レジオネラ文献

サイクロン式エアサンプラーと定量PCRによる空気中のレジオネラ属菌の検出

 

2015年の夏、ニューヨークで冷却塔を感染源とするレジオネラ症の集団感染が発生し、患者数は133名、うち16名が死亡した。

レジオネラ症はレジオネラ属菌を原因微生物とする呼吸器感染症で、人が呼吸によりレジオネラ属菌を吸引することで感染する。レジオネラ症を防止するためには人口環境水中のレジオネラ属菌の増殖を抑制し、冷却塔や浴槽等設備等から発生するエアロゾル中にレジオネラ属菌を含まないように管理する必要がある。

冷却塔から飛散するエアロゾルを含む、空気中のレジオネラ属菌生息調査方法として、液体サイクロン式のエアサンプラーを用いてレジオネラ属菌を補修し、定量PCR法で検出する方法がある。これは、捕集口から空気を吸引し、空気中の微生物等の粒子を遠心力により空気から分離して液中に捕集する。この方法の場合、捕集した微生物の検出方法に制限がなく、目的に応じて培養法や遺伝子検出法を選択できる。液体サイクロン式のエアサンプラーと定量PCR法の組み合わせは、空気中のレジオネラ属菌遺伝子を迅速に検出でき、汚染調査のためのスクリーニング方法として有用である。

国立感染症研究所感染症疫学センターの報告によるとレジオネラ症の患者発生のピークは7月である。我が国ではレジオネラ症の感染源の報告は浴槽が主であるが、夏場に感染者が増加することと冷却塔の稼働率およびレジオネラ属菌の検出率が上昇する事との関連があるため、今後冷却塔からのレジオネラ属菌の飛散実態を明らかにする必要がある。

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アメーバ共培養-LAMP法を用いた水景施設におけるレジオネラ属菌生息調査

レジオネラや抗酸菌などの病原細菌と環境水中のアメーバの密接な関連を利用して、これら細菌類の検出にアメーバ共培養法を応用する試みが行われている。アメーバ共培養法により検出されたレジオネラは、宿主アメーバ内増殖能との関連性からヒトへの病原性が強いことが示唆されており、レジオネラ症の発症につながる危険性も高い事が指摘されている。

近年、諸外国において、水景施設を感染源とするレジオネラ症が報告されている。水景施設とは、人工的に造られた噴水や滝、池などの水環境で、公園、学校、ショッピングセンター、ホテルのロビーなど屋内外を問わず設置されている。レジオネラがアメーバ内で増殖する特性を利用したアメーバ共培養法の手法とLAMP法を組み合わせ、よりヒトへの病原性が強い可能性があるレジオネラを検出することを試
み、水景施設を対象とした生息調査を行った。アメーバ培養法を行った水景水のLAMP法陽性率は41.9%であった。また、LAMP法陽性資料のうち、アメーバ共培養法を行った後も陽性であった資料は81.8%であった。これらの陽性率は、アメーバ内で増殖したレジオネラ、すなわち、アメーバ内増殖能を有するレジオネラ汚染度を示すものと考えられる。これまで、レジオネラ症の感染源と考えられる場所として、主に浴槽水や冷却水が挙げられていた。しかし近年、雨水や水たまり、カーエアコン、歯科治療装置などからのレジオネラ検出が報告されており、これまでにレジオネラ感染源として挙げられていない環境水が感染源となる可能性も考えられる。

レジオネラ症を防止するためには、感染源となる環境水中のレジオネラの生息状況を正確に把握し、迅速に対策を講じる事が公衆衛生上重要である。今後は、種々の水環境を対象にアメーバ共培養法の手法を適用し、よりヒトへの感染の可能性が高いレジオネラの生息環境調査を実施することにより、レジオネラ症発生防止の基礎的データを得られると考えられる。

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LAMP法によるマイコプラズマおよびレジオネラ属検出能の臨床的評価

