レジオネラ文献

比色系パルサー法を用いた冷却塔水レジオネラ属菌の生菌迅速検査法の検討

現在、冷却塔水に生息するレジオネラ属菌の検出は培養法が用いられている。しかし結果が出るまでに1週間前後時間を要すること、培地に抗生物剤を添加するため実際に存在する菌数よりも検出される菌数が減少している。またVNC状態のレジオネラ属菌も存在する。
今回、従来の培養法と比色系パルサー法でレジオネラ属菌の検出を試み、比較検討を行った。比色系パルサー法では6検体全てが陽性だったのに対して、培養法では3検体が<10 CFU/100mLで検出できなかった。これは培養法で用いた選択培地の影響で菌数が検出限界以下に減少、またVNC状態のレジオネラ属菌が存在していることによると考えられた。
本結果により、比色系パルサー法は冷却塔水中に生息するレジオネラ属菌のスクリーニングツールとして利用できることが示された。

レジオネラ文献

レジオネラ属菌培養検査の外部精度管理試験(PHE)の紹介

レジオネラ属菌の培養検査は高い検査精度が求められるため、外部精度管理プログラムに参加して検査精度を評価することが望ましい。最新のPublic Health England(PHE、2010年以前はHPA)外部精度管理試験の概要と有用性について報告する。
PHEから航空便で送付される試料を用いて、調節した試料水の濃縮、前処理、選択培地への接種、培養、判定、菌種同定の工程を行い、試料水に含まれるレジオネラ属菌の検出菌数と菌種をPHEに報告するとPHEは参加機関から集まった結果を集計し、その結果が参加検査機関にフィードバックされる。試料は年間6回、2検体ずつ届き、過去4回の試験結果で合計8検体、1検体当り最高12点で評価される。本プログラムには欧州を中心に150の検査機関が参加している。
我々は1998年から参加しているが、2014年8月~2015年3月の成績では83点満点中83点であった。試験においては遠心濃縮法とろ過濃縮法はどちらも濃縮方法として十分な精度をもつことが確認された。継続して参加するなかで、評価結果を受けて様々な検査方法の改善に取り組んでおり、検査精度を向上させるきっかけとなった。
よって、外部精度管理プログラムへの参加はレジオネラ属菌の培養検査の精度向上に有用であると考える。

レジオネラ文献

培養法と遺伝子検出法によるレジオネラ属菌検査結果の相違に関する検討

培養法による環境水のレジオネラ属菌検査は結果が得られるまでに1週間以上を要し、培地に発育できるレジオネラ属菌のみを検出する。一方、遺伝子検出法は数時間で検査結果を得られるが、死菌も含めてレジオネラ属菌のDNAを広く検出する。この問題への対応としてEMA処理が実用化されている。
今回、浴槽水3試料、冷却水11試料を用いて培養法とEMA-qPCR法の検出結果を比較した。培養法の結果、浴槽水3試料からLegionella pneumophila が優占種として検出された。冷却水は8試料からL.pneumophila、1試料から Legionella sp.LC2720が優占種として検出され、2試料からは検出されなかった。EMA-PCR法では全ての試料からレジオネラ属菌の16SrRNA遺伝子が検出された。検出されたL.pneumophila クローンの割合は浴槽水試料32~99%、冷却水試料0~11%。各試料から得られたOTUの数は浴槽水試料は2~7、冷却水試料は2~29。冷却水は浴槽水と比べてレジオネラ属菌の多様性が明らかに高かった。
本調査の結果から、環境水中には培養法で検出されないレジオネラ属菌が存在し、特に冷却水には既存種に分類されないレジオネラ属菌の生菌が多く存在することが示唆された。
環境水のレジオネラ属菌検査では培養法で検出されないレジオネラ属菌の存在を考慮した上で、培養法及び遺伝子検出法の特性を理解して、結果を解釈することが重要と考えられる。

レジオネラ文献

BCYE培地を改良したレジオネラ用固形培地

レジオネラ属菌の培養にはBCYE培地が長く使用されてきた。本研究では、活性炭末を添加せず、より廉価な培地の開発を目的とし、様々な組成の培地を作製し、レジオネラ属菌の培養を行った。その結果、1)活性炭の代わりにスターチとα-ケトグルタル酸を添加する、2)緩衝材としてACESの代わりにMOPSを用いる、3)寒天はNoble agarを使う必要性は無いことがわかった。また、鉄イオンやL-システインの添加量の検討も行った。従来のBCYE培地同等のコロニー形成能や好気条件下での保存期間を保持し、尚且つより安価で作製できる培地の組成を決定した。

