レジオネラ属菌に対する過酢酸およびヒノキチオールの消毒効果

目的
浴槽および配管等の消毒に使用する適切な消毒剤の選定を目指し、過酢酸およびヒノキチオールを使用し、レジオネラ属菌の殺菌力について検証した。

方法
1.浴槽水5Lのモデル浴槽での試験ろ過した残り湯5Lを浴槽に入れ、水温を40℃に調整し、過酢酸およびヒノキチオールの一定量を滅菌水に溶解後浴槽に添加し、終濃度を過酢酸2.0、5.0㎍/ml、ヒノキチオール12.5、25.0㎍/mlとした。培養したL.pneumophila血清型1型、6型を各浴槽に一定菌量添加し、定めた時間経過後に一定量の湯を採取、GVPCά寒天培地に塗沫、37℃で5日間培養し、コロニー数を計測した。
2.80Lのモデル浴槽での試験精製水約80Lを浴槽に入れ、1と同様の方法によりコロニー数を計測した。

結果
1.5Lの場合
ヒノキチオールは12.5㎍/mlの濃度でL.pneumophila血清型1型および6型の増幅を大きく抑制し、1型に対しては24時間で完全に抑制した(培養6時間後)。25.0 ㎍/mlの濃度でも同様の抑制効果を示した。
2.80Lの場合
過酢酸は上記1と類似する結果を示し、6型には若干効果が悪いものの5.0㎍/ml濃度で良好な殺菌効果が期待される。ヒノキチオールは25.0㎍/ml処理で8時間経過後、1型では約3.5Logの減少、処理後8時間で検出されなくなった。12.5㎍/ml処理でも処理後24時間で検出されなくなった。6型では処理後8時間までで速やかに菌数の低下が見られた。以上のことから、L.pneumophilaに対するヒノキチオールの殺菌効果が裏づけられたと判断できる。

低濃度オゾン水のLegionellaに対する殺菌効果

緒言
厚生労働省は浴槽水の水質基準でLegionellaに関して10CFU/100mL未満という基準を設け、浴槽水の塩素消毒を義務付けたが、塩素消毒はアンモニアや有機物などの汚濁成分により変動が大きく、濃度管理が難しく十分な効果が得られない場合がある。このため、塩素に代わる消毒剤の検討が行われている。オゾンはその一つであるが、臭気や人体への影響を考慮し低濃度での使用が要求されるが、低濃度領域におけるLegionella殺菌効果については十分には明らかになっていない。そこで、より正確な殺菌効果を求めるためオゾン消費を考慮した実験を実施し、低濃度領域におけるオゾン水のLegionellaに対する殺菌効果をCT値評価した。

方法と結果
精製水にリン酸塩溶液を加えpHを7.2に調整後、高圧蒸気滅菌し放冷して20℃の恒温水槽内で試験を行った。オゾンは荏原実業株式会社製オゾンモニタEL-55-RDに通水して測定し、試料が1Lになった所でオゾン濃度を測定した。試験は2×109CFU/mlの濃度に調整したL.pneumophilaの菌液をオゾン水に添加した。
⑴オゾン濃度は時間経過とともに直線的な現象が認められ、濃度が高いほど減少率が大きかった。菌液の添加により初期に急速な濃度の減少が認められるが、2分30秒以降は菌液無添加の場合とほぼ同様の挙動を示した。
⑵オゾン消費を最小限にした試験で、オゾン濃度0.034mg/Lでは30秒で106CFU/mlの菌数が102CFU/mlまで低減、1分で不検出となった。濃度0.005?/Lでも1分後の菌数が104CFU/ml、1分30秒で101CFU/mlまで減少。強い殺菌性を示した。
L.pneumophila基準株1株、環境分離株5株、臨床分離株2株の計8株の99.99% CT値は0.007〜0.013mg・min/Lであり、菌株間の相違は殆ど認められなかった。考察:上記の通り、オゾン水の低濃度領域においてもLegionellaに対する殺菌作用のあることが判明した。今回は夾雑物の存在しないLegionella単独での実験であるが、種種の物質が共存した場合でも今回の方法でCT値を求めることによって殺菌に必要なオゾン濃度を求めることが可能と考える。

