冷却水のレジオネラ属菌に対するNaCIOの殺菌効果調査

目的
一般にレジオネラ属菌には塩素剤が有効とされるが、我々の調査では無処理冷却水のレジオネラ属菌検出率が53%だったのに対し、有機系殺菌剤処理では20%、塩素系殺菌剤処理では55%と無処理と同等だった。そこで、冷却水のレジオネラ属菌に塩素剤が効きにくい要因について検討した。

方法および結果
1.塩素系殺菌剤使用でレジオネラ属菌が検出された冷却水4検体に対して、遊離残留塩素濃度5mg/LとなるようにNaCIO溶液を添加し、一定時間後のレジオネラ属菌数を培養法で測定した結果、菌数が3桁減少するのに4検体全て60分以上であった。冷却水から培養法で分離したレジオネラ属菌とL.pneumophilaATCC33152株を10mMリン酸緩衝液に懸濁し、遊離残留塩素濃度1mg/LとなるようNaCIO溶液を添加し、同様に生菌数を測定した結果、全ての株で生菌が不検出(99.9%以上)となり、冷却水分離株もNaCIOが効きやすかった。
2.冷却水の水質の影響を評価するため、冷却水3検体を遠心沈殿し、沈殿を10mMリン酸緩衝液に懸濁し、遊離残留塩素濃度5mg/LとなるようにNaCIO溶液を添加、一定時間後のレジオネラ属菌数を培養法で測定した。結果、99.9%殺菌時間は30〜60分以上であった。
3.冷却水中のアメーバ類やバイオフィルムの小片の影響を評価するため、ろ過した冷却水で同様に試験した結果、99.9%殺菌時間は60分以上で、ろ過しないものと変わらなかった。一般的に、冷却水では水質の影響やレジオネラ属菌がアメーバ類やバイオフィルムに保護されていることにより塩素系殺菌剤が効きにくくなると考えられているが、今回の調査結果からそれらは主要因ではないと判断された。

考察
Schookらはアカントアメーバに感染して増殖したL.pneumophilaはBCYEa寒天培地で増殖したL.pneumophilaと比べて塩素系殺菌剤への耐性が64倍上昇し、環境中のレジオネラ属菌には塩素系殺菌剤が効きにくいと報告している。実際の冷却水のレジオネラ属菌に塩素系殺菌剤が効きにくい要因としてもアメーバ内増殖が関与している可能性があるため、更に検討を続ける。

レジオネラ属菌およびアメーバの消毒剤および除菌剤に対する感受性試験

目的
レジオネラ属菌の存在状態の違いによる殺菌剤に対する感受性の違いはまだ明確でない。そこで、レジオネラの存在状態の違いによる試験系を確立し、各種殺菌剤に対する感受性を評価した。またアメーバ(栄養体)および純培養したレジオネラ属菌についてもその感受性を評価した。

方法
L.pneumophila ATCC33152とAcanthamoebacastellanii ATCC30234を使用し、存在状態の違うレジオネラ菌、①アメーバ内で増殖し、放出されたレジオネラ属菌②アメーバ内で増殖中のレジオネラ属菌、それぞれについて消毒剤・除菌剤の効果を調べた。また、アカントアメーバに対する不活化効果を調べた。

結果
①は純培養したレジオネラ属菌と比較して効果が若干低下した。
②はさらに低下傾向を示した。またアカントアメーバの不活化にはレジオネラ属菌と比較して高い濃度が必要であった。今後、より詳細に検討する。

モノクロラミンによる循環式浴槽の消毒効果について-営業施設における検証試験‐

目的
遊離塩素消毒が困難とされるアルカリ泉質やアンモニア態窒素が多く含まれる温泉水の循環式浴槽をもつ営業中の3施設で、6週間モノクロラミンの生成装置と全塩素濃度測定器による自動制御装置を導入し、消毒効果を検証した。

