レジオネラ文献

温浴施設の微生物汚染の現状と対策

我々の施設で検査した浴槽水のレジオネラ属菌検出率は2001年30%、~2003年13%と低下、その後は2012年まで大きな変動なく10%程度である。浴槽水質における大腸菌群検出率は0.7%(2014年4月~2015年3月)であり、レジオネラ属菌対策の困難さを示している。
設備構造面のポイントは、
①給湯水は60℃以上の供給能力 ②塩素剤などの注入制御設備③浴槽水の回収槽は設けない ④バイオフィルムが付着しやすく除去しにくいろ材を使用しない ⑤行き止まり、滞留配管を設けない ⑥バイオフィルムが付着する隙間をなくす
維持管理面では正確なレジオネラ属菌検査が重要である。PHEの外部精度管理を採用し、正確な検査能力を有する機関での検査が望ましい。培養法は日常管理でレジオネラ属菌が不検出であることの確認に、遺伝子法は除菌洗浄後の不検出確認に使用する。ポイントとしては、
①日常的な洗浄と消毒 ②定期的な科学的除菌洗浄 ③浴槽水の遊離残留塩素濃度の維持 ④温泉水質によってはモノクロラミン濃度維持が有効 ⑤給湯水では末端55℃以上とする などがある。
温浴施設では浴槽水に加えて足ふきマット、シャワーカーテン、シャワー取っ手、床面などの微生物汚染のリスクポイントを把握し、より良い衛生管理に役立てることが必要である。

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金属錯体を活用したレジオネラ属菌の殺菌方法

過酸化水素等を用いた酸素系洗浄剤は酸化分解能力が低いことから、過酸化水素の活性化触媒として金属錯体を用いた洗浄剤の研究を行ってきた。一方、公衆浴場では循環式浴槽の配管洗浄剤として過酸化水素等を用い配管内のバイオフィルム洗浄が従来行われているが、分解による発泡が原因で循環ポンプが停止する等の課題がある。近年では過炭酸ナトリウムが代替として使用されているが、過酸化水素と同等の殺菌性能があるのか懸念されている。本研究では金属錯体と過炭酸ナトリウム併用の殺菌効力について検討した。
BCYE寒天培地を用い、試験菌としてLegionella pneumophilaATTCC33153SG1を、試験液として3薬剤(①0.5%過炭酸ナトリウム水溶液、②0.1%金属錯体+0.5%過炭酸ナトリウム水溶液、③3%過酸化水素水液)を用いた。①では本試験条件において殺菌効果があることが確認できた。②ではより短時間での殺菌効果が得られることが確認できた。また5分間の作用時間で③と同等の殺菌効果があることが確認できた。
以上の結果より、過炭酸ナトリウムと金属錯体の併用により過酸化水素水と同様に酸化力を有する洗浄剤であることが確認できた。

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気泡発生装置使用浴槽におけるモノクロラミン消毒効果の検証

気泡発生装置付き浴槽においても普通浴槽と同様なモノクロラミン消毒の殺菌効果が得られるかを検証するため実証実験を行った。
静岡県内の気泡発生装置付き浴槽を有する3営業施設において、モノクロラミンの生成・注入装置による機械注入または直接投入により、概ね3mg/Lの濃度維持を目標にモノクロラミンを添加した。長期間試験を行った2施設では週一回の完全換水と循環配管内の高濃度モノクロラミン洗浄または過酸化水素洗浄を実施した。
いずれの施設でもレジオネラ属菌、自由生活性アメーバは検出されず、その消毒効果が裏付けられた。消毒副生成物の生成は遊離塩素管理時より少なくいずれの施設の浴槽からも塩素臭の原因となるトリクロラミンは検出されなかった。またモノクロラミンの添加量と維持濃度について気泡発生装置によるモノクロラミンの失活は認められなかった。
以上のことから、洗浄消毒が容易でない気泡発生装置使用浴槽においてもモノクロラミンによる管理は有用であると考えられた。

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循環式浴槽水のモノクロラミン消毒による長期間にわたるレジオネラ属菌の制御

泉質の異なる温泉水を用いた2カ所(静岡市と浜松市の施設)の循環式の入浴施設に、モノクロラミンのタイマー注入装置を設置し、アンモニウム源として従来の塩化アンモニウムより入手しやすい硫酸アンモニウムを使用し、また塩素剤とアンモニウムのモル比を従来の1:2.5から1:1.5に低減した長期運用試験を行った。
静岡市の施設は1日の平均利用者が319人の循環式露天風呂で泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉。試験期間は3ヵ月間で期間中6回採水、検査に供した。浜松市の施設は1日の平均利用者が554人の循環式室内風呂でナトリウム-カルシウム塩化物泉。試験期間は5ヵ月で期間中8回採水した。また週に1回完全換水とろ過器を含む循環配管内の高濃度モノクロラミン洗浄または過酸化水素洗浄を実施した。
運用試験の結果、両施設とも目標濃度を概ね維持できた。従来の遊離塩素消毒では利用者数や追加湯量の影響により濃度管理が困難であったが、モノクロラミンは安定維持が可能であった。微生物検査ではレジオネラ属菌は不検出、消毒副生成物の発生も少なかった。アンモニウム源として硫酸アンモニウムが使用可能で、モル比を低減でき、薬剤コストの削減も得られた。

