地域病院におけるレジオネラ肺炎の対応について

レジオネラ症の年別累積報告数は近年増加傾向にあるが、高知での発症報告は少なかった。しかし、2008年既に7例の報告があり、当院症例をもとに地域病院におけるレジオネラ症の対応について検討した。2008年1月から11月までの当院入院2例は肺炎型レジオネラ症であり、尿中レジオネラ抗原にて診断された。その後抗生剤治療で軽快した。近年の発生報告数の増加は、1.尿で抗原の測定が可能となり、診断可能な症例が増えた。2.レジオネラ肺炎に対する認識が高まった。3.24時間循環浴槽の普及による集団発生の増加などが考えられる。今後、発生判明後の感染源の究明に向けた対応を行うと共に、患者、家族の精神的不安除去も医療機関として重要と考える。

レジオネラ感染に伴う肺胞上皮細胞障害の機序とその制御に関する検討

レジオネラが肺胞上皮細胞へ感染し、細胞障害性を呈することが示唆されているがその気序は十分には解明されていない。レジオネラ感染により誘導される肺胞上皮細胞障害の機序やその制御についてin vitroで検討した。

方法
ヒトⅡ型肺胞上皮細胞(A549)にレジオネラを感染させ、TUNEL法による核DNA断片化の検出、各種caspase活性、上清中HMGB1値の測定を行った。レジオネラは野生株と細胞内増殖能に関与するdot/icm遺伝子の変異株を使用し比較した。また肺胞上皮細胞障害制御について、methylprednisolone及び各種成長因子(HGF、KGF等)を検討した。

結果
変異株と比較して野生株では、TUNEL陽性細胞率、caspase3、8、9、1活性、上清中HMGB1値の有意な増加が認められた。またmethylprednisolone添加により野生株感染に伴う、TUNEL陽性細胞率の減少、caspase3、8、9、1活性と上清中HMGB1値の有意な低下が認められた。各成長因子添加の影響は認められていない。

掛け流し式温泉の温泉成分検査、微生物実態調査、および施設の衛生管理状況についての調査

日本全国の多様な泉質をもつ掛け流し温泉入浴施設の浴槽水、直接湯口から採水した湯など113検体について微生物検査を行った。

結果
1. 33検体からレジオネラが検出され、分離されたレジオネラは9割がLegionellapneumophilaで、血清群1.6.untypableが多かった。
2.泉質別では酸性泉と硫黄泉のレジオネラ検出率が10%、17%と低かった。
3.温泉成分との関係ではレジオネラの陽性率が有意に低かったのは(単変量解析の結果) pH6未満酸消費量(炭酸水素イオン濃度)400mg/L未満、電気伝導率225mS/m未満、全硬度650mg/L未満の温泉水(多重ロジスティック回帰解析の結果) pH6未満のみ
4.レジオネラ陽性率と他の微生物量との関係については、多重ロジスティック回帰解析により、従属栄養細菌200CFU/mL以上、一般細菌30CFU/mL以上、アメーバ20PFU/100mL以上で有意に高く、特に連続量として見ると一般細菌数が重要なリスク因子であることが分かった(p=0.0006)。
5.一般細菌数が10倍になるとレジオネラ汚染のリスク(オッズ比)は2.2倍になった。

考察
以上のことから各種泉質や浴槽の衛生管理状況が一般細菌数に影響を与え、それを介してレジオネラ汚染のリスクに関与することが示唆された。

各種酸化性殺菌剤のレジオネラ属菌に対する効果

目的
塩素が効きにくいとされる水質条件で、塩素剤、臭素剤、二酸化塩素、ヨウ素剤のレジオネラ属菌に対する殺菌効果を調査し、各酸化性殺菌剤の有効性を評価した。

方法・効果
前培養したLegionella pneumophila GIFU9134を1.0×105CFU/mlとなるように、pH4.5、7.0、9.5及びNH4+5mg/L(pH7.0及び9.5で実施)に調製した試験水に接種した。これに0.5mg/L(asCl2またはasC102)の次亜塩素酸Na、BCDMH(消臭剤)、二酸化塩素、ヨウ素を添加し、1、5、10、30分及び1、3時間にレジオネラ属菌数を測定した。pH4.5及び7.0では、すべての消臭剤で接触1分後にレジオネラ属菌が不検出であった。pH9.5では、不検出にするのに、塩素は1時間、臭素は5分を要したのに対し、二酸化炭素は1分であった。pH7.0+NH4+では、塩素は30分後に不検出となったが、他殺菌剤はすべて1分で不検出となった。

入浴施設に関連したレジオネラ症発生時の浴槽水の菌濃度調査

目的
レジオネラ症発生時には感染症法に基づく積極的疫学調査として地方衛生研究所等において浴槽水からのレジオネラ属菌分離の試み、浴槽水由来株と患者由来株の比較による感染源の特定が実施される。そこで全国の地方衛生研究所が個々に保有する情報並びにデータに基づいて、感染発生時の菌濃度等の情報を収集、解析した。

方法
次のような質問票と回答票を配布、回収し、集計した。
質問票①疫学調査実施の有無②患者の年齢、症状③利用施設④菌分離の有無⑤PFGE解析の有無など

結果
76の地方衛生研究所から回答が得られた。
①入浴施設の関連が推定される事例は35研究所の101事例
② ①の内、患者からレジオネラ属菌が分離されたのは25事例、施設から菌分離があったのは19事例。患者由来株と施設分離株のPFGEパターンが一致し最終的に原因施設の特定に至ったのは14事例。
③ ②の事例の浴槽水等での菌濃度は90〜140、000CFU/100mlであった。
④菌濃度の低い状況での感染事例には肝機能障害、糖尿病、高血圧といった易感染性要因が見られた。