方法
モノクロラミンは循環式浴槽のろ過器前に注入し、濃度は自動制御で3mg/L程度を保持した。モノクロラミン濃度の測定は現場測定とDPD/FAS滴測定法により行った。また、塩素消毒で検出される消毒副生成物の定量を行った。

結果
モノクロラミン濃度は2施設で目標値3±1mg/Lの範囲内を保持した。1施設は一時的に目標値からの逸脱があったが、濃度測定器の電極洗浄で改善された。トリクロラミン(悪臭の原因)、レジオネラ属菌は3施設とも検出されなかった。浴槽水中のレジオネラ属菌の遺伝子数は低値であるが検出された。自由生活性アメーバは検出されなかった。また、濃度を適正に保持できた2施設では人体に有害な消毒副生成物は試験前より低値に安定した。以上から、モノクロラミンがアルカリ泉質やアンモニア態窒素が多く含まれる温泉水の循環式浴槽に対して高い消毒効果のあること、カルキ臭がなく、消毒副生成物の発生が極めて少ないこと等が実証され、安全で快適な新たな消毒法として期待される結果が得られた。

レジオネラ汚染に着目した中央式給湯設備配管における滞留部位の検討

目的
中央式給湯設備では湯の加熱や循環によって水質悪化の傾向があり、さらに給湯温度が低い場合にはレジオネラ属菌等の微生物汚染の報告も多々見られる。今回、同設備の水槽内の圧力を逃がすための逃がし管に着目し、レジオネラ汚染を検証したので報告する。

方法
1970年代竣工の宿泊施設B4Fに設置された貯湯槽7基のうち、4系統(客室高層系1系統、低層系1系統、パブリック系2系統)を対象とし、各系統の上部(搭屋)、中間部(3F)、下部(B4F)の配管表面温度および配管付近の気温を自動計測した。検水はB4Fの維持管理用ドレン配管から下部・中間部・上部に相当する保有量を計量し、各部位と推定する検水を採取し、冷却遠心濃縮法一酸処理法にて処理し、係数測定等を実施した。

結果
客室高層系を除く3系統の上部、中間部、下部何れの箇所からも2〜3オーダーのLegionella pneumophila SG1が検出され、最高は客室低層系の中間部だった。水温は20〜47℃の範囲であった。客室低層系は他と比較して(下部47.5℃)高めであったにもかかわらず多量の菌が検出された。

考察
逃がし管は開放系かつ滞留してしまう構造からレジオネラ汚染の一原因と推察されてきたが、本調査研究においてレジオネラ汚染を確認することができた。貯湯槽内が高い水温で維持されていても殆ど逃がし管には影響を及ぼしていないことが推察された。今後は逃がし管のレジオネラ汚染抑制に対する設計・維持管理などの手法を検討し、構築することが急務と考える。

モノクロラミン生成・注入・測定を自動化した循環式浴槽モデルにおける消毒効果の検証

目的
循環ろ過式浴槽モデルの入浴を伴った実験で、次亜塩素酸ナトリウムに代えて間欠的手投入によるモノクロラミン消毒を行ったところ、浴槽水の殺菌とろ過材等のバイオフィルム形成防止に効果があった。そこで今回はアルカリ泉質の井水の沸かし湯を使い、循環ろ過式浴槽モデルに自動化装置を設置し入浴を伴った実験を行い、モノクロラミン濃度の維持管理と消毒効果について検証した。

方法
浴槽水のモノクロラミン濃度は無試薬型全塩素計、ポケットモノクロラミン計とDPD/FAS滴定法にて併用測定し、下限設定値2.5ppmと上限設定値2.8ppmの自動制御により濃度を維持した。

