Legionella pneumophilaの肺胞上皮細胞侵入様式の多様性について

目的
L.pneumophilaの肺胞上皮細胞侵入様式について報告する。

方法
ヒト肺胞上皮細胞系A549およびHL111783のmonolayerを作成した。数種の真核細胞の侵入阻害剤を用いて、細胞monolayerを処理した。

結果と考察
阻害剤のL.pneumophilaの肺胞上皮細胞への接着率は阻害剤添加による変化は見られなかったが、L.pneumophilaは菌株によって、また宿主の違いによって感染様式が異なっていることが示唆された。今後、L.pneumophilaの細胞内増殖に必要な遺伝子の変異株を使って、これらの遺伝子の肺胞上皮細胞侵入様式への関連などについてさらに調べる予定である。

ブロッコリー含有スルフォラフェンによるLegionella pneumophila細胞内増殖抑制効果について

目的
ブロッコリー新芽に多く含まれるSulforaphane(SUL)は生体内において酸化作用を抑制する還元酵素を活性化し抗癌作用を誘導すると共に一部の細菌に対しては抗菌活性を有することが報告されている。そこで、肺上皮細胞や肺胞マクロファージにおける食品由来成分(SUL)のLp感染抵抗性付与活性とその作用機序について検討を行った。

方法
肺胞II型上皮細胞A549、肺胞マクロファージMH-S、単球THP-1細胞(PMA刺激細胞)に、L.pneumophila 80-045株をMOI10で感染させ、感染前後にSUL添加、菌の細胞内増殖を経時的に測定した。

結果と考察
SULはいずれの細胞内においても本菌の増殖を抑制した。抑制効果が認められたSUL濃度では細胞毒性は認められなかった。また、SULのLpに対する特設的な抗菌活性は認められなかった。これらのことよりSULは宿主細胞の何らかの機能を介したLpの増殖抑制効果を誘導するものと考えられた。※非学会員共同研究者:末廣伸子、越智やよい

Legionella pneumophilaのバイオフィルムの形態を調整する温度依存性プロモーター領域の解析

目的
前回我々は、レジオネラ自らがバイオフィルム形成能を有し、その形態が温度に調節されることを明らかにした。今回はそのバイオフィルムの形態を調節する温度依存性プロモーター領域の探索および解析を行った。

方法
Legionella菌体内で複製可能なベクターにゲノムDNAおよびgreen flourescent protein(gfp)の遺伝子をcloningし、プロモーター活性をgfp活性として測定できるライブラリーを作成した。そのクローン化したライブラリーを静止培養し、バイオフィルムを形成させ、gfpの活性をくし停止、温度によってgfp活性が異なると考えられたクローンを選別した。また、プロモーターが含まれると考えられる領域をPCR法により増幅し、バイオフィルム内のgfp活性を測定してプロモーター活性を検討した。

結果と考察
温度依存性プロモーターと考えられる1Kb長のプロモーター領域が3つ見つかり、温度による活性の違いは統計学的に有意であった。また、プロモーター活性は有するが温度非依存性と考えられる1Kb長のプロモーター領域が2つ見つかったのでこれをcontrolとして解析を進めている。※非会員共同研究者:史君綽

Legionella pneumophila(Lp)感染において感受性であるB10.A/SgSn Slcマウスの解析

目的
これまでLp感染におけるマウスの系統差はマクロファージで報告はあるが、マウス肺感染系ではない。そこで、今回その原因因子を肺のサイトカインを測定することにより感受性マウス系統を見いだす検討した。