レジオネラ症の発生につながる浴槽水における菌濃度の情報が収集でき、今後のレジオネラ症発生予防の策定に活用されることが期待される。

Acanthamoeba castellaniiとLegionella pneumophilaの捕食寄生相互関係に及ぼす温度の影響

目的と方法
Legionella pneumophilaの寄生性と温度の影響についてL. pneumophila Suzuki株、及びLPO1株を用い調べた。Molx10、100、1000の感染菌量にて15℃、20℃、25℃、30℃の各温度におけるAcanthamoeba castellanii ATCC30234内での増殖性、及び本菌の病原性、増殖性にかかわる遺伝子発現を定量的リアルタイムPCR法にて調べ、両生物の捕食寄生相互関係に対する温度の影響について検討した。

結果
両株ともすべての菌量にて15℃、20℃ではamoebaに殺菌され、25℃、35℃ではamoeba内で増殖した。単独での増殖性は、Legionellaでは35℃で増殖し、15℃では抑制され、amoebaでは反対の結果であった。又、15℃ではcyst化傾向が認められ、cyst状態での35℃感染実験を行った所、tropozoie感染に比して感染性は大きく低下した。一方、L.pneumophilaの細胞内増殖性に関与する遺伝子群の調節遺伝子csrAの発現が35℃で著名に増加し、又、Acanthamoebaではcyst化に関与するとされるMetacaspase1遺伝子の発現が15℃において著しく高まっていた。

考察
以上の結果から夏季を除く自然界の低い水温においてはLegionellaはamoebaに捕食消化されるか、あるいはcyst化により感染排除され、又夏季の自然水あるいは人工水環境の水温の高い環境ではアメーバに寄生する関係が示された。

Legionella pneumophila血清群1のsequencebased typing(SBT)

目的
塩基多型性に基づいた分子疫学的手法SBTについて、パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)との比較検討を行った。

方法
L.pneumophila血清群1を26株のflaA、mompS、proA遺伝子の一部の領域の塩基配列を決定すると共に、染色体DNAをsfiIで消化し、PFGEを行った。

結果と考察
PFGEの方が識別能力では優れているが、定量化は難しい。SBTのデータはデジタル化でき、再現性においても優れているが、分解能はPFGEより劣っている。
したがって、分離株のデータベース化にはSBTを用い、集団感染源の解明にはPFGEを用いる等、両者の長所を見極め、それぞれ使い分けると良いと思われる。

Legionella pneumophilaへの塩素消毒効果に対するamoeba貪食および血清群の影響

目的
環境から分離された同一遺伝子型であるが血清群の異なるL.pneumophila株を用い、amoeba内のこれらの菌株に対する塩素殺菌効果について検討した。

方法
Acanthamoeba castellanii ATCC 30234に同じ遺伝子型のL.pneumophila SG1とSG5を貪食させた。滅菌水道水中のAmoebaに、各濃度の塩素を添加し、10分後に反応を止めた。超音波でamoebaを破壊し、35℃で5日間培養後、菌層をカウントした。

結果と考察
栄養体amoeba内のL.pneumophilaでは、両血清群とも50mg/Lまで生存していた。シスト体amoeba内では同じく70mg/Lまで生存していたが、SG5に有意な塩素耐性傾向が示された。このため、L.pneumophilaamoeba内でSG1から他の血清群にシフトして塩素に耐性になる可能性が考えられる。※非会員共同研究者:高柳進之輔

レジオネラ属菌における発育能力の検討

目的
レジオネラ属菌は実験によって、菌株による発育能力の差がある可能性が示唆されている。そこで各種レジオネラ属菌を用い、血清型及び菌種による差異を検討した。

方法
Legionella pneumophilaの血清1〜6群、:L.bozemanii、L.dumoffii、L.micdadei、L.gormanii等14種20件濁度を測定しながら同じ濃度に調整した菌液を培養した後、発育したコロニーをカウント。濁度とコロニー数を比較した。

結果
レジオネラ属菌の発育能力には、種類によって顕著な差が見られた。今後は培養条件の影響を検討する。

Legionella pneumophilaおよびAmoebaに対する銅殺菌効果の検討

目的
銅には残留性があり、殺菌効果があると知られているが、温泉のレジオネラ属菌に対する銅殺菌効果については十分に検討されていない。そこで、L. pneumophilaおよびAmoebaに貧食されたL. pneumophilaに対する銅殺菌効果について検討を行った。

方法
1)各pHに調整した試料に一定量の銅イオン溶液および銅コーティング試料を加え、L. pneumophilaを添加後、一定時間ごとにBCYEαに塗布、培養した。
2) AmoebaL. pneumophilaを貪食させ、シスト化して0.5〜10mg/L Cu2+濃度で3時間作用させた後、Amoeba破壊後、BCYEαに塗布、培養した。

結果
1)銅イオン溶液では、Cu2+10mg/Lで殺菌効果は殆ど認められなかったが、銅コーティング試料では、溶出したCu2+10mg/L以下でも殺菌効果が認められた。
2) Cu2+濃度10mg/Lで3時間作用してもAmoebaに貪食されたL. pneumophilaは殆ど殺菌されなかった。しかし、シスト化したAmoebaをCu2+濃度0.5〜10mg/Lで3時間作用してもAmoebaの生存には殆ど影響しなかった。