レジオネラ文献

当院において2013年に診断したレジオネラ肺炎10例の臨床像の検討

レジオネラ症は2013年において、全国的に過去に比べて報告数が多かった。特に当院のある宮城県は近年と比べて報告数が増加(2011年16例、2012年27例、2013年65例)した。
当院においても2013年までの過去10年間で40例のレジオネラ肺炎を診断しているが、そのうち10例が2013年の症例であり、その臨床像を検討した。
全例が男性で平均年齢は73.7歳であった。発症時期は4月1例、6月2例、7月3例、11月2例であった。集団発生事例は認めなかった。診断は尿中抗原陽性8例、尿中抗原陰性/喀痰LAMP法陽性が2例であった。培養陽性7例の菌株はSG1が6例、SG6が1例であった。4月から8月までの培養陽性7症例の検体を用いてパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)によるDNA解析を行ったが、症例間の泳動パターンの類似性は認めなかった。
2013年においてレジオネラ肺炎の診断例は増加したが、LAMP法の保険承認など迅速検査法の普及に伴うものではなく、多くは尿中抗原陽性のSG1症例であった。PFGEからは当地域における同一菌株の流行は確認されなかった。

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喀痰グラム染色でレジオネラ肺炎を疑い診断に至った1例

症例は79歳女性。主訴は意識障害。入院後だい8日病日にVAPを疑う所見が出現。喀痰グラム染色にてレジオネラを疑い、抗菌薬治療を開始。培養検査の結果、レジオネラ肺炎の診断に至った。レジオネラは通常の喀痰グラム染色では染色されず、特殊染色が必須とされている。今回、喀痰グラム染色からレジオネラを疑い、診断に至った1例を経験したので報告する。

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レジオネラ治療薬評価委員会委員会報告-日中レジオネラワークショップの報告-

中国の市中肺炎におけるレジオネラ抗体価検査の陽性率は、高齢者で約6%、若年者で約3%である。健常人231例、肺炎患者168例にレジオネラ抗体価検査を実施したところ、それぞれ31.6%、35.8%が陽性であった。上海8病院の水道水をDNA microarray にて検査したところ、レジオネラ属が43%(L. pneumophila は17.1%)検出された。
2010年9月から2012年6月に北京、上海、貴陽で実施した成人CAP(520例)における大規模研究では、14.4%がマイコプラズマ肺炎であり、EMの耐性率が80%、AZMは72%であった。Fluoroquinolone系、Tetracycline系、に対する耐性株は認められなかった。Macrolide系(Mc)耐性メカニズムは、23S rRNAのA2063Gのミューテーションが関与していた。Macrolide耐性は、成人が72%に比べ、小児が92%と高かった。
Mcの耐性率が高い理由は、1.Mcが安価であること 2.Mcの過剰投与 3.Mcの習慣的投与と考えられる。

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呼吸器検体から菌の分離を経ず直接Sequence-based typing法を行ったレジオネラ肺炎症例

尿中抗原「陰性」で菌の発育を認めなかった患者喀痰からのLAMP法およびLegionella pneumophila に特異的なmip遺伝子検出によりレジオネラ肺炎を診断した。追加検査として7つの遺伝子の一部領域をPCRで増幅し、塩基配列の決定により遺伝子型別をするSequence-based typing (SBT) 法で遺伝子型を検査した。SBT法によって得られたST型は既知のものと異なる型と判定された。
レジオネラ肺炎の診断で、尿中抗原検査は血清群1のみを検出する検査であり、分離培養も検出率は高くない。疑わしい症例においては培養だけではなく、積極的にLAMP法を利用し診断に役立てる必要があると考えた。SBT法は、感染源推定の手がかりとなる検査であるが、本症例と同様に検体から直接同法でのST型同定ができれば今後の疫学調査に有効な方法になりえると考える。

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エンドトキシン高値を示したレジオネラ感染症

68歳女性。全身性エリテマトーデスのためプレドニゾロンによる加療中。入院後にプレドニゾロンの増量により全身状態は安定していたが、37病日目から発熱と右大腿の峰窩織炎を認めCPZ/BPを開始。このころから血中エンドトキシン濃度が上昇した。40病日目に抗生剤がMEPMに変更されたが、42病日目に死亡した。
創部浸出液を用いたDNAシークエンス解析を行った結果、Legionella pheumophilaが検出された。尿中抗原キットにて血清型1と判定された。
本症例を経験後、血液培養にてグラム陰性桿菌の検出を伴わないエンドトキシン高値症例にレジオネラ培養を追加したことで検出可能であった事例を2例経験している。いずれも血清型1以外のレジオネラ感染症だったため、尿中抗原を用いても検出は困難な事例であった。血液培養が陰性にかかわらず、エンドトキシン高値を示す場合には、レジオネラ感染症を考慮する必要があると考えられる。

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Legionella pneumophila血清群13によるレジオネラ肺炎の1例