方法
種々のマウス(H-2コンジェニックマウス7種、近交系マウス8種)にLp80-045株を投与し、肺の生菌数を測定した。

結果と考察
Lpに対して抵抗性であったC57BL/10マウスでは肺におけるIFN-νおよび、TNE-α、IL-12p70濃度が感染2日目をピークに有意な上昇を示したが感受性であったB10.A/SgSn Slcマウスでは全く上昇しなかったこと、およびIL-4濃度に差がみられなかったことから、Th1細胞あるいはNK細胞による細胞性免疫がこのLpのクリアランスの差に重要であることが示唆された。本研究から、B10.A/SgSn Slcマウスはレジオネラ症のマウス感染モデルとして有用であると考えられた。※非会員共同研究者:山本直樹(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・ウイルス制御学)

アメーバ寒天法を使用したLegionella pneumophila環境分離株の病原性評価

目的
レジオネラ属菌の環境分離株は患者よりの臨床分離株ではないので、分離株のすべてが病原性であるかどうかわからない。我々はLegionella pneumophilaの病原性を評価する定性法としてアメーバ寒天法を考案した。今回、この方法を使用して水環境から分離されたL.pneumophilaの病原性を調べた。

方法
1986年より2004年にかけて国内の水環境から分離されたL.pneumophilaを同一のクローンに由来する菌株の重複を避けた215株を供試菌として調べた。

結果と考察
水環境より分離された215株は全てアメーバ寒天培地上に集落を形成した。この結果は、調べた全ての水環境分離株は病原性を持っていることを示しており、「培養検査法は病原株の数を知る定量法」であることも示唆している。また、生きているが培養できない状態のL.pneumophilaをアメーバと共培養することで集落形成能を回復させると、その株は病原性を持つことが報告されており、これは培地上での集落形成能がヒトへの病原性と密接に関連することを示唆している。

実験用循環式浴槽水浄化装置を用いた自然汚染、無殺菌状況下におけるレジオネラ属菌の消長

目的
民間企業との共同研究により、レジオネラ殺菌に関する実験を行うための循環式浴槽水浄化装置を当研究所内に構築し、この装置を用いて自然汚染、無殺菌状況下の循環式浴槽水におけるレジオネラ属菌等の消長実験を行い、本菌の増殖機序や循環装置内の汚染箇所に関する基礎的データを得たので報告する。

方法
殺菌剤や殺菌装置を使用しない無殺菌状況下で循環ろ過を行った浴槽水について、自然汚染によるレジオネラ属菌、アメーバ、一般細菌、従属栄養細菌、有機物量などの経時的推移を調べた。

結果と考察
無殺菌状況下の循環浴槽水中における短期間での急激なレジオネラの増殖実態および本菌と他微生物間における食物連鎖的関係が示唆される成績が得られた。このため、実際の入浴施設において循環浴槽水の衛生管理に不備が生じた場合、前述の微生物間に捕食、宿主内増殖などの相互関係が作り出され、増殖したレジオネラ属菌は浴槽水を含む同一循環系統内全体を汚染してしまうと推察される。そのため、循環式浴槽水のレジオネラ対策としては、第一に循環系統全体におけるレジオネラ属菌定着阻止のための定期的な洗浄殺菌、第二にレジオネラ属菌増殖防止のための衛生管理手法の確立、そして第三に浴槽水中におけるレジオネラ属菌の効果的殺菌方法の確立が必要不可欠である。また、本菌増殖に重要な役割を果たしているアメーバの対策もレジオネラ増殖防止対策ニ繋がると考えられる。現在、本循環装置を活用し、各種殺菌装置や消毒薬の実証実験を積み重ね、最終的にレジオネラ汚染のない安全な浴槽水の創出を目指している。

レジオネラ菌感染における樹状細胞の役割

目的
レジオネラ肺炎の重症化機構の一端を解明する目的でレジオネラ属菌に対する樹状細胞の免疫応答を検討した。

方法
レジオネラ属菌を取り込んだ樹状細胞において、その表面形質や分泌サイトカインの変化を調べた。

結果と考察
レジオネラ属菌は、取り込んだ樹状細胞の活性化を阻害し、レジオネラ感染の重症化する原因の1つと考えられる。また、逆にレジオネラ属菌が一旦不活化されると樹状細胞を活性化するようになり、取り込んだ樹状細胞に活性化マーカーであるMHC class IIなどの発現亢進やIL-12などの炎症誘発性サイトカインの分泌をもたらした。その樹状細胞は、マウス体内でレジオネラ肺炎に防御的な免疫応答を誘導した。以上のことから、樹状細胞はレジオネラ肺炎の感染防御において重要な役割を担っていると考えられる。