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レジオネラ属菌に対する次亜塩素酸ナトリウムの殺菌効果と有効性

循環式浴槽において、塩素濃度240ppmを維持し15分循環する高濃度塩素殺菌洗浄で、LAMP法と培養法でのレジオネラ属菌検出状況を比較した。
培養法での結果では3現場において洗浄作業完了後にレジオネラ属菌が検出されたが、この3現場は洗浄工程の不備による人為的な結果と考えられた。その他の33現場では不検出であった。
LAMP法では、高濃度塩素殺菌作業後で36現場中11現場、洗浄作業完了後で18現場でレジオネラ属菌が陽性となり、塩素濃度240ppmで死菌の遺伝子を破壊できないことが確認できた。しかし、塩素濃度120ppmでは73%が陽性であったことから、塩素濃度を高めることはLAMP法で陽性となる割合を低下させる有効な手段と思えた。

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モノクロラミン消毒による浴槽レジオネラ属菌の衛生対策

目的
循環式浴槽では肺炎の起因菌であるレジオネラ属菌の汚染が問題となっている。死亡例を含む集団感染が繰り返されたことから、厚生労働省(当時は厚生省)の指導のもとで緊急避難的に遊離塩素消毒による管理が行われ、そのまま平常時の対応となった感がある。しかしながら、今日に至るまで浴槽からレジオネラが検出されており、遊離塩素消毒が全ての浴槽の安全を担保するとは言い難い状況にある。井水や温泉水など多様な水質(泉質)が存在し、また薬湯では添加された薬物成分と塩素が反応したり、高pHの条件下では遊離塩素の効果が減じたりしているものと考えられる。また臭気などが敬遠されて塩素の使用が必ずしも徹底されない恐れもあり、多方面から代替消毒方法が求められている。本研究では米国の水道で実用化されているモノクロラミン消毒(結合塩素の1種)に着目し、モノクロラミン消毒の浴用施設への応用について検討を行った。

方法
モデル循環式浴槽を用い、2週間にわたってモノクロラミン消毒下で入浴を行い、この間のレジオネラ属菌や塩素濃度を測定した。モノクロラミン溶液は、アルカリ性(pH8.4)条件下の井水1Lに次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、次いで塩化アンモニウム水溶液を添加・混合することで生成した。生成したモノクロラミンをモデル循環式浴槽に加え、その後は不足した塩素を1日1回程度追加し、濃度維持 (3mg/L)に努めた。塩素濃度はDPD吸光度法(全塩素(結合塩素と遊離塩素の和)、あるいは遊離塩素)、インドフェノール法(モノクロラミン)、DPD/FAS滴定法(遊離塩素、モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミン)、サリチル酸法(モノクロラミン)、およびHS-GC/MS法(トリクロラミン)の各種方法により測定した。

結果
2週間の消毒管理期間中、レジオネラ属菌とアメーバは検出されなかった。同時に測定した従属栄養細菌数も低く、微生物の増殖は抑えられていた。DPD吸光度法(全塩素)は、他の複数のモノクロラミン測定方法と同等の測定値が得られたことから、DPD吸光度法による全塩素濃度はモノクロラミン濃度に相当するものと判断され、現場向きの測定法として利用が可能であった。DPD/FAS滴定法では、ジクロラミンがわずかに検出された程度にとどまり、塩素臭の主要な原因となるトリクロラミンは検出されなかった。高感度なHS-GC/MS法による測定においても、トリクロラミンは検出されなかった。なお、ボランティア入浴者から、いわゆる塩素臭がほとんどなかったとの感想を得ており、モノクロラミンによる消毒では臭気の低減が期待できた。

結論
浴槽における遊離塩素消毒の代替法として、モノクロラミン消毒が有効であることを見出した。

循環浴槽水中のレジオネラ属菌に対する塩素と熱の有効性の検討

目的
昨年はレジオネラ症の年間届出件数が調査開始以来最多となった。循環式浴槽においてもこれまで以上のレジオネラ属菌対策が求められている。浴槽水の殺菌浄化法として塩素系薬剤、二酸化塩素剤、銀イオン、加熱殺菌、化学薬品系殺菌剤など種々あるが、本研究では塩素を分割して注入する方法を主体に熱との併用を検討した。

方法
電解次亜水生成装置と熱洗浄機能を備えた循環風呂装置を用いて入浴試験を実施した。塩素剤は一日に使う量を一定とし、一日2〜4回に分割する3条件で比較した。浴槽水は定期的に採取し、菌の分離、同定を行った。

