レジオネラ感染繊毛虫より放出される小胞ペレット内でのヒト病原細菌の生存性について

目的
繊毛虫は自然環境に広く生息しており、レジオネラに感染した繊毛虫が生菌を多数パックしたペレットを放出することはヒト病原細胞の自然環境での生存性を高める新たな環境因子として注目されている。そこで、ペレットへのヒト病原細菌の移行性、生存性について検討した。

方法
レジオネラ・ニューモフィラ(Lp)感染繊毛虫培養系に大腸菌(Ec)、サルモネラ(Se)、ヘリコバクター・ピロリ(Hp)を添加し、
①繊毛虫とLp、EC、Se、Hpとの共培養時のペレットの産生性と細菌の生存性
②Lp感染繊毛虫にEC、Se、Hpを添加しペレット内への移行性、生存性について検討した。

結果
Lp感染繊毛虫は周囲に存在する他の細菌も同時に巻き込みパッキングし、ペレットとして放出することが明らかになった。また、ペレットはその中に他の細菌の生存性をも規定する可能性が示唆された。

冷却塔水中のレジオネラのマイクロ流路デバイスによる迅速モニタリング

目的
レジオネラ症予防のためには水環境中のレジオネラの迅速・高精度なモニタリングが重要である。今回、マイクロ流路デバイスを用いた冷却塔水中のレジオネラ数測定法を検討した。

方法
細菌試料に、Legionella pneumophila、冷却塔水は100倍濃縮した。マイクロ流路デバイスに染色液と試料の混合部、及び検出部からなるマイクロ流路を作製し蛍光抗体、試料を一定速度で流した。撮影した画像解析により試料中の細菌数を算出した。同試料を用いて蛍光顕微鏡で菌数を測定、比較した。

結果と考察
本デバイスで得られた値は蛍光顕微鏡での測定値と高い相関性が見られた。また、冷却塔水中のレジオネラ菌数をマイクロ流路デバイスで測定した値は蛍光顕微鏡での測定値の60%以上であった。本手法はデバイス上で細菌の蛍光染色が可能であり、対象とする細菌を1時間以内に係数できることからレジオネラ数測定の自動化に大きく寄与するものと考えられる。

健常人におけるレジオネラ属細菌の疫学調査

目的
レジオネラ肺炎は急性期での診断が難しい感染症の一つである。細菌の分離が困難、且つ培養には特殊な培地・培養環境が必要である。近年は尿中抗原検出キットの利用が進んでいるがL.pneumophila血清群1のみの検出で、その他の検出は難しい。今後、キットの対象範囲を広げるためにはレジオネラ感染の実態を把握する必要がある。そこで健常人、肺炎患者の疫学調査を行った。

方法
健常者約60人の血清サンプルについてL.pneumophila血清群1-6、及びL.bozemanii L.dumoffiiL.gormaniiL.micdadeiに対する血清抗体価を調べ、その分布を評価した。

結果
健常人血清について、L.pneumophila血清群3及びL.bozemaniiに対して他の血清群に比較して抗体価の上昇が認められる血清が複数みられたが、いずれも64倍希釈までであった。今後、L.pneumophila血清群7-12、及びL.longbeachae血清群1-2について調査を行う予定である。

液体石鹸管理の危険性について

目的
当院での液体石鹸管理は注ぎ足し禁止、容器は空になったら洗浄、乾燥した上で石鹸を補充するとしていたが、注ぎ足しを行っていた部署の石鹸から菌の検出を認めた。これを機に石鹸管理の調査を実施し、今後の方向性を明らかにした。

方法と結果
看護職員が配属されていない部署と管理の徹底が予想されるICU、救急外来などの石鹸について培養検査を実施した。その結果、注ぎ足しを行っていたのは1部署のみであったが、培養の結果はK..oxytoca、P.aeruginoza、S.macescensが複数部署から検出された。

結論
マニュアル通り管理を実施していた部署から菌の検出が認められたことから、実施者により処理の差があることが分かった。作業者による「清浄度の差」という不確定要素を排除する必要がある。調査結果を踏まえ、当院ではディスポ製品を導入することとした。また感染対策の周知徹底は病院全体への徹底が必要である。

病院内の給水・給湯水における微生物汚染調査

目的
水供給システムを介した易感染患者への環境由来菌による医療関連感染が問題となっている。予防対策として医療環境水の微生物生息状況を把握するため易感染患者ケア病棟の給水・給湯水について汚染度調査を行った。

方法と結果
初流水と1Lフラッシング後の給水、給湯水を試料とし、水道法、レジオネラ症防止指針等に準じて蛇口部周囲と配管内の汚染について1週間毎に、計4回調査を実施した。4回ともに初流水の方が高い生菌数を示した。MDRPは検出されなかったがB.cereus、L.Pneumophila等の細菌が検出された。

考察
医療環境水は様々な細菌の汚染が考えられるため、給水・給湯設備の定期的清掃と維持管理、また使用前の十分なフラッシングが重要と考える。

Legionella pneumophilaの遺伝子型別による菌株解析

目的
この5年間でレジオネラ症例数は5倍に増加した。尿中抗原迅速診断法の普及による診断数増加と思われるが、そのため感染源解明に必要な患者からの菌の分離頻度は低下している。今回、Legionella pneumophilaの遺伝子型別法で1980年の初症例から2008年までの臨床分離株について型別を行った。

