重症レジオネラ肺炎の軽快後に消化管出血を繰り返した1救命例

序文
レジオネラ肺炎と消化管出血との関連は明確ではないが、重症レジオネラ肺炎軽快後に多発性胃潰瘍による出血ショックを繰り返した症例について報告する。

症例
患者は悪心と下痢が持続、さらに自分のいる場所がわからない、発言がおかしい等の症状出現により当院受診、精査の結果、高度の炎症反応の上昇、急激な呼吸状態悪化等からレジオネラ肺炎を疑い抗菌薬治療を行い、第11病日(入院5日目))改善を認めた。一方で、14病日(入院8日目)、胃体下部壁の潰瘍性病変と露出血管からの動脈性噴出性出血により出血性ショックに至り輸血と止血にて救命したが、その後も出血を繰り返したため広範囲胃切除を行った。悪性所見は認めず、術後経過は良好であった。

考察
重症レジオネラ肺炎では嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状や頭痛、意識障害、健忘などの精神神経症状が多く出現する。本症例も入院まで自覚症状として呼吸器症状を伴わず、消化器症状と精神神経症状が主体であった。抗菌薬治療の結果、肺炎予後は良好で、退院を検討した矢先、出血性胃潰瘍によるショックを合併した。胃潰瘍の既往はなく、H.pyloriは抗体価・免疫組織染色共に陰性であった。重症感染症に伴う肉体的・精神的ストレスの関与によるものと思われるが、肺炎軽快後、PPI投与下にも関わらず激しい出血を伴う治療抵抗性の胃潰瘍が多発した今回の経過は、従来の胃潰瘍とは異なるものであった。検索したところ、レジオネラ肺炎に合併した消化管出血の報告例は6例目であった。肺炎軽快退院後に消化管出血で死亡した過去の報告例では病理解剖の結果、潰瘍の局所からレジオネラ菌は検出されず、本症例でも胃液培養から菌は検出されなかった。胃粘膜病変と強く関連するH.pyloriであるが、L..pneumophilaのLPSはそれよりも強いLPS活性をもつ。レジオネラ肺炎患者におけるLPS抗原は数週間にわたり排出され、本症例も第36病日の時点で陽性が持続した。つまり、肺炎軽快後もLPSが炎症性サイトカインを誘導し、強い胃粘膜障害を起こした可能性はある。消化管出血の合併報告はまれであり、両病態の関連は類推であるが、その報告例では激しい出血を繰り返し予後不良であることから、L..pneumophilaは多臓器障害の症状として、重篤な消化管出血を発症する可能性について警鐘を鳴らしたい。


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