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当院における尿中レジオネラ抗原陽性25例の検討

当院における尿中レジオネラ抗原陽性症例の臨床像を明らかにする。

2007年7月から2016年5月の間に尿中レジオネラ抗原陽性であった25例について患者背景、検査データ転帰などについて検討した。
男性19例、女性6例、平均年齢は71才であった。尿中抗原陽性25例の内、レジオネラ肺炎と診断された症例は20例であった。そのうち、男性14例、女性6例、基礎疾患として、糖尿病を6例、COPDを1例を認めた。入院時の合併症として、肝機能障害13例、CK上昇12例、低ナトリウム血症2例、神経症状を有するものが、8例であった。入院時のA-DROPでは、神経症状を有するものが8例であった。入院時のA-DROPでは、軽症(0点)7例、中等症(1-2点)3例、重症(3点)5例、超重症(4-5点)5例、SOFAscoreの平均値は3.5(1-7点)であった。症状出現から、抗レジオネラ薬開始まで平均4.25日で人工呼吸器管理は1例、死亡例は1例であった。

レジオネラ肺炎では肝障害・CK上昇、神経症状といった合併症を初診時に高率に合併していた。

 

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入院後第23病日に顕在化し、当初は院内完成が疑われた 市中感染レジオネラ肺炎の1例

76歳男性、胃癌手術後。嘔吐後呼吸状態が悪化し、両側肺炎にて人工呼吸器管理となる。一時改善したが、徐々に呼吸状態が悪化。レジオネラ抗原を測定すると陽性だったことから、レジオネラ肺炎と診断。
患者は自宅の浴槽水を溜め置いて庭に散布していたことが判明した。自宅調査を行ったところ、浴槽水からLegionella pneumophilaが検出され、患者から検出されたものと同一のgenotypeだと分かった。本症例は、入院前に自宅浴槽水の再利用により感染し、入院後第23病日に発症したと考えられた。一見すると院内感染が疑われる場合であっても、本症例のように潜伏期間の長い市中感染例が存在することに注意が必要である。

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当院におけるレジオネラ肺炎11例の検討

レジオネラ肺炎は市中肺炎の約5%を占めており、集団感染事例も度々報告される。2007年10月から2016年9月までの9年間で、肺炎症例のうち尿中レジオネラ抗原キット(イムノクロマト法)陽性であった症例を抽出した。該当症例は11例であった。全例男性で、平均年齢58歳(41~86歳)であった。ステロイドや免疫抑制剤投入中の発症は3例で、基礎疾患を有さない症例は半数(6例)を占めた。喫煙歴(10例)、大量飲酒歴(9例)があった。エアロゾルを発生させる人工環境に暴露した症例は1例であり、その他は感染経路が不明であった。全例で発熱を認めたものの、咳嗽がなく画像検査で肺炎の診断に至った症例が5例であった。レジオネラ肺炎は、健常人にも発症しうる。大量飲酒、喫煙歴がリスク因子と考えられる。気道症状がないといった肺炎として非典型的な経過を辿ることもあり注意を要する。

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約2ヶ月の間に当院で経験したレジオネラ肺炎の3症例

【症例1】73歳男性。入院5日前に草刈をし、入院3日前から39℃の発熱を認めた。
レジオネラ尿中抗原陽性となった。入院11日目に退院。
【症例2】66歳男性。土木業。基礎疾患は高血圧、心房細動。入院2日前から倦怠
感があり、次第に増強。39.6℃の発熱。レジオネラ尿中抗原は陰性であったが再
検査で陽性。入院18日目に退院。
【症例3】61歳男性。公衆浴場の清掃業。基礎疾患は糖尿病。入院7日前から発
熱を認め、入院1日前に意識朦朧とし、自損事故を起こした。レジオネラ尿中抗
原陽性となった。一時は症状悪化したが改善し、入院12日目に退院。

いずれも土壌あるいは水環境との接触があったが、関連性はなく、それぞれ単発
例であった。3例とも治療が奏功し、特に合併症などもなく救命しえたが、早期に
診断がつい治療開始できたことが大きいと思われた。

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LAMP法により診断し得たレジオネラ肺炎の1例

76歳男性。発熱全身倦怠感。入院2日前より前進倦怠感出現。入院の朝から悪寒戦慄が出現。38.8℃の発熱・呼吸困難および下肢の脱力感も出現。治療後速やかに改善し、それに伴い呼吸状態も安定した。入院後の喀痰検査でLAMP法を行ったところ、レジオネラ遺伝子が検出された。尿中抗原では血清群1以外のレジオネラに関しては検出感度が低い。レジオネラ肺炎を疑った場合にはLAMP法による喀痰検査の追加が有用であると思われた。