循環式浴槽設備の清浄度維持に及ぼす高濃度塩素消毒実施頻度の影響

目的
温浴営業施設において、実施頻度を変えたときの、高濃度塩素消毒の設備内清浄度維持に及ぼす効果を、ろ材及びろ過装置通過水の微生物汚染度を指標として検討した。

方法
営業期間中は、電解次亜塩素酸により浴槽水の殺菌管理をし、更にジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを用いて、毎日あるいは1週間に1回、10mg/Lにて高濃度塩素消毒を行った。その間経日的にろ材とろ過装置通過水を採取し、従属栄養細菌、レジオネラ属菌及び自由生活性アメーバの検査を行った。

結果
毎日1回10mg/Lの高濃度塩素消毒により、実験用ろ過装置内のレジオネラ属菌や自由生活性アメーバの増殖を抑制できた。一方、これら微生物汚染の進展を完全に抑えることができなかった。

循環式浴槽におけるレジオネラ属菌対策-ろ過器内清浄度維持に及ぼす高濃度塩素消毒実施頻度の影響-

目的
温浴施設におけるレジオネラ属菌対策においてろ過器を含めた循環配管系内の定期的高濃度塩素消毒は系内の清浄度維持に極めて有用な管理手法である。循環浴槽配管に分岐接続したろ過器を用い、ろ過器内の清浄度維持に及ぼす高濃度塩素消毒実施頻度の影響を検討した。

方法
電解次亜塩素酸により浴槽水の殺菌管理を行い、営業終了後にジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(ヘルス湯浄剤)で毎日、又は週一回、10mg/Lにて高濃度塩素消毒を行い、経日的にろ材中の従属栄養細菌、レジオネラ属菌及び自由生活性アメーバ(以下FLA)を検査した。

結果
約2ヵ月の実験の結果、
①毎日実施はろ材へのFLAの定着及び増殖を抑制しレジオネラ属菌汚染を防止した。
②週一回の実施についてはいずれの増殖も完全に抑えることは出来なかった。
従って、高濃度塩素消毒実施は各温泉施設において入浴者数や営業時間等の負荷に合わせた適正な頻度設定の必要性が示唆された。

クロラミンBによるレジオネラ属菌の消毒

目的
浴槽のレジオネラ属菌汚染対策において、高pH、アンモニア等を含む温泉では遊離残留塩素による消毒が困難であることから、代替消毒法としてクロラミン消毒に着目し、取扱いが比較的容易と考えられるクロラミンBを使用し、高pH条件下のレジオネラ属菌の不活化を検討した。

方法
Legionella pneumophila血清群1(長崎80-045株)を-80℃のスキムミルク凍結保存よりBCYEα寒天平板培地(DIFCO)に接種して30℃で4日間培養後コロニーを生理食塩水に懸濁し、2回遠心洗浄した。クロラミンB(関東化学)は全残留塩素濃度が塩素換算として約1000mg/Lの保存液を作成、室温で遮光保存した。試薬はこの条件下で1ヶ月以上安定に保存できることを確認した。全残留塩素濃度はポケット残留塩素計(HACH社)でDPD法により測定。消毒実験にはPage amoeba solution(pH7.7)、ホウ酸緩衝液(pH8.9)等の緩衝液を使用、pHは実験時にpHメータ(堀場B-212)で確認した。

試験
①クロラミンBを塩素量として0、1、3、6mg/Lに調整した緩衝液20〜30ml(40℃)に106cfu/mlとなるよう菌を添加。
②一定時間ごとに0.1mlの飼料を採取し、0.9mlの1%チオ硫酸ナトリウムを添加して残留塩素を中和し、希釈系列を作成してBCYEα寒天平板培地に接種、35℃で4日間以上培養。
③生残菌数を求めた所、実験期間を通して全残留塩素濃度の変動は最小濃度の1mg/Lでも20%未満に収まっていた。