レジオネラ文献

環境水のレジオネラ属菌検査のための新規選択培地(CATα培地)による夾雑菌汚染の低減効果

レジオネラ属菌の培養法による検出試験において、選択培地がレジオネラ属菌以外の微生物によって覆われてレジオネラ属菌が検出不能となることがある。著者らは新規な選択培地(CATα培地)を使用して再検査を行い、レジオネラ属菌の検出を試みた。GVPC培地を使用した検査で検出不能の割合は、冷却水検体で6.5%浴槽水検体で1.0%であった。CATα培地を用いて再検査したところ、検出不能は冷却水検体で0.2%、浴槽水検体で0.1%であった。レジオネラ属菌培養検査においてCATα培地の使用はレジオネラ属菌以外の夾雑菌汚染を最小限に抑え、検出不能の割合を大幅に減少させることを示した。

レジオネラ文献

各種水利用設備のレジオネラ属菌検出実態

2001年1月から2012年12月までの期間中、各種水利用施設から培養法を用いてレジオネラ属菌を検出し実態をまとめた。レジオネラ属菌の検出率は冷却水で25.9%、浴槽水で14.1%、プール水で4.3%、給湯系で5.2%、蓄熱槽水で31.9%、修景水で10.6%であった。
冷却塔水における各種殺菌剤別のレジオネラ属菌の検出率は、無処理で53.1%、グルタルアルデヒド処理で9.7%、イソチアゾリン処理で19.2%、カチオン処理系で21.9%、塩素系処理で55.0%であった。塩素系処理は冷却水系のレジオネラ属菌の抑制効果が認められなかった。
塩素系処理では無処理と比較して1000CFU/100mL以上のレジオネラ属菌が検出される検体の割合が2.9%から13%に上昇した。

液体培養(Liquid Culture) EMA-qPCR法を用いたレジオネラ生菌迅速検査法の評価

目的
EMA-qPCR法は操作の煩雑さや塩素消毒による膜損傷の程度でEMA感受性が異なる等の課題がある。我々は濃縮検体に液体培地を加えて培養後のrRNA増加量を評価することで生菌の有無、生菌数を測定するLiquid Culture(LC) RT-qPCRを開発した。しかし大量のレジオネラ死菌が存在する検体では数個の生菌による増加を検出できない欠点があった。今回、液体培養とEMA-qPCRを組み合せることで、EMA感受性や判定保留等の課題を解決した生菌検出キットを開発、これを用いて実試料で測定、評価したので報告する。

方法
LC EMA-qPCRキット(タカラバイオ試作品)に改良を加えて用いた。浴槽水の1000倍濃縮液100μlを液体培養し、EMA処理を行いDNAを抽出し、qPCR法にて測定した。入浴施設から採取した試料113件を用いて平板培養法とLC EMA-qPCR法でレジオネラ属菌数を算出した。

結果
レジオネラ標準菌(L.pneumophila)を用いてLC EMA-qPCRを行った場合、1CFU当りの16S rRNA遺伝子コピー数は液体培養前12コピー、18時間培養後270コピー、18時間培養EMA処理後100コピーと見積もられ、これを換算係数とした。113件のLC EMA-qPCR法の評価結果は、カットオフ値を5CFU/100ml相当に設定した場合の感度は95.5%、特異度は75.4%で、得られる定量値はEMA処理による死菌増幅抑制効果により平板培養法と良好な相関を示した。

考察
本法は平板培養法の結果を迅速に予測可能であり、浴槽水等におけるレジオネラ生菌遺伝子検査法としての活用が期待される。

前培養を組み合わせたRT-PCR(LC RT-PCR)を用いたレジオネラ迅速検査法の阻害作用の検討

目的
前培養を組み合せたRT-PCR(LC RT-PCR)を用いたレジオネラ迅速検査において、培養法で陽性、LC RT-PCR法で陰性であった2試料をもとに、阻害物質の究明を行ったので報告する。

阻害物質の究明
1.試料は、上記温泉水2試料(A:塩化物泉水、B:炭酸水素塩泉)及び、培養法陽性、LCRT- PCR法陽性の温泉水3試料(C、D、E)とした。
2.浴槽水の水質分析は、一般細菌、従属栄養細菌、KMnO4消費量、TOC、色度、濁度、金属類、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素、pH、遊離残留塩素、結合残留塩素、フミン質、ATPについて行った。
3.AB試料共に、KMnO4消費量、TOC、フミン質、一般細菌、従属栄養細菌、ATP、色度、濁度がC、D、E試料に比べ高い値を示した。KMnO4消費量、TOC、ATPは従属栄養細菌、フミン質により高い値を示したと考えられた。色度はフミン質により高くなったと考えられた。以上のことからLC RT-PCR法を阻害した物質は従属栄養細菌、フミン質、濁質が考えられた。