結果
モノクロラミン濃度は12日間にわたる入浴による有機物負荷にかかわらず、ほぼ設定濃度の範囲内に維持された。塩素臭の原因、ジクロラミンなどは検出されなかった。浴槽水とろ過器内水のレジオネラ属菌、従属栄養細菌、アメーバは全て不検出、ろ過材、ヘアーキャッチャーでのバイオフィルム形成も見られなかった。これらの結果から、モノクロラミン消毒の自動化は次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が困難といわれるアルカリ泉質の循環式浴槽水の消毒法として期待できると考えられる。

病院におけるレジオネラ対策

当院でのレジオネラ菌による汚染事例2件を報告し、易感染性の患者が多い病院においてその対策で工夫した点を提示する。
①救急病棟に入院中の患者がレジオネラ症と診断され、病室のシンクの給湯水からレジオネラ菌が検出された。拡大調査の結果、同病棟、及び同一フロアーICUに入院する患者にレジオネラ症を疑わせる者は確認できなかった。また、救急病棟・ICUのある棟の給水給湯設備の残留塩素濃度が全体的に低いことが判明した。対策として、菌が検出された病室の給湯設備のミキシングボックスから蛇口までを交換し、当該棟の配管消毒を行った。再発防止としては給水・給湯設備のフラッシングを徹底、給湯温度を55℃から60℃に変更した。更に検査体制を強化した。
②歯科診療ユニットのうがい水からレジオネラ菌が検出された。すべてのユニットの塩素消毒及びフィルター交換を行った。追跡調査ではいずれの患者にも異常を認めなかった。再発防止としてユニットのフィルター交換の徹底と診療開始前のユニット水のフラッシングを徹底した。その結果、十分な塩素濃度が得られている。病院における日常の対策としては、監視体制の整備、給湯の温度管理、給湯・給水設備のフラッシングによる配管内の停滞防止が重要で、更にそれらが徹底される工夫が重要である。

新生児室でのレジオネラ症の発生と当院における対策

宮古病院新生児室にて生後8日の児から尿中レジオネラ抗原が陽性となった。院内感染の可能性から新生児室、分娩室の蛇口、空調噴出し口などからサンプリングを行い検査した結果、分娩室の温水からレジオネラ菌が検出された。沐浴時、または手洗い時の飛沫を介して新生児が嚥下し、感染が生じた可能性が示唆された。院内全ての蛇口の温水フラッシュ、貯湯槽の洗浄、クーリングタワーの洗浄を行ったうえで、レジオネラが検出された蛇口の交換を行った。対策以降、検出していない。関東地方の一部と沖縄県の水道水は硬水で、煮沸すると炭酸カルシウムが沈降してボイラーの熱効率を悪化させる。このため院内の軟水生成器を通してから加熱利用していたが軟水化により塩素濃度が下がっていた。また、熱傷防止のため温度が50℃と低めに設定されており、レジオネラの繁殖に有利な環境であった。老朽化施設の配管設備、硬水という要因が重なっての院内感染が疑われる症例として報告する。

Legionella の低濃度オゾン水殺菌効果に及ぼす温度及びpHの影響

目的
浴槽水の消毒にオゾンを導入するため、実際の浴槽水を想定した条件で低濃度オゾン水のLegionellaに対する殺菌効果について検討した。

方法
水温40℃、pH5.8、7.2、8.6、9.5の希釈液を調整し、オゾン濃度0.026mg/l及び0.037mg/lの各pHオゾン処理実験水とした。Legionella pneumophila ATCC33152(Ⅰ型)を用いて菌数が約2×109CFU/mlの試験菌液を調整した。前記を用いてオゾン処理実験を行い、生残菌数を算出した。pH7.0、7.8、8.9の試験水に菌液を添加、塩素処理実験を行い、生残菌数を算出した。

