レジオネラ文献

レジオネラ感染マウスモデルにおけるAnti Gr-1抗体投与による好中球、M1/M2マクロファージの影響

レジオネラ属菌はマクロファージの中で増殖する細胞寄生菌であり、致死的な重症肺炎を引き起こす重要な病原体であるものの、その重症化の機序や病原性、宿主免疫に関して不明な点が多い。また、宿主免疫においてマクロファージの役割が近年明らかになりつつある。レジオネラ感染マウスモデルを用いて宿主免疫応答を解明するため、解析を行った結果、感染7日前に抗体を投与した検体の好中球は非投与検体と比較し有意に高く、感染1日前に抗体を投与し好中球が除去された群においてはM2マクロファージにシフトすることが示唆された。レジオネラ感染マウスモデルにおいて、好中球がM1、M2マクロファージのシフトへ影響を及ぼしている可能性があることが示唆されている。

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医療機関の給水系におけるレジオネラ属菌汚染実態調査

国内の医療機関の給水系におけるレジオネラ属菌汚染の知見は限られている。そこで、医療機関での汚染実態の把握を目的に調査を実施。神奈川県内の病床数200床以上の3医療機関の病室、浴室等の水道蛇口、受水槽等を対象に実施した結果、いずれの医療機関でも給水系にレジオネラ属菌汚染が確認された。医療機関では、レジオネラ症の高リスクグループが存在しており、給水系の徹底管理が必要であることが示唆された。

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One Healthレクチャー Enviroment3 レジオネラ属菌における水系汚染とその対策

レジオネラの感染は汚染されたエアロゾルの吸引することによる。主な感染原因として入浴施設の利用が挙げられる。
残念ながら、入浴施設は①温水の常時滞留、②入浴者由来の有機物の蓄積、③複雑な配管系、とレジオネラの増殖にはいわばうってつけ(衛生管理に不向き)の構造となっている。本来有機物汚染を防ぐには換水が基本となるが、系内、特に砂ろ過装置内での細菌類の増殖に伴って浴槽水中の有機物は顕著に減少し、見かけのうえでは清浄度が保たれているかのような状況が生じてしまう。しかしながら、循環式浴槽システムは閉鎖系で、持ち込まれた有機物は微生物に置き換わっただけで系内に蓄積され続け、その結果レジオネラの増殖の場が形成される。我々の生活環境にあってエアロゾルの発生につながる装置は入浴施設のみならず、空調設備(冷却塔)、給湯施設、加湿器や噴霧器、あるいは歯科・医療器具など様々なものは存在している。これらの装置ではバイオフィルム対策を怠ればレジオネラ汚染は免れない。

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アメーバ共培養法を用いた浴槽水中に存在するレジオネラ属菌汚染実態の解明

レジオネラがアメーバ内で増殖することを利用したアメーバ共培養法の手法を使って、生存しているが人工培地で培養できない状態や培養不能菌種も含めたレジオネラを検出し、浴槽水中レジオネラ汚染実態調査を行った。入浴施設から浴槽水71試料を採取しアメーバ共培養法、培養法、real-time qPCRを組み合わせた方法を用いてレジオネラ菌数などの比較検討を行った。
培養法では浴槽水試料は12試料、アメーバ共培養後試料は5試料からレジオネラを検出した。菌種はすべてL.pneumophilaであった。real-time qPCR法では浴槽水試料は46試料、アメーバ共培養後資料は63試料が陽性であった。浴槽水試料とアメーバ共培養後試料のレジオネラ数を比較して、101cell/1以上増殖が確認されたのは31試料であった。またreal-time qPCR法で陰性だった試料のうち、アメーバと共培養することにより15試料が陽性となった。菌種については、浴槽水は22試料、アメーバ共培養法後の試料は21試料からL.pneumophila、L.maceachernii などを検出したが、培養不能菌種は検出されなかった。

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日本で分離されたLegionella pneumophila血清群1のsequence-based typing法による解析