阻害反応の確認
1.調整試料水として①ろ過した温泉水(フミン質18mg/l、色度90度、残留塩素

比色系PALSAR法の構築とレジオネラへの応用

目的
温泉水中のレジオネラの検出について、これまでの発光系PALSAR法では特定の反応装置や測定機器が必要であり、現場で検査を実施するには導入コストが障害であった。そこで今回、施設管理者が現場において目視で判定可能な比色系パルサー法を開発し、その有効性について検討を行ったので報告する。

方法
比色系PALSAR法は発色基質としてTMBを用いて発色反応を行った。試料として陽性コントロール合成DNAとLegionella philaderphia1菌体を使用した。滅菌した温泉水にL. philaderphia1(9×102 CFU/mL)を接種し、4〜400mLを吸引ろ過して菌体を回収し、それぞれの菌体希釈液(9.0×102〜9.0×104 CFU/mL)を調整し測定を行った。大浴場、露天風呂の温泉水を採取し、比色系PALSAR法でレジオネラの検出を行った。

結果および考察
陽性コントロール合成DNAを用いて検討したところ、10〜50fmol/mLで発色を目視で確認できた。L. philaderphia1を用いて検出限界を確認したところ、菌体希釈液濃度で4.3×103 CFU/mLであった。また、滅菌した温泉水に接種した場合9×102 CFU/mLの菌体希釈液でも発色が確認された。男女大浴場、女子露天風呂でレジオネラ属菌が検出されたのに対して、培養法では男女大浴場のみ検出された。男女大浴場では、AP(-)でも発色が確認されたことから、温泉に含まれる何らかの成分が影響したと考えられた。これらの結果から、比色系PALSAR法は温泉水中のレジオネラに対して目視で判定できることが確認された。

濾過装置におけるレジオネラ標準株を使用した培養方法の基礎的検討

目的
循環式等の温浴施設での濾材からレジオネラ菌(以下L菌)を分離する前処理方法については充分な検討がなされていない。検討には実施設由来株のみならず、L菌標準株を使用した実験が必要である。今回、濾過装置におけるL菌標準株を用いて、栄養条件を変えた培養方法について検討を行った。

方法
濾過装置は模擬温浴施設を設定し、定期的に水中のL菌測定を行い、模擬浴槽水の組成等を変更して培養条件の検討を行った。
①模擬浴槽水の組成は増菌培養時の主な栄養素源を乳酸カルシウム、粉ミルク、尿素とし、週2回の頻度で模擬浴槽水の全換とともに添加した。
②栄養源をL-Cysteine4.8mg/L、及び細胞培養培地1000倍希釈添加に切り替え、全換せずに同様の頻度で添加した。
③装置内の濾材を取出し、濾過装置、模擬浴槽及び配管内を清掃及び塩素消毒後、新たに濾材を敷き詰め、栄養条件を②と同様とした。

結果
①試験開始0日にL菌標準株によりマクファーランド濁度0.5とした菌液1mLを濾過装置に移植し、更に49、53日にマクファーランド濁度6とした菌液を1mLずつ移植したが、L菌は水中より消失し、検出されなかった。
②栄養条件の切り替えと共に、56、61、64日目に環境変動に強いと考えられる実施設の環境由来株を用いてマクファーランド濁度6とした菌液を1mLずつ添加したが、L菌は消失せず、64日目の最後の移植後も増加傾向にあった。その後、栄養条件を①に戻したところ、水中のL菌は減少した。
③装置内を新たにし、②と同じ栄養条件とした。一般細菌の増殖が止まった13〜15日目にL菌標準株を用いてマクファーランド濁度6とした菌液を1mLずつ移植した。L菌は継続して減少傾向にあったが①の方法と異なり水中より消失することはなかった。

考察
濾過装置を用いたL菌標準株の培養においても増殖にはL-Cysteineの添加が必須であることが確認された。今後、L-Cysteineを添加したL菌の好適な培養条件の検討を重ね、水系のL菌検査は元より、濾材に付着する微生物膜からのL菌の定量化を図り、循環式等の温浴施設の衛生管理に繋げたい。