Legionella pneumophila seroground3による呼吸器感染症の4症例

序文
レジオネラ属菌による肺炎は重症化しやすく、致命率が高いとされているが、報告件数増加に伴い、軽症と考えられる症例も認められるようになった。しかし実態は未だ良く知られていない。レジオネラ症の多くはLegionella pneumophila SG1によるものであり、他の血清群、菌種による報告は少なく、肺炎以外の呼吸器感染症の報告も稀である。今回SG3が検出された呼吸器感染症例を経験したので報告する。

症例
1.66歳歳男性。湿性咳嗽と粘度の低い喀痰。レントゲンではすりガラス様陰影、CTではすりガラス影の多発を認めた。喀痰は粘濃性で、Gram陰性小桿菌と口腔内常在菌を認めた。肺炎重傷度は軽症、アジスロマイシン(AZM)を3日間内服、治療4日目で咳嗽改善、15日目で陰影と症状の消失。初診時の喀痰培養でAZMに感受性、またSG3が少量培養された。11日目の尿中抗原では陰性であった。
2.58歳女性。湿性咳嗽。レントゲンで栗粒大の粒状陰影を、CTでは散在性小粒状影、気管支拡張像を認めた。喀痰は粘濃性でGram陽性球菌を認めた。抗酸菌塗沫検査は陰性。下気道感染症としてAZMを投与、湿性咳嗽は消失、4ヶ月後のCT再検で小粒状影は消失した。喀痰培養からはSG3が検出されたが、尿中抗原は陰性であった。
3.79歳男性。僅かに粘性の喀痰。レントゲンで粒状影を、CTで気道散布性粒状影と浸潤影を認めた。喀痰は粘性でGram陽性球菌を認めた。抗酸菌塗沫は陰性。非結核性抗酸菌症を疑う所見であったが、誘発喀痰からSG3が培養された。尿中抗原陰性。AZM3日間投与。一月後、喀痰性状に変化なく、SG3は消失。二月後、粒状影軽快。喀痰の再検ではMACが培養された。
4.60歳女性。骨髄移植で入院、移植後は感染症や心不全などを発症。発熱、呼吸状態悪化により気管挿管、人工呼吸器管理となる。レントゲンで濃度上昇と心陰影の拡大が認められ、CTではびまん性に高吸収域であった。6日後、気管挿管時の検体からSG3のみ培養された。シプロフロキサシン投与に加えて、AZMを追加したが肺炎像の改善なく、呼吸状態も増悪し死亡。

考察
4症例のうち1例は市中肺炎、2症例は気道感染症を疑わせるものであった。一般的に臨床検体からレジオネラ属菌が検出されたら少量であっても起炎菌とされているが、慢性の気道感染症で保菌状態があるのか今後検討の必要がある。4番目の症例は免疫抑制状態の患者に発症した院内肺炎症例。気道に保菌していたレジオネラ属菌は宿主の免疫系が進行性を阻害されると病原性を増すとの報告もあり、本症例の病態を示唆しているかもしれない。現在、SG3の症例は少なく、臨床像については検討されていない。尿中抗原迅速キットもSG1しか検出しない。今回の症例中、3症例は当初レジオネラ肺炎を想定する緊急性はなかった。レジオネラ属菌は日常の細菌検査では培養されておらず、見逃されている症例が多いと危惧されているが、当院では肺炎が疑われる呼吸器感染症の検体は全て培養を試みており、本症例の診断を成しえた。病歴、画像所見に加え、軽症例の存在や季節発症の存在を知ることでレジオネラ症を疑い、特殊検査を施行することが診断向上につながるかもしれない。今回、SG3による軽症の呼吸器感染症とSG3による院内肺炎を報告したが、日常症例において軽症のレジオネラ症が存在すること、また院内肺炎の重要な気炎菌であることを認識して検査を行う必要があろう。


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