レジオネラ症起因菌の8割を占めるL. pneumophilla血清群1の患者由来株196株をsequence-based typing(SBT)法により遺伝子型別した。環境由来株344株も合わせて、minimum spanning treeを作成したところ、9つの大きなグループが形成された。主に感染源不明の臨床由来株からなるグループ(U)以外は、環境由来株の由来毎にグループが形成された。浴槽水由来株の多くが属する3つのグループ(B1,B2,B3)、土壌由来株のほとんどを含む3つのグループ(S1,S2,S3)、冷却塔水由来株が属する2つのグループC1,C2)である。患者由来株の分布は各グループおよびクループ外に散在していたが、感染源が浴槽水と推定あるいは確定している119株のうち77株(65%)がB1-3グループに属していたのに対し、それ以外の感染源あるいは感染源が不明の117株中B1-3グループに属するものは36株(20%)だった。畑仕事等の土壌や、塵埃などが感染源として推定されている患者由来株は18株と少なかったが、そのうち16株が、S1-3グループに属していた。したがって感染源不明の臨床分離株がどのグループに属するかを調べることにより、遺伝子型から感染源の種類が推測できる可能性が示唆された。

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水たまり中に生息するレジオネラ属菌の多様性に関する研究

レジオネラ症を引き起こすレジオネラ属菌は、環境中の至る所に生息している。道路の水たまりは自動車による水しぶきを吸引する可能性があり、日本国内では東京都と富山県の水たまり中のレジオネラ属菌の生息状況について研究が行われ、レジオネラ属菌が検出されている。
本研究では、水たまり中に生息するレジオネラ属菌の多様性について明らかにすることを目的として、東京都45か所51検体、神奈川県4か所4検体の水たまりを培養や遺伝子レベルの解析により調査した。
Legionella pneumophilla serogroup 5とLegionella beliardensisを直接培養法で分離することができた。リアルタイムPCRでは、1.42×10〜7.22×104CFU相当/100mLのレジオネラ属菌が検出された。また、濃縮検体からの直接遺伝子解析により
L. pneumophillaを始め、多様なレジオネラ属菌のmip遺伝子が検出された。得られたmip遺伝子の配列は、既存種と一致しない配列も多く、分子系統樹を作成したところ、地域による固まったグループは形成していなかった。これらの結果から、道路の水たまりはレジオネラ症の感染源の可能性が示唆された。

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レジオネラ属菌と給湯設備

厚生省(現厚生労働省)を中心にレジオネラ属菌に関わる調査・研究・検討が進められ、これらの成果は厚生省生活衛生局長通知や告知、建築物衛生法施行令などに反映されてきた。レジオネラ症の防止指針策定に向け、平成4年度に「在郷軍人病予防のためのガイドライン作成調査」を実施し、翌年度に「レジオネラ防止指針(第1版)として発行された。平成11年には給水・給湯設備、冷却塔と冷却水系、加湿器、水景施設、蓄熱槽、循環式浴槽等に着目して第2版「新版レジオネラ症防止指針」が発行され、平成21年に未然防止から早期発見・早期治療、感染拡大防止を目的とした第3版「レジオネラ症防止指針」が発行された。

循環式を採用している給湯設備においては塩素消毒の効果は期待できず、システム内のいずれかの個所で常時温度が55℃未満になる場合には、レジオネラ属菌が発生する可能性が極めて高くなることがうかがい知れる。現在、循環式給湯方式が採用される中央給湯設備、スポーツ施設、浴場施設等での循環式浴槽設備に対するレジオネラ症防止に関わる法的基準および指針等において、設計や維持管理に関わる内容はかなり充実してきている。

労働安全衛生法において給湯ボイラや貯湯槽には、温度上昇に伴う膨張を吸収するための逃がし管または逃し弁の設置が義務付けられており、逃がし管が設けられてきた貯湯槽は多く存在する。1970年代に都内に竣工したAホテルの貯湯賞からの逃がし弁を対象としてレジオネラ属菌の調査を行った。12検体のうち、8検体からレジオネラ属菌が検出された。レジオネラ属菌が発生していた主要因として、逃し管内の水温が低いことが挙げられた。

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特定建築物のレジオネラ症防止対策に関する調査

平成26年6月から11月までの特定建築物50施設の冷却塔を対象としたレジオネラ属菌の生育状況を調査した。
100CFU/100mL以上の検出率は46%あり、100CFU/100mL未満の検出率は14%、10,000CFU/100mL以上の施設も4施設あった。調査した50施設のすべてで下部水槽の清掃を実施していたが12施設では法令で実施義務のある冷却水管を清掃していなかった。冷却水管清掃の有無とレジオネラ属菌検出には差は見られなかった。
冷却水管の清掃を実施した38施設のうち34施設で日常管理のために、薬剤を注入していた。このうち14施設で100CFU-100mL以上のレジオネラ属菌を検出した。薬剤を使用しない4施設では全施設で100CFU/100mL以上検出した。
レジオネラ属菌を100CFU-100mL以上検出した割合は、清掃後2週間では14.3%、2か月以内では33.3%、2か月を超えると68.4%であった。
冷却塔の清掃直後にレジオネラ属菌を検査することは清掃の効果の確認に有効であるが、その後も定期的に検査を実施し、その結果によって冷却塔や冷却水管のせい総意方法や頻度、添加薬剤や使用方法を見直す必要があると考えられる。