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当院でのレジオネラ肺炎の検討

レジオネラ肺炎は重症化しやすいが、軽症例のレジオネラ肺炎の診断はしばしば困難である。軽症例(ADROP0点or1点)と中等症-重症(ADROP2点以上)の比較検討を行うため、2001年から2016年11月まで当院でレジオネラ肺炎と診断された24症例を後視方的に検討した。レジオネラ肺炎は、他の病原菌による市中肺炎に比して低Na血症を合併しやすく、ADACT-ProVasopressinの関与が指摘されているが、その正確な秩序は不明である。しかし本研究では軽症例でより高度の低Na血症/体温の上昇が出現する可能性を示している。軽症の市中肺炎で低Na血症があれば、レジオネラ肺炎を疑うヒントになりうる。

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建築物の衛生と微生物制御 冷却水の微生物対策

 

冷却水は、冷凍機と冷却塔の間を循環しており、冷凍機が冷水を作り出す際に発生する熱を冷却塔で放出する。レジオネラ症は冷却水、給湯水、浴槽水等でレジオネラ属菌が増殖して、レジオネラ属菌を含む微小水滴(エアロゾル)をヒトが吸い込むことで感染、発病する。レジオネラ属菌の抑制対策には、浮遊しているレジオネラ属菌を殺菌するだけでなく、増殖源であるバイオフィルムを無くす必要がある。冷却水で微生物が発生し障害を起こすのは、水温、pH、水中の溶解成分、日射、水の流速等の要因が好適なためである。現行システムを変更せずに、効果的かつ低コストで冷却水の微生物対策を行うには、防菌防黴剤の添加、及び化学洗浄が一般的である。

レジオネラ属菌数の目標は水中浮遊の菌数で示されるが、バイオフィルム中のレジオネラ属菌にも留意する必要がある。バイオフィルムはレジオネラ属菌の供給源であり、水中よりも高率・高濃度で菌が存在することが報告されている。バイオサイドの種類による検出率の違いによって、冷却水処理を行ってもスライムが生成したり、レジオネラ属菌が検出される場合がある。レジオネラ属菌検出率は、無処理が53.1%、グルタルアルデヒドが9.7%、イソチアゾリンが19.2%、カチオン系が、21.9%、塩素系が55.0%である。有機系薬剤は、無処理に比較して検出率を低下させている。一方次亜塩素酸塩等の塩素系は、無処理と同等以上の検出率であり、10,000CFU/100mL以上の抗菌数の比率は13%であり、無処理の2.9%に対して高率となっている。この原因として、塩素系はアメーバを抑制できないこと、アメーバ内で増殖したレジオネラは塩素剤に対する抵抗性を有することなどが挙げられる。

近年では、バイオサイドとしてヒトや環境へ影響がより少ない物質が採用されている。使用にあたっては、無処理効果のモニタリングとそのフィードバックによる適正な種類及び量の管理が重要である。

 

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サイクロン式エアサンプラーと定量PCRによる空気中のレジオネラ属菌の検出

 

2015年の夏、ニューヨークで冷却塔を感染源とするレジオネラ症の集団感染が発生し、患者数は133名、うち16名が死亡した。

レジオネラ症はレジオネラ属菌を原因微生物とする呼吸器感染症で、人が呼吸によりレジオネラ属菌を吸引することで感染する。レジオネラ症を防止するためには人口環境水中のレジオネラ属菌の増殖を抑制し、冷却塔や浴槽等設備等から発生するエアロゾル中にレジオネラ属菌を含まないように管理する必要がある。

冷却塔から飛散するエアロゾルを含む、空気中のレジオネラ属菌生息調査方法として、液体サイクロン式のエアサンプラーを用いてレジオネラ属菌を補修し、定量PCR法で検出する方法がある。これは、捕集口から空気を吸引し、空気中の微生物等の粒子を遠心力により空気から分離して液中に捕集する。この方法の場合、捕集した微生物の検出方法に制限がなく、目的に応じて培養法や遺伝子検出法を選択できる。液体サイクロン式のエアサンプラーと定量PCR法の組み合わせは、空気中のレジオネラ属菌遺伝子を迅速に検出でき、汚染調査のためのスクリーニング方法として有用である。

国立感染症研究所感染症疫学センターの報告によるとレジオネラ症の患者発生のピークは7月である。我が国ではレジオネラ症の感染源の報告は浴槽が主であるが、夏場に感染者が増加することと冷却塔の稼働率およびレジオネラ属菌の検出率が上昇する事との関連があるため、今後冷却塔からのレジオネラ属菌の飛散実態を明らかにする必要がある。

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温浴施設の微生物汚染の現状と対策

1.はじめに
近年では、日帰り入浴施設や旅館、ホテルなどで、多くの人々が温泉水や炭酸湯、泡風呂など様々な形態の温浴施設を利用している。温泉施設では、レジオネラ問題を中心として、微生物汚染の対策を解説する。

2.浴槽水のレジオネラ問題の経緯
2000年に静岡県と茨城県で、2002年に宮城県と鹿児島県で、開業して間もない入浴施設を感染源とするレジオネラ症の集団発生が起きた。温浴施設の微生物汚染、とりわけレジオネラ属菌汚染に対する関心が高まり、実態調査と汚染防止対策がなされてきた。

