レジオネラ症のリスクマネジメント6レジオネラ属菌の検査培養法

はじめに
遺伝子検査法は感度が良く短時間で対応できるが、菌の生死に関わらずレジオネラ関連遺伝子を検出するため殺菌できたかどうかの効果判定には不向きである。現状の浴槽水等の水質基準は培養検査で生菌数を確認すると示されており、培養法は不可欠、且つレジオネラ属菌対策において大きな意義を有するといえる。

検査方法
検水は第3版レジオネラ症防止指針の検査法に従い実施するが、レジオネラ属菌における培養検査の精度は一連の操作が反映されるため、各行程での注意点等を示す。
①検水は汚染度の高い箇所を採取箇所に設定することが重要であり、予め施設に関する情報を入手することで確実な試料採取に繋がる。
②濃縮操作において、冷却遠心濃縮の場合、冷却遠心機を用い、分離停止時は沈殿物を巻き上げないよう減速し、上清を取り除く際にも沈殿物に注意する。正確に液量を合わせるため容量の小さい目盛の試験管、遠心管を用いると良い。
③ろ過濃縮では検水に浮遊物が多い場合にはフィルターを適宜交換、或いはろ過量を減少させ、洗い出し液量を変えることで対応する。個人差がなく一定条件で行うにはストマッカーを用いるのも良い。
④前処理での過剰処理はレジオネラ属菌の生育に影響を及ぼすため処理条件を正確に守る。
⑤培地は添加抗生物質の種類や添加量により検体に混在する雑菌の抑制効果が異なるため含有する抗生物質の特性を把握し、それぞれの検体に適した培地を選択する。
⑥接種の際は寒天平板の上を乾燥させておくと吸水が速やかである。
⑦培養の際は乾燥を防ぐために密閉容器などに入れ保湿する。
⑧判定の際、他の微生物のコロニーに隠されて正確なコロニー数を判定できない場合は検査責任者の指示を仰ぐことも大切である。
⑨レジオネラ属菌同定用キットが国内で市販されている。操作性、コスト面を考慮して選ぶとよい。キットや免疫血清を判定に活用することは検査精度アップに有用である。

培養検査の課題
①入浴状況、浴槽の洗浄頻度、消毒薬の使用状況等によりレジオネラ属菌数は常に変わるため定点を決め、定期的な検査で総合的判断することが重要である。少なくとも指針に示された頻度で実施し、残留塩素濃度、一般細菌数、大腸菌群をレジオネラ属菌数の指標として日常管理を行う。
②濃縮や前処理方法により結果に影響を及ぼすことがあるため、酸処理・熱処理の併用で精度を上げることが望ましい。
③温泉水の泉質によって検出状況は異なる。温泉成分はレジオネラの増殖に影響するので検査においては必ず希釈率を変えた複数の試料液での培養が必要である。
④極めて大量の雑菌の存在等によりレジオネラ属菌を定量できなかった例もあった。
⑤各検査機関は検査精度を保障する必要がある。しかし国内における精度管理についてはまだ検討の段階である。英国のHPAが行う精度管理プログラムを利用することができる。また検査機関の制約が無いため、信頼度の高い機関を識別するための基準も必要である。

バイオハザード対策
レジオネラ属菌は病原体のレベル分類によってBSL2に位置づけられる菌である。施設面、教育訓練の両面で安全対策を施し、作業者の安全を確保することが必要である。

おわりに
培養法はレジオネラ属菌の検査にとって基本となるものである。適切な検査をするためには知識と経験が必要である。検査機関は精度の高い検査を行うべきであり、外部制度管理システムの早急な構築が望まれる。また内部精度管理については各機関に委ねられているのが現状であり、本報が検査に係わる方々の一助となれば幸いである。


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