結果
1.水温20℃のpH7.2のオゾン水は3.3分〜5.8分でオゾン濃度が半減することを前回報告した。今回は一般的な浴槽水と同じ40℃に設定、pH7.2は1.9分、pH8.6は0.5分、pH9.5は0.25分でオゾン濃度が半減したが、pH5.8では3分後においても63%のオゾン濃度が残存した。また、オゾン処理実験水に菌液を添加したときのオゾン濃度はいずれのpHにおいても無添加に比べて急速な濃度の減少が認められた。
2.各pHのオゾン水のLegionellaへの殺菌効果は、低濃度領域においても強い殺菌作用を示した。5.8〜9.5のpHで、オゾン濃度0.026mg/lではほぼ完全に不活化することを認めた。
3.一方、pH7.0の0.30mg/l塩素水では1.5分後にほぼ完全に抑制されたが、pH8.9の0.40mg/lでは3分後に初めて1Logの不活化が認められた。

考察・結論
塩素処理での殺菌効果はpHの相違により大きな影響を受けるが、オゾン処理ではLegionellaに対する殺菌効果はいずれのpHにおいても迅速な殺菌効果が認められた。このことから、オゾンはLegionellaに対する塩素消毒を補完しうること、オゾンを効率良く使用することにより浴槽水の安全対策に有効であることが考えられた。

温泉でのレジオネラおよびアメーバに対する消毒方法の検討

目的
温泉の循環装置導入に伴い、ろ過装置のろ材や配管、温泉浴槽内でレジオネラが発生し、感染事例が多発することとなった。またレジオネラの発生には宿主であるアメーバを含めた消毒が必要と考えられるが、一般にレジオネラを消毒する薬剤濃度ではアメーバの殺細胞効果は期待できない。塩素薬剤に代わる消毒剤として、今回は第四級アンモニウム塩と2-フェノキシエタノールの混合液によるレジオネラ及びアメーバへの消毒効果について検討を行い、更に系内の清掃を行った後、銀イオンを添加した結果について報告する。

方法
1.第四級アンモニウム塩と2-フェノキシエタノールの混合液にLegionella pneumophilaを添加し、培養後の菌数から消毒効果を評価した。
2.アメーバのACbuffer懸濁液に混合液を添加し、細胞致死率を算出した。
3.混合液でろ過槽、浴槽内を清掃し、その後、銀イオンを添加した。

結果
1.第四級アンモニウム塩と2-フェノキシエタノールの0.03%混合液はレジオネラに対して消毒効果が認められた。
2.アメーバの細胞致死率は10分後で90%、60分後で100%であった。
3.混合液でろ過槽及びろ材の洗浄を行った結果、ろ過槽からアメーバは検出されなかった。また、混合液で浴槽内を清掃後、銀イオンを添加した結果、浴槽内からレジオネラは検出されなかった。

アルカリ泉掛け流し式浴槽に対するモノクロラミン消毒の導入

目的
次亜塩素酸ナトリウムは殺菌効果は高いがカルキ臭、有害副生成物の生成、泉質による殺菌効果の低下などが指摘されている。特にアルカリ泉ではレジオネラ属菌の検出率が高い傾向にあること、掛け流し式施設で循環式施設より検出率が高いことが指摘されている。そのような中、次亜塩素酸ナトリウム替わる安全で効果的な消毒方法が求められている。今回、実際の入浴施設で、アルカリ性温泉水使用の賭け流し式浴槽水に対し、長期間の消毒効果の確認を行った。

方法
継続的に同一遺伝子型のレジオネラ汚染が確認された温泉タンク内の温泉水にモノクロラミンを2ヶ月間自動注入し、タンク内の温泉水、入浴後の浴槽水のレジオネラ属菌数、アメーバ数などの微生物検査と、水質検査を7回実施した。

結果
各浴槽水のモノクロラミン濃度は入浴による大幅な減少はなかった。レジオネラ属菌・アメーバは不検出、従属栄養細菌もほぼ不検出だった。水質検査ではカルキ臭の原因、トリクロラミン不検出、入浴者アンケートでも不快な臭気、肌の違和感などの指摘はなかった。以上から、モノクロラミン消毒はアルカリ泉掛け流し式浴槽の新しい消毒方法として期待できる。