小児科領域における迅速感染診断の有用性と問題点(ワークショップII)「尿中抗原」レジオネラ

目的
本ワークショップでは、主として小児呼吸器感染症の原因微生物に関して、迅速診断法の有用性と問題点について、各微生物領域の専門家に解説をお願いした。

方法
肺炎は今日においてももっとも重要な感染症の1つであり、特に肺炎球菌・レジオネラ肺炎は死亡率が高い感染症の代表でもあり、また選択される抗菌薬が異なることからも迅速診断が重要である。このようななかで、患者尿から病原体抗原を特異的かつ迅速に検出できるキットが発売され利用可能となっている。本シンポジウムでは「尿中可溶抗原による肺炎の診断」をテーマに、レジオネラ肺炎の診断キットの特徴・有用性について発表する。

結果
当教室で約10年間に亘り診断した200を超える症例を対象にレジオネラ肺炎診断における尿中抗原検出キットの有用性について解析を加えた。各種検査法における陽性/検査症例(%)を測定し比較したところ、現在のスタンダードな診断法とされている培養法61/100(61.0)とキット94/154(61.0)で同一の結果が得られた。さらに、L.pneumophila血清型1以外の感染症における尿中抗原の陽性頻度は6/23症例(26.1)と低いことから、本キットは基本的に血清型1感染症に対して有用な検査法であると考えられた。今後も、尿中抗原の意義について診断と病態の両面から考察する予定である。

L.pneumophilaのバイオフィルム形成に与える培地および温度の影響

目的
循環式浴槽等の人工水環境におけるレジオネラ属菌のバイオフィルム形成機構を解明し、レジオネラ症の感染防止対策を提言することを目的とする。

方法
BCYEα液体および固形培地に接種したL.pneumophilaを2日間一定温度で培養し、その後培養温度を30℃から45℃まで変化させて菌長の変化、死滅温度、電子顕微鏡写真によるバイオフィルム形成観察を行った。

結果
固形培地ではL.pneuophilaは36.5℃から菌長が長くなり42.5℃で平均菌長200μに達し44.6℃で死滅した。液体培地では固形培地とは異なり同温度でも長桿菌が多くバイオフィルムが形成されやすいことが分かった。

レジオネラの細胞内増殖を抑制する2-deoxy-D-glucoseの作用ーDNA arrayによる解析から―

目的
マウス・オリゴマイクロアレイを用いて2-deoxy-D-glucose(2dG)がL.pneumophilaの細胞内増殖を抑制する働きについて、マウス遺伝子転写レベルで解析した。

方法
A/Jマウスの腹腔MΦを回収し、L.pneumophilaを10MOIで1.5時間感染させた。2dG(1mM)を加えた群と加えなかった群に分けて10時間培養後、MΦのtotal RNAを抽出した。アジレント社のLow RNA inputリニア増幅&ラベル化キットを用いてcRNAを合成し、マウスオリゴアレイにハイブリダイゼーションした。

結果と考察
2dG添加により発現が減少した遺伝子の絞り込みを行った結果、Toll-like receptor 2、Nuclear factor of kappa light chain gene enhancer in B-cells inhibitor、small G Rasファミリーの下流にあるRal-GDSの遺伝子が候補に挙がった。これらの遺伝子がL.pneumophilaの細胞内増殖抑制に関連する可能性が考えられる。今後、阻害剤やノックアウトマウスを使った実験を行っていく予定である。