レジオネラ症のリスクマネジメント3レジオネラ属菌の生息状況

はじめに
今般レジオネラ症防止指針が改訂されたが、基礎的なデータが欠如していることを改めて痛感した。そこで古いデータではあるがレジオネラ属菌の分布等について詳細に示し、またL.micdadeiに関する最新データを示すことにより本菌の生態学的特性を十分理解し、適切な対応の一助としてもらいたい。

土壌におけるレジオネラ属菌の分布状況
①1、362試料中86試料(6.3%)から分離され、日本全国に分布(31都道府県66%)していることが明らかになったが地理的な分布傾向は認められなかった。
②年間を通して土壌中に生息していたが、特に3、9、10、12月の分離率が10%を超え高率だった。秋期(415試料中40)、冬期(277中21)、春期(334中18)、予想に反して夏期(336中7)が最も低かった。
③最高頻度に分離された菌種はL.pneumophila(80.2%)で、血清群1群(32.3%)、3群(17.2%)、5・6群(各7.5%)であった。1群は北海道を除く各地、3群は関東、中部、中国、九州、5と6群は近畿より東の地域で分離された。次に頻度が高かったのはL.sainthelensis(5.2%)で、その他L.anisaなどが僅かに分離された。
③分離された場所は道端(26.7%)、庭(16.3%)、植込み(14%)、畑(11.6%)で、弱酸性から弱アルカリ性の土壌に広く生息していることが分かった。分離菌種と分離月には顕著な傾向はみられなかった。
③深層部土壌では、60試料中6(10.0%)から分離され、表層から20〜30cmの深さの土壌中にも生息していることが確認できた。何れもL.pneumophila血清群1群であった。

温泉水におけるレジオネラ属菌の分布状況
③全国各地の710試料中204試料(28.7%)から分離された。地域による顕著な差は認められなかった。採水場所では内湯より露天の分離率が僅かに低かった。循環式と掛け流しの分離率、検出菌数に有意な差は見られなかった。pH別では弱酸性、中性の環境下で高率に存在していることが明らかになった。菌数は少ないが各地の温泉水に広く生息しているといえる。
③上記204試料から分離された251株のレジオネラ属菌はL.pneumophila(245株、97.6%)が最も多く、血清群では1群(54株21.5%)が最多、次いで5、6、4、3、10群の順に多く群別され、2と14群は該当しなかった。また菌数の多かった10試料の血清群別の特徴的傾向は認められなかった。

L.micdadeiについて
①温泉水55試料からL.micdadeiの分離を試みた。3試料、広島県の温泉プール水と内風呂浴槽水(アルカリ性単純泉、pH9.1)と神奈川県の露天風呂浴槽水(ナトリウムー塩化物強塩泉、ナトリウムイオン10、920?/l、pH7.4)から分離された。
②3試料から各3株、計9株のPFGEパターンを検討した。広島の施設では同一起源のL.micdadeiが施設全体を汚染している可能性が考えられた。一方、神奈川の施設から検出されたL.micdadeiは広島とは起源が異なること、また同一施設内でも起源の異なるL.micdadeiが同時に生息していた。
③アメーバ内増殖性試験の結果、温泉水から分離したL.micdadei27株はアメーバ寒天培地上でも集落を形成し、BCYEα寒天培地上の集落との差は認められず、これらの菌種はいずれもAcanthamoebaの細胞内で増殖したと考えられる。また、モルモット由来単球中におけるL.micdadei K2株は、細胞質内で増殖し、核が圧排されていることが確認された。また塗沫標本内の単球の内、L.micdadeiの増殖により破壊されているものが散見された。いずれも病原性であると考えられた。

おわりに
レジオネラ属菌は土壌や温泉の広い範囲に生息し、環境常在菌であることが確認された。感染源対策が急務とされているが、あらゆる環境中でレジオネラ属菌ゼロを目標にするのではなく、レジオネラ症発生防止を目的に、持続的な衛生管理が得策であろう。


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