結果
塩素剤2回/日注入では入浴前後でレジオネラ属菌は不検出であったが、3回、4回注入では10~30CFU/100ml検出された。一般細菌はすべての条件下で低値であった。分離された細菌はブドウ球菌や土壌・水系に生育する環境菌が多く認められた。さらに、1日に使用する塩素投入量を1600mgとし、2回/日の最適な塩素使用条件で電解次亜水生成装置を備えた循環風呂装置を用いて、一般家庭5件で入浴試験を長期的に実施した結果、レジオネラ属菌は不検出であった。

温泉水に含まれる成分がモノクロラミンに与える影響の確認

目的
モノクロラミンは高pHの温泉や井戸水の消毒に有効であることがこれまでに示されたが、全ての温泉に適用可能であるかは定かではない。そこで塩素消毒に影響するとされる成分、
①アンモニア態窒素②フミン酸③鉄イオン④硫黄⑤ヨウ化物イオン⑥臭化物イオンそれぞれがモノクロラミンに与える影響について検討した。

方法
①〜⑥の温泉成分を溶解させた試験液にモノクロラミン、比較対照として遊離塩素を添加し、一定時間後の成分濃度を測定、安定性について検証した。

結果
①遊離塩素は添加直後に不安定傾向を示し、モノクロラミンは安定に残存した。
②遊離塩素は不安定、モノクロラミンは安定な傾向を示した。
③モノクロラミンの安定性に影響を及ぼすが添加直後の消失は遊離塩素よりは少ない。
④遊離塩素、モノクロラミン両方の安定性に強い影響。塩素剤の濃度管理は難しい。
⑤両方の安定性に影響を与える。見かけ上、遊離塩素がモノクロラミンより安定傾向が認められたがヨウ化物イオンはDPD法(遊離塩素測定)に影響を及ぼすことがわかった。
⑥共に穏やかに減少。見かけ上は遊離塩素が安定傾向を示したが、DPD法では遊離塩素との反応生成物が遊離塩素として誤検出される可能性がある。以上の結果、モノクロラミンに対して影響を及ぼす成分はあるが、アンモニア態窒素などモノクロラミンの効果が期待できる結果も得られた。今後は測定法を含めた更なる検討が必要である。

種々の温泉水におけるモノクロラミン消毒効果と高濃度洗浄の検証

目的
前回、アルカリ泉質やアンモニウムイオンを含む温泉水の循環式浴槽でのモノクロラミンの高い消毒効果と消毒副生成物が極めて少ないことを報告した。今回はより広範囲な泉質の温泉に対するモノクロラミン消毒の効果について、さらに循環式浴槽のろ過器・配管の洗浄方法として高濃度モノクロラミン洗浄が可能かどうか検証した。

方法および結果
少量の源泉水を用いたモノクロラミン、次亜塩素酸ナトリウムの濃度安定性試験の結果、次の①〜③に大別された。
①モノクロラミン安定、遊離塩素急減-モノクロラミンの利用が容易である
②モノクロラミン徐々に減少、遊離塩素急減-モノクロラミン濃度が維持できれば効果は期待できる
③モノクロラミン急減、遊離塩素急減-適用対象外上記を基に、営業施設の循環式浴槽にて実証実験(4週間以上モノクロラミン濃度3mg/L)を行った結果、①②及び中性域の井水沸かし湯使用ではレジオネラ、アメーバは検出されず、トリクロラミンや塩化シアンも検出されなかったことから本消毒法が有効と考えられた。また、循環式浴槽の配管洗浄方法として高濃度モノクロラミン(20mg/L)による循環殺菌が有効であること、更に通常の浴槽水のモノクロラミン(3mg/L)による配管内のバイオフィルム除去効果は遊離塩素消毒(0.5または1mg/L)時よりも高いことが示された。

公衆浴場調節箱の自動塩素注入装置によるレジオネラ属菌対策の成果(第1報)

諸言
文京区の実態調査で公衆浴場の調節箱はレジオネラ属菌が増えるリスクをもっていることがわかった。箱内の湯の衛生管理は浴槽水と同様に一定以上の遊離残留塩素濃度の維持が重要と考え、固形塩素剤入りの吊り下げ型容器の設置を指導したが濃度が不安定であった。そこで安定的な濃度確保に有効な自動塩素注入装置設置を推進、導入の成果を報告する。

方法
①自動塩素注入装置は調節箱に近接して設置。容器内に貯められた次亜塩素酸ナトリウムが自動的に点滴状に調節箱に落ちる仕組みである。維持管理の目安は0.4mg/L以上とした。
②24時間測定できる自動塩素濃度測定器を調節箱に設置し、営業開始から終了までの7〜9時間を測定した。測定項目は遊離残留塩素濃度と水温。

結果
公衆浴場11施設での測定結果は、残留塩素濃度は全ての施設で0.1mg/L以上であった。レジオネラ症防止指針に示されている0.2~0.4mg/L以上と常に同等濃度であったのは8施設。その内、0.4mg/L以上を常に記録したのは4施設であった。この検査結果から調節箱に導入した自動塩素注入装置により遊離残留塩素濃度の維持が図られていることがわかった。