示した。営業中の温泉入浴施設において、モノクロラミンによる循環ろ過式浴槽水の消毒は有用なことが示された。