2010年5月に保険適用された遺伝子増幅法の一種であるLAMP法の有用性について検討した。マイコプラズマに関しては、抗体価検査との比較において全体一致率は80%前後を示し、PCR法との比較では90%以上の全体一致率を示した。Legionella spp.に関しては、尿中抗原陽性は2例あり、このうち1例がLAMP法でも陽性を示した。LAMP法は、尿中抗原と比較し、多くの血清型を検出可能な利点がある。LAMP法は材料採取から検査判定まで2時間程度と比較的短時間で行う事が可能であり、マイコプラズマ肺炎及びレジオネラ肺炎の診断において有用な検査法であるといえる。

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レジオネラ感染マウスモデルにおけるAnti Gr-1抗体投与による好中球、M1/M2マクロファージの影響

レジオネラ属菌はマクロファージの中で増殖する細胞寄生菌であり、致死的な重症肺炎を引き起こす重要な病原体であるものの、その重症化の機序や病原性、宿主免疫に関して不明な点が多い。また、宿主免疫においてマクロファージの役割が近年明らかになりつつある。レジオネラ感染マウスモデルを用いて宿主免疫応答を解明するため、解析を行った結果、感染7日前に抗体を投与した検体の好中球は非投与検体と比較し有意に高く、感染1日前に抗体を投与し好中球が除去された群においてはM2マクロファージにシフトすることが示唆された。レジオネラ感染マウスモデルにおいて、好中球がM1、M2マクロファージのシフトへ影響を及ぼしている可能性があることが示唆されている。

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比色系パルサー法を用いた冷却塔水レジオネラ属菌の生菌迅速検査法の検討

現在、冷却塔水に生息するレジオネラ属菌の検出は培養法が用いられている。しかし結果が出るまでに1週間前後時間を要すること、培地に抗生物剤を添加するため実際に存在する菌数よりも検出される菌数が減少している。またVNC状態のレジオネラ属菌も存在する。
今回、従来の培養法と比色系パルサー法でレジオネラ属菌の検出を試み、比較検討を行った。比色系パルサー法では6検体全てが陽性だったのに対して、培養法では3検体が<10 CFU/100mLで検出できなかった。これは培養法で用いた選択培地の影響で菌数が検出限界以下に減少、またVNC状態のレジオネラ属菌が存在していることによると考えられた。
本結果により、比色系パルサー法は冷却塔水中に生息するレジオネラ属菌のスクリーニングツールとして利用できることが示された。

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レジオネラ属菌培養検査の外部精度管理試験(PHE)の紹介

レジオネラ属菌の培養検査は高い検査精度が求められるため、外部精度管理プログラムに参加して検査精度を評価することが望ましい。最新のPublic Health England(PHE、2010年以前はHPA)外部精度管理試験の概要と有用性について報告する。
PHEから航空便で送付される試料を用いて、調節した試料水の濃縮、前処理、選択培地への接種、培養、判定、菌種同定の工程を行い、試料水に含まれるレジオネラ属菌の検出菌数と菌種をPHEに報告するとPHEは参加機関から集まった結果を集計し、その結果が参加検査機関にフィードバックされる。試料は年間6回、2検体ずつ届き、過去4回の試験結果で合計8検体、1検体当り最高12点で評価される。本プログラムには欧州を中心に150の検査機関が参加している。
我々は1998年から参加しているが、2014年8月~2015年3月の成績では83点満点中83点であった。試験においては遠心濃縮法とろ過濃縮法はどちらも濃縮方法として十分な精度をもつことが確認された。継続して参加するなかで、評価結果を受けて様々な検査方法の改善に取り組んでおり、検査精度を向上させるきっかけとなった。
よって、外部精度管理プログラムへの参加はレジオネラ属菌の培養検査の精度向上に有用であると考える。

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培養法と遺伝子検出法によるレジオネラ属菌検査結果の相違に関する検討

