くらしと微生物16温泉

序文
レジオネラ症は温泉ブームを背景に大きな社会問題に発展し、感染源対策が急務とされている。ここでは温泉水におけるレジオネラ属菌の生息状況と衛生的対応について述べる。

生息状況
2003〜2004年実施のレジオネラ属菌生息調査では710試料中204試料(28.7%)から分離され、全ての都道府県の温泉水に生息していることが明らかになった。今回(2009〜2010年)の調査でも366試料中89試料(24.3%)と、様々な取組みを強化してきたにもかかわらず、前回と大差ない結果となった。菌数は100CFU未満/100mlが半数を占め、菌数増加に伴い試料数は減少の一方で、10、000CFU/100mlを超えたものも3.4%あった。菌種ではL.pneumophilaが前回同様最も多く、それ以外の菌種が前回より高率に分離された。血清群別では1群が前回共に高頻度であるが、今回は温泉水からも1群が多く分離された。レジオネラ属菌は捕捉されたアメーバ等の細胞内で増殖し、最終的には宿主の細胞を破壊して水中に拡散する。また、水環境中の微生物は固体表面に付着して微生物膜(スライム、バイオフィルム)を形成するが、膜内では外界からの有害作用を受けにくく、まさにレジオネラ属菌のすみかであり、爆発的に増殖した菌により水環境が汚染され続けることになる。

衛生的対応
泉質が多様で、供給システムも施設により異なるため画一的な対応策は難しいが、レジオネラ汚染対策はアメーバ対策といえる。微生物膜除去には物理的剥離、即ち清掃が最も有効である。塩素処理の是非については様々な意見があり、レジオネラ属菌は一般的なグラム陰性菌より塩素に対して抵抗性を示すという報告もあるが、現実の維持管理において塩素処理が有効な一方法であることは否定できない。また、菌の飛散防止はレジオネラ症の感染対策として重要であり、極力エアロゾル発生を防止する必要がある。気泡発生装置やジェット噴射装置等の設備による集客ではなく、いかに衛生管理を行っているかが問われる時である。利用者もまた、レジオネラ症を考慮した温泉の利用方法を身につけることが望ましい。

おわりに
今回も39.5%の施設からレジオネラ属菌が検出された。夫々が生息状況等現状を十分把握し、適切な対応を行い、継続的な衛生管理を実施することがレジオネラ症発生を防ぐと考える。


レジオネラ文献, 生息調査カテゴリーの記事