60歳代、男性。発熱、CK値上昇、低ナトリウム血症も認めた。左下肺野の肺炎像も認め、CTRX、PZFXで治療を行ったが改善せず、肺炎像は両肺に広範に進展したため、重症市中肺炎として、AZM+MEPMで治療を行った。一時は呼吸不全が進行して、非侵襲的陽圧換気療法も併用したが、数日で改善して解熱傾向となった。尿中レジオネラ抗原は陰性であったが、喀痰培養でLegionella pneumophilaのコロニーが得られ、血清群13と判定された。我々の知る限り本邦初の血清群13臨床分離例である。
レジオネラ症の起因菌としては、尿中抗原が陽性となるL. pneumophila 1群が多い。1群以外の株が起因菌の時は尿中抗原陰性となるので、レジオネラ症の診断にあたっては、喀痰培養も同時に施行することが重要である。

レジオネラ感染症-臨床医に知っていただきたい注意点-

レジオネラ感染症診療に際しての注意点について

1.尿中抗原検査の有用性と限界への注意
レジオネラ肺炎の診断についてはレジオネラ尿中抗原検出法が臨床現場に普及したことで診断例数が飛躍的に増加している。しかし、本検査法で最も簡便で迅速性が高いイムノクロマトグラフィー法によるキットは主にLegionella pneumophila血清群Ⅰを検出対象としていることから、他の血清群やL.p種以外のレジオネラ属菌による肺炎が診断から漏れることになる。自験例においても、本肺炎の発症初期や重症度が高くない症例では陽性の閾値に達しない実例もあった。レジオネラ肺炎の診断においては、本検査陰性のみで除外することのないよう、対象菌種や検査閾値の問題に注意が必要であり、喀痰培養など複数の検査の並行が必要である。

2.生物学的製剤使用例における発症リスクの上昇
本菌の感染防御の主体は細胞性免疫である。従って細胞性免疫が低下するような症例ではレジオネラ感染症の発症リスクが上昇すると考えられる。自験例においても他科で生物学的製剤を投与された後に重症肺炎を発症した例があった。2011年、FDAは生物学的製剤使用例で、レジオネラ属菌とリステリア菌による感染症が増加する可能性があるという警告を出した。

3.免疫抑制症例における肺膿瘍
わが国で2例目・3例目となるレジオネラ属菌による肺膿瘍の症例を経験した。プレドニソロン長期使用例と悪性リンパ腫の症例で、前者は生前に診断がつき救命され、後者は剖検により診断がついた。欧米では免疫抑制症例で同様の症例が多数報告されており、わが国では見落とされている可能性について注意が必要である。

レジオネラ症の臨床的検討と早期診断についての考察

背景
レジオネラ症は意識障害や消化器症状など多彩な症状を呈し診断が難渋する。Winthrop大学では、レジオネラ症を臨床所見と簡便な検査に基づき鑑別するpoint systemを提唱しているが、精度に関する報告はない。そこで、当院での症例の臨床像と、point systemが早期診断に有効であるか検討を行った。

方法
当院でレジオネラ症と診断された5症例を対象にカルテ記録から後方的に検討した。

結果
Point systemの中央値は18点。4例が15点以上(Legionella very likely)、15点未満だった1例も発症3日後に19点を示した。尿中抗原は4例で陽性、内1例は発症当日陰性であったが発症3日後陽性となった。喀痰LAMP法検査は全例陽性、内1例は尿中抗原で陰性であった。全例ニューキノロン系抗菌薬で治療され、A-DROPで3例が重症と判定され、内1例が死亡した。

考察
Winthrop大学のpoint systemや喀痰LAMP法検査は早期診断に有用と思われる。尿中抗原は偽陰性例があり、レジオネラ症が否定できなければ喀痰LAMP法などの追加検査やニューキノロン系抗菌薬でのempiric therapyを考慮する必要がある。

喀痰グラム染色でレジオネラ肺炎を疑い診断に至った1例

症例は79歳女性。主訴は意識障害。自宅の風呂場にて水没していた。救急搬送後、頭部CT等の検査を行ったが明らかな意識障害の原因は指摘できず。迅速診断キットの結果から、インフルエンザ感染で全身脱力をきたし入浴中に溺水、低酸素脳症に至ったと判断した。来院時より人工呼吸管理下で管理。入院後第8病日にVAPを疑う所見出現。喀痰グラム染色にてレジオネラを疑い抗菌薬治療開始。培養検査の結果、レジオネラ肺炎の診断に至った。

当院において2013年に診断したレジオネラ肺炎10例の臨床像の検討

目的
2013年は全国的にレジオネラ症の報告数が多かった。特に宮城県は近年と比べ増加し、当院においても過去10年間40例の内、10例が2013年の症例である。その臨床像を検討した。

方法
2013年に当院で診断したレジオネラ肺炎10例について診療録を用いて後方視的に解析した。

結果症例
–全例男性、平均年齢73.7歳。時期–4月1例、6月2例、7月3例、8月2例、11月2例。集団発生事例は認めず。診断–尿中抗原陽性8例、尿中抗原陰性/喀痰LAMP法陽性2例。菌株–培養陽性7例の内、SG1が6例、SG6が1例。短期間での症例発生のため、同一感染源の可能性を考慮しDNA解析を行ったが泳動パターンの類似性は認めなかった。

考察
2013年の診断例の増加は、LAMP法の保険承認など迅速検査法の普及に伴うものではなく、また同一菌株の流行も確認されなかった。その他の背景に関してさらに検討していく。