方法と結果
遺伝子型別法(SBT)にて151株の型別を行なったところ96種類の遺伝子型に分けられ、本法の有用性が確認できた。また臨床分離株とは別に、浴槽水、冷却塔水、土壌、それぞれの分離株について型別を行ったところ、浴槽水分離株の多様性、生息域により遺伝子型の分布が異なることが示された。

考察
欧米に比べて臨床分離株の遺伝子型が多様であることが分かったが、これは日本では入浴施設が主要な感染源であり、浴槽水からの分離株の多様性が反映されているのかもしれない。

Legionella dumoffiiの低温下での増殖を促進する遺伝子の解析

背景
レジオネラ属の1菌種であるL.dumoffiiによる肺炎は、臨床症例において劇症化することが報告されている。本菌がプラスミドを持つことに着目し、L.dumoffiiTEX-KL株のプラスミド(pLD-TEX-KL)の全塩基配列を決定し、遺伝子解析を行った結果、このプラスミドには接合伝達能力、プラスミド自身を他の細菌に移行させる能力があること、更にこのプラスミド上に低温で増殖するために必要な遺伝子が存在することが分かった。そこでその責任遺伝子の解析を行った。プラスミドを失った株、カナマイシン耐性遺伝子を挿入した変異株を作成し、野生株との低温増殖能力を比較した。

結果と考察
L.dumoffii TEX-KL株のプラスミドは約66kbpで、その上に57のORFが同定され、このpLD-TEX-KLは高頻度で接合伝達されることが確認された。プラスミドをcureした株では低温下での増殖は野生株と比較して遅く、責任遺伝子はtraApと考えられた。

水環境に存在するLegionella pneumophilaの膜タンパク質の遺伝子型

目的
Legionella 属菌は自然環境中に広く存在しているが現存量は少ない。一方、スパや冷却塔など水を循環使用する人工環境でしばしばレジオネラ症を引き起こすなど特徴に違いがあると考えられることから自然環境と人工環境に存在するL. pneumophilaの膜タンパク質をコードする遺伝子に着目し、その違いを明らかにした。

方法
検査試料として人為的影響が少ない源泉付近(鹿児島、パハン(マレーシア))、人工環境として冷却塔(大阪)、噴水(バンコク)から採水。解析対象としてはL.pneumophila1株、Paris株、Lens株、Corby株の4株に存在する膜タンパク質をコードする遺伝子の内、塩基配列の相同性が低く、非同義置換の割合が高い遺伝子、今回はABC輸送体をコードすると考えられる遺伝子を対象とした。

結果と考察
鹿児島/パハン、大阪/バンコクの二つに大きく分かれ、採水時期による遺伝子型に変化は見られなかった。また、アミノ酸配列として評価した所、遺伝子型と同様2つに分けられた。即ち、自然環境と人工環境では基質輸送に関わる膜タンパク質の遺伝子型は異なり、変異はアミノ酸レベルで生じていることを確認した。

富山県で発生したレジオネラ症および患者から分離されたレジオネラ属菌の疫学的解析(2005〜2008)

はじめに
レジオネラ症の報告例が全国的に増加傾向にある原因として、尿中抗原検出法により一部の市中肺炎がレジオネラ症と診断されることが指摘されている。一方、培養検査が敬遠され患者からレジオネラ属菌が分離されないことが問題視されている。感染源を追求し、感染の詳細を解明するためにも分離は重要である。2005年から2008年11月までの富山県の発症例から、患者から分離されたレジオネラ属菌と合わせて疫学解析を行い、菌分離の重要性について報告する。

方法と結果
患者から分離した54株の血清型とPFGEによる分子疫学解析を行った。調査期間中のレジオネラ発症は65例でいずれも感染源は特定されていない。診断の大半は尿中抗原検出法であるが、内15例では喀痰培養でL.pneumophillaを検出した。54株中、血清型1が48株(88.9%)、血清型4が4株(7.4%)、尿中抗原検査で検出できない血清型2と3がそれぞれ1株ずつであった。血清型4は一人の患者から血清型1と同時に検出した。51株のPFGE検査の結果、同一患者から分離された同一血清型の菌で異なるPFGEパターンが認められた。考察:このような情報が感染源を特定するのに有力な情報となり、培養検査による原因菌分離の重要性が改めて示された。

レジオネラ肺炎は増えているか?

目的と方法
尿中抗原迅速キットの普及や感染症新法第4類の全数把握疾患に指定され全国的な調査監視が行われるようになりレジオネラ症の届出数が増加してきている。欧米においてもレジオネラ症の発症は増加の一途で、気温、平均降水量、湿度、季節との関連性の調査報告がなされている。そこで発生頻度の変化について検討するため当院の年度別のレジオネラ症症例を抽出し、最近の臨床増を検討した。

結果と考察
2001から2004年は発生数3件肺炎入院患者の2.2%、2004年5例3.3%、2008年は9月までで7例、4%を超えている。菌を検出した5例中3例がL.pneumophilla SG1、2例が同SG3であった。肺炎像を呈していない症例患者からも菌が検出された。検査の普及等によりレジオネラ症の検出頻度が上昇している可能性もあるが、欧米のように発症例自体が増加していることも考慮され、また軽症例も散発しており、降水量や天候との関連についても今後検討する。