3.温浴施設の微生物汚染状況
1)レジオネラ属菌
日本全国の温浴施設浴槽水のレジオネラ属菌検出率は2001年は30.9%、2003年にかけて低下し14.0%と約半分になったが、その後は2012年まで大きな変動はなく13.0%程度である。温泉水は浴槽水全体(水道水含む)よりも高い検出率である。温泉水の利用形態の違いでは、掛け流し式は循環式と大差ない検出率、菌数である。掛け流し式温泉浴槽水は、残留塩素濃度管理が適切に行われない場合が多く、レジオネラ属菌の検出率が高い事が示された。
2)アメーバ類
合計237施設の温泉浴槽水試料685検体を調査した結果、何らかのアメーバ陽性検体は315検体(検出率46.0%)であった。

4.温浴施設の衛生管理基準
温浴施設の衛生管理要項は、「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」に示されている。特に留意するべき事項として「レジオネラ症の発生の事例を踏まえて、浴場施設の衛生管理、構造設備上の措置を行う必要がある」としている。床や壁、排水口等に汚れや、真菌類等微生物の付着が無いよう、清掃消毒により清潔で衛生的に保つことが求められている。

5.温浴施設の微生物汚染対策
浴槽水のレジオネラ属菌防止対策は、設備構造面と維持管理面から考える。
温泉水で、アンモニウムイオン含有、遊離塩素の消費が速く消費量が大きい、pHが高い等の水質では、遊離塩素管理による対策が困難である。こうした温泉水使用の場合は、浴槽水中にモノクロラミンを3mg/L程度維持することで、レジオネラ属菌抑制対策が改善される。浴槽水から高菌数のレジオネラ属菌が検出される割合は小さいが、100CFU/100ml未満の菌数が検出される浴槽水は10.5%と少なくない。残留塩素が維持されていても検出される場合があり、バイオフィルムの存在が原因と考えられる。対策は、化学洗浄によりバイオフィルムを除去することであるが、設備構造を十分に理解したうえで洗浄残しを無くす必要がある。

6.レジオネラ属菌検査
浴槽水のレジオネラ属菌検査は、温浴施設の営業自粛にも影響する重要な検査である。検査は培養法と遺伝子法があり、培養法は菌数を定量化でき、定期検査に使用される。検査機関は、外部精度管理などを利用して検査精度の維持向上に努めることが望ましい。イギリスのPHE(Public Health England)で外部精度管理プログラムを運用しており、実用的な検査精度の評価ができる。遺伝子法は、迅速検査の特徴から除菌洗浄後のレジオネラ属菌不検出を早急に判断するのに使用する。遺伝子法では死菌の存在も陽性と判定するため、培養法に比べて陽性率が高い。最近では、EMA-qPCR法の採用により、遺伝子法陽性、培養法陰性の不一致を60%削減し、より正確な判定ができる。レジオネラ属菌対策は、正確、迅速な検査に基ずいて行うことが大切である。

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アメーバ共培養-LAMP法を用いた水景施設におけるレジオネラ属菌生息調査

レジオネラや抗酸菌などの病原細菌と環境水中のアメーバの密接な関連を利用して、これら細菌類の検出にアメーバ共培養法を応用する試みが行われている。アメーバ共培養法により検出されたレジオネラは、宿主アメーバ内増殖能との関連性からヒトへの病原性が強いことが示唆されており、レジオネラ症の発症につながる危険性も高い事が指摘されている。

近年、諸外国において、水景施設を感染源とするレジオネラ症が報告されている。水景施設とは、人工的に造られた噴水や滝、池などの水環境で、公園、学校、ショッピングセンター、ホテルのロビーなど屋内外を問わず設置されている。レジオネラがアメーバ内で増殖する特性を利用したアメーバ共培養法の手法とLAMP法を組み合わせ、よりヒトへの病原性が強い可能性があるレジオネラを検出することを試
み、水景施設を対象とした生息調査を行った。アメーバ培養法を行った水景水のLAMP法陽性率は41.9%であった。また、LAMP法陽性資料のうち、アメーバ共培養法を行った後も陽性であった資料は81.8%であった。これらの陽性率は、アメーバ内で増殖したレジオネラ、すなわち、アメーバ内増殖能を有するレジオネラ汚染度を示すものと考えられる。これまで、レジオネラ症の感染源と考えられる場所として、主に浴槽水や冷却水が挙げられていた。しかし近年、雨水や水たまり、カーエアコン、歯科治療装置などからのレジオネラ検出が報告されており、これまでにレジオネラ感染源として挙げられていない環境水が感染源となる可能性も考えられる。

レジオネラ症を防止するためには、感染源となる環境水中のレジオネラの生息状況を正確に把握し、迅速に対策を講じる事が公衆衛生上重要である。今後は、種々の水環境を対象にアメーバ共培養法の手法を適用し、よりヒトへの感染の可能性が高いレジオネラの生息環境調査を実施することにより、レジオネラ症発生防止の基礎的データを得られると考えられる。