結果と考察
1. pH7.7では①クロラミンB濃度1.1mg/Lで6時間以内に不検出(4.5-log不活化) ②.5mg/Lで3時間以内③5.5mg/Lで30分以内で不検出となった。2. pH8.9では消毒効果が低下し①クロラミンB濃度1.1mg/Lで6時間経過後1.9・logの不活化②3.5mg/Lで30分で3・logの不活化、3時間後に不検出(4.5・log) ③5.5mg/Lでは②と同様の結果が得られた。以上のことから、高pHでのクロラミンBによる消毒は全残留塩素濃度3〜6mg/lにおいて実用的と考えられる。

循環ろ過式モデル浴槽を用いた過酸化水素と銀の複合剤の洗浄・殺菌効果について

目的
入浴施設における循環式浴槽では、配管内のバイオフィルム除去、消毒に過酸化水素等を用いているが、過酸化水素による洗浄は35%濃度の市販品の場合、多量(5.7〜8.6%純分2〜3%)の薬剤を必要とするため施設の休業日など限られた時期しか利用できない。より低濃度で利用できる洗浄剤として過酸化水素と銀の複合剤について、その洗浄・殺菌効果を検証した。

方法
1約2㎥の浴槽の循環ろ過式モデル浴槽を用いて、次亜塩素酸ナトリウム管理下で2週間運転し、延べ29名が入浴、皮脂等の有機物を蓄積させた。
2その後、次亜塩素酸ナトリウムの添加を停止、残留塩素を消失させて無殺菌循環を9日間行い、細菌が増殖しバイオフィルムの形成を待った。予め、浴槽のVP(塩化ビニル)配管内にバイオフィルム形成の観察用に5×5mmのVPテストピースを配置した。
3過酸化水素と銀の複合剤(クリーンサイドNV-35、ケイ・アイ化成製、過酸化水素35%+銀700mg/l)で洗浄を行った。薬剤を浴槽水に対して0.5%添加、1時間循環洗浄後、カタラーゼを添加して1.5時間中和した。
4その後排水し、水でリンスした後、サンプリングを行った。

結果
1浴槽水、ろ過器内水ともに無殺菌循環1日目で従属栄養細菌数が急激に上昇し、洗浄までの間105〜106CFU/mlの生菌が確認された。レジオネラ属菌数も徐々に増加、無殺菌6日後には106CFU100/mlの汚染が確認された。2過酸化水素と銀の複合剤を用いた洗浄、リンス後の浴槽水では従属栄養細菌、レジオネラ属菌は検出下限以下となった。VP配管内、ゴムパッキン、ヘアキャッチャーにおける拭き取り試験では洗浄、リンス後にはレジオネラ属菌が検出されず、全ての部位で殺菌できた。3走査電子顕微鏡によりゴムパッキンを観察したところ洗浄、リンス後にはバイオフィルムや比較的大きな有機物等も除去されていた。配管内に設置したVPテストピースに関してもバイオフィルムが除去されていた。

考察
過酸化水素と銀の複合剤による低濃度過酸化水素洗浄は、その複合効果により従来の過酸化水素洗浄の1/10以下の使用量でも優れた洗浄・殺菌効果を示した。又、発泡によるポンプの空転や中和の手間も軽減するため実質的に作業時間を短縮し、限られていた過酸化水素洗浄の機会を広げることが出来ると考えられる。

新規殺菌セラミックによるLegionella pneumophila殺菌効果に及ぼす温泉水泉質の影響

目的
新規殺菌セラミックによるL.pneumophila殺菌効果に及ぼす温泉水泉質の影響について検討した。方法泉質の異なる9種類(硫黄泉、炭酸水素塩泉Na型、塩化物泉、冷鉱泉、鉄泉、硫酸塩泉、単純温泉、塩化物強塩泉、放射能泉)の温泉水を用いて当該セラミックのL.pneumophilaに対する殺菌効果を検討した。