培養法による環境水のレジオネラ属菌検査は結果が得られるまでに1週間以上を要し、培地に発育できるレジオネラ属菌のみを検出する。一方、遺伝子検出法は数時間で検査結果を得られるが、死菌も含めてレジオネラ属菌のDNAを広く検出する。この問題への対応としてEMA処理が実用化されている。
今回、浴槽水3試料、冷却水11試料を用いて培養法とEMA-qPCR法の検出結果を比較した。培養法の結果、浴槽水3試料からLegionella pneumophila が優占種として検出された。冷却水は8試料からL.pneumophila、1試料から Legionella sp.LC2720が優占種として検出され、2試料からは検出されなかった。EMA-PCR法では全ての試料からレジオネラ属菌の16SrRNA遺伝子が検出された。検出されたL.pneumophila クローンの割合は浴槽水試料32~99%、冷却水試料0~11%。各試料から得られたOTUの数は浴槽水試料は2~7、冷却水試料は2~29。冷却水は浴槽水と比べてレジオネラ属菌の多様性が明らかに高かった。
本調査の結果から、環境水中には培養法で検出されないレジオネラ属菌が存在し、特に冷却水には既存種に分類されないレジオネラ属菌の生菌が多く存在することが示唆された。
環境水のレジオネラ属菌検査では培養法で検出されないレジオネラ属菌の存在を考慮した上で、培養法及び遺伝子検出法の特性を理解して、結果を解釈することが重要と考えられる。

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BCYE培地を改良したレジオネラ用固形培地

レジオネラ属菌の培養にはBCYE培地が長く使用されてきた。本研究では、活性炭末を添加せず、より廉価な培地の開発を目的とし、様々な組成の培地を作製し、レジオネラ属菌の培養を行った。その結果、1)活性炭の代わりにスターチとα-ケトグルタル酸を添加する、2)緩衝材としてACESの代わりにMOPSを用いる、3)寒天はNoble agarを使う必要性は無いことがわかった。また、鉄イオンやL-システインの添加量の検討も行った。従来のBCYE培地同等のコロニー形成能や好気条件下での保存期間を保持し、尚且つより安価で作製できる培地の組成を決定した。

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環境水のレジオネラ属菌検査のための新規選択培地(CATα培地)による夾雑菌汚染の低減効果

レジオネラ属菌の培養法による検出試験において、選択培地がレジオネラ属菌以外の微生物によって覆われてレジオネラ属菌が検出不能となることがある。著者らは新規な選択培地(CATα培地)を使用して再検査を行い、レジオネラ属菌の検出を試みた。GVPC培地を使用した検査で検出不能の割合は、冷却水検体で6.5%浴槽水検体で1.0%であった。CATα培地を用いて再検査したところ、検出不能は冷却水検体で0.2%、浴槽水検体で0.1%であった。レジオネラ属菌培養検査においてCATα培地の使用はレジオネラ属菌以外の夾雑菌汚染を最小限に抑え、検出不能の割合を大幅に減少させることを示した。

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各種水利用設備のレジオネラ属菌検出実態

2001年1月から2012年12月までの期間中、各種水利用施設から培養法を用いてレジオネラ属菌を検出し実態をまとめた。レジオネラ属菌の検出率は冷却水で25.9%、浴槽水で14.1%、プール水で4.3%、給湯系で5.2%、蓄熱槽水で31.9%、修景水で10.6%であった。
冷却塔水における各種殺菌剤別のレジオネラ属菌の検出率は、無処理で53.1%、グルタルアルデヒド処理で9.7%、イソチアゾリン処理で19.2%、カチオン処理系で21.9%、塩素系処理で55.0%であった。塩素系処理は冷却水系のレジオネラ属菌の抑制効果が認められなかった。
塩素系処理では無処理と比較して1000CFU/100mL以上のレジオネラ属菌が検出される検体の割合が2.9%から13%に上昇した。