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EMA-qPCR法とクローンライブラリーによる環境水中のレジオネラ属菌の多様性解析

目的
培養法による環境水中のレジオネラ属菌の優占種はLegionella pneumophilaとされているが選択培地に発育しにくいレジオネラ属菌の存在についてはよくわかっていない。既報にて、冷却水と浴槽水試料についてEMA-qPCR法と培養法の結果を比較、クローンライブラリー解析によって冷却水のレジオネラ属菌の多様性を示したが、新たに解析した冷却水の結果を追加して報告する。

方法1)
培養法により冷却水6試料、浴槽水3試料からレジオネラ属菌を検出し菌種を同定した。2)EMA-qPCR法で各試料のレジオネラ菌中のL.pneumophilaの存在比率を求めた。3)EMA処理後の試料についてクローンライブラリーを作製しレジオネラ属菌由来の16SrRNA遺伝子を解析した。

結果1)
培養法冷却水—4試料からL.pneumophilaが優占種として検出され、1試料からL. sp.LC2720が検出された。1試料からは検出されなかった。浴槽水—3試料からL.pneumophilaが優占種として検出された。2)EMA-qPCR法冷却水—6試料から165rRNA遺伝子が検出され、4試料からL.pneumophilaのmip遺伝子が検出された。L.pneumophilaの存在比率は0〜13%浴槽水—3試料から165rRNA遺伝子、mip遺伝子が検出された。L.pneumophilaの存在比率は39〜79% 3)L.pneumophilaが検出された試料からクローンが検出され(冷却水0〜11%、浴槽水32〜99%)、その数の割合はEMA-qPCR法のL.pneumophila存在比率と概ね一致した。冷却水から検出されたクローンは系統樹上では殆どが既存種に属さず、浴槽水と比較して多様性が高かった。

考察
環境水中には培養法で検出されないレジオネラ属菌が存在し、特に冷却水には既存種に分類されない生菌が数多く存在することが示唆された。培養法にEMA-qPCR法を組み合わせることにより総合的な分析が期待される。

家庭内のレジオネラ汚染に関する基礎的調査

目的
レジオネラ症の多くは感染原因が不明であり、浴槽水や冷却塔水を対象とした汚染調査はされているが、家庭内についてはほとんど調査されていない。そこで家庭内のレジオネラ属菌の分布に関する基礎的な調査を行った。

方法
一戸建てA・B邸、集合住宅C・D邸の4軒で試料を採取した。水試料は水道水、浴槽水、洗濯水など34か所。スワブは蛇口、シャワーヘッドなど34か所。別邸5邸から水槽水11か所。その他、掃除機など合計84か所について調査した。分離培養を行い、LAMP法による遺伝子検査を行った。陰性検体はアメーバにより増菌させた後、再びLAMP法で検査を行った。一部試料については採取時に温度、pH、従属栄養細菌などを調査し関連性を検討した。A邸については3ケ月後にも調査を行った。

結果
風呂残り湯、洗濯機内の水、3カ月以上不使用の水道蛇口水など4検体、アメーバ増菌後2検体、計6検体からL.anisaなどが分離されるなど、84検体中、11検体が陽性であった。また浴槽水から検出されたL.anisaが水を再利用している洗濯機へのホースや水槽から検出され、水と共に汚染が拡大する可能性が考えられた。水槽水は11検体中2検体からL.anisaなどが検出され、7検体が陽性という高率の検出結果となった。A邸の3ケ月後の調査ではレジオネラ属菌は分離されず、菌の分離に変動があることがうかがえた。従属栄養細菌は103)CFU/ml以上でLAMP法陽性率が高まり、レジオネラ属菌汚染との関連が示唆された。以上の結果から、家庭内にレジオネラ属菌が生息しやすい環境があることが確認された。今後さらに家庭内のレジオネラ属菌の感染リスクを調査していく必要がある。