結果と考察
温泉水の泉質によって当該セラミックの殺菌効果が異なることが明らかとなった。即ち、処理24時間目においてkilling rateで単純温泉>硫黄泉>炭酸水素塩泉Na型であり、特に、塩化物強塩泉での生菌数は検出限界であった。一方、硫酸塩泉や冷鉱泉は僅かの生菌数の減少を認めるに過ぎなかった。このことから当該セラミックはわが国の温泉の9割を占める泉質(単純温泉、塩化物泉、硫黄泉、炭酸水素塩泉Na型)の温泉水において優れたLegionella属菌殺菌効果を発揮することが推察される。

循環式浴槽におけるレジオネラ属菌除菌技術の評価研究

目的
循環式浴槽において、ろ過器が生物浄化状態でレジオネラ属菌の定着条件を想定し、各種除菌技術を適用した場合の浴槽水中のレジオネラ属菌の動向を調査、各処理方式のレジオネラ属菌対策としての有効性を評価する。

方法
1.循環式浴槽に微生物汚染を受けたろ過器のろ材を少量添加し、水を循環させ、レジオネラ属菌、アメーバ類、各種細菌類の定着挙動を調査した。
2.定着確認後、①塩素処理②紫外線処理③MF(精密ろ過)処理を実施、処理前後のレジオネラ属菌等の挙動を確認した。
3.複数材質種の板・配管を浴槽内に浸透し、各種細菌の挙動を調査した。

結果
1.循環開始後の浴槽水中、レジオネラ属菌の増加はアメーバ類の増加に追従。また従属栄養細菌、一般細菌の増加も確認した。
2.各種処理後の結果は①塩素処理はアメーバ類を効果的に抑制②紫外線処理は直後でのレジオネラ属菌を抑制したが、徐々に増加。紫外線処理出口以降の配管、浴槽の汚染によるものと判断する③MF処理は初期はレジオネラ属菌を90%以上除菌するものの、短時間で膜の閉塞を生じた。
3.各種材質への細菌類付着は銅が最も少なく、鉄が最も多かった。銅は抗菌作用が高く、また鉄は腐食生成物を嵩高く生じ、バイオフィルムが多く定着したものと考えられる。

Legionella pneumophila およびAmoebaに対する銀殺菌効果の検討

目的
銀は残留性がありpHの影響を受けにくいことから、温泉における殺菌剤として有効と考えられるが、まだまだ検討が充分ではない。そこで、Legionella pneumophila及び、Amoebaに対する銀殺菌効果の検討と、循環式温泉施設への導入を行った。

方法
1.温泉水にL.pneumophilaを添加後Ag+濃度を調整し、一定時間毎に上澄みをBCYEαで培養
2. Acanthamoeba castellaniiATCC30234L.pneumophilaを貪食させ、シスト化し銀を作用後、Amoebaを破壊した上澄みをBCYEαで培養
3.温泉水を滅菌ろ過後、ろ過膜表層を拭いとって滅菌水に懸濁し、0.2M KCl・HCl bufferを加えBCYEαで培養

結果
1. 24時間で完全に殺菌された。
2. Amoebaの生存にはほとんど影響がなかった
3.実際に温泉施設に銀装置を設置した結果、当初は検出、その後の実験では検出されなかった。L.pneumophilaが検出されるかどうかは温泉水中の銀濃度に依存する形となった。

ナノ微粒子強磁性フェライトのナノフィルターとレジオネラ及び水カビ菌へ及ぼす除菌効果

目的
レジオネラ菌の除去法として、次亜塩素酸ナトリウムを用いることは、肌への刺激や臭気から、これに代わる方法が求められている。そこで、ナノ微粒子強磁性フェライトのナノフィルターによる防除を検討した。方法
髪の毛などをろ過する装置のあとに円筒状の装置を取り付け、レジオネラの防除効果を測定した。(フィルター装着前、2日後、5日後の菌数を測定)結果
フィルター未装着、2日後5日後において、それぞれ100mlあたり36000、7000、530と減少した。レジオネラがフィルターを通過する際にうづ電流が発生し、これにより殺菌されると考えられる。