LAMP法を用いた浴槽水からのレジオネラ属菌検出時における反応阻害確認の必要性

目的
LAMP法は培養法に比べ短時間で検査結果が得られ検出感度も高いことから公衆浴場等の衛星状況の把握に活用されているが、環境水を対象とした場合、環境水中に存在する物質によるDNA増幅が阻害されることが指摘されている。阻害物質によりレジオネラ属菌が存在していても陰性と判定される偽陰性の可能性があることから、遺伝子検査法では試料中の阻害物質の有無についても併せて検討する必要がある。しかし乍らその発生頻度等については十分に明らかにされていない。今回、LAMP法で浴槽水のレジオネラ属菌の検出を行う際に反応阻害の有無、及びその発生頻度を検討するとともに、反応阻害確認の必要性について検討した。

方法
検査試料として入浴施設等の浴槽水71試料を採取、種別は薬湯13、白湯58(水道水45、井戸水13)。これらをレジオネラ症防止指針に示された方法にて濃縮し用いた。
1.培養法による検出所定の方法にて培養後、L-システイン要求性を試験するためBCYE-α寒天培地(栄研化学)と羊血液寒天培地(日研生物研究所)に植え継ぎ、L-システイン含有の培地のみに発育したコロニーをレジオネラ属菌と判定した。菌種同定は免疫血清によるスライド凝集反応とDNA-DNAハイブリタイゼーション(極東製薬)により行った。
2.LAMP法による検出濃縮試料からアルカリ熱抽出方法によりDNAを抽出し、LAMP法はレジオネラ検出試薬キット(栄研化学)を用いプロトコール通りに行った。1試料につき2本のチューブを用意し、2本目には反応阻害物質有無の確認のためキット添付の陽性コントロールをインターナルコントロールとして添加した。リアルタイム濁度測定装置(栄研化学)を用いてDNA増幅の有無を確認、増幅が認められなかった試料についてDNA抽出試料の希釈及び精製を行い再度LAMP法を実施した。希釈は阻害物質の影響低減のためDNA抽出液をTE緩衝液で10倍に希釈、又精製は阻害物質除去のためEthachinmate(ニッポンジーン)を用いて行った。
3.浴槽水の水質分析LAMP法でインターナルコントロールが陰性の試料について所定の方法で金属成分の分析を行い、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムの測定を行った。
4.模擬薬湯水のLAMP法反応阻害確認薬用植物を水道水に混合した模擬浴槽水を作り、陽性コントロールをインターナルコントロールとして添加したLAMP法を行った。濃縮試料は上記同様に2本のチューブを用い、1本は試料水と同様にDNAを抽出、2本目は遠心濃縮のみを行い、アルカリを加えなかった。
5.実験結果
①浴槽水71飼料の内、LAMP法により27試料(38%)、培養により12試料(16.9%)からレジオネラ属菌が検出された。LAMP法陰性の44試料の内、インターナルコントロール陰性は4試料(5.6%)、内、培養法でレジオネラ属菌が検出されたのは1試料であった。培養法による検出菌数は70〜16、000CFU/100ml、菌種はL.pneumophila、血清群はSG1、3、5、10であった。
②インターナルコントロール陰性の4試料の再試験結果は、希釈したものは4試料全てでLAMP法陰性、インターナルコントロール陽性であった。精製したものも同様の結果であった。培養法でレジオネラ属菌が検出されたのは1試料で、検出菌数は5、000CFU /100ml、菌種はL.pneumophila、血清群はSG1、3であった。
③上記4試料は全て薬湯で、これらの原水は水道水2試料、井戸水2試料であった。
④金属分析の結果は井戸水の1試料が鉄、マンガンが他の3試料と比べ値が高く、マンガンは水道水質基準を超えていた。3試料は全項目で水道水質基準内であった。
⑤模擬薬湯水はチューブ1本目はインターナルコントロール陰性、アルカリを加えず濃縮のみ行った2本目はインターナルコントロールが陽性であった。

結果と考察
今回、LAMP法により5.6%の試料で反応阻害が認められ、偽陰性の可能性のある試料が存在した。反応阻害が認められたのは薬湯であったことから薬用植物により反応が阻害された可能性が考えられる。模擬薬湯の実験結果からはアルカリを用いたDNA抽出過程により生じた何らかの物質によりDNA増幅反応が阻害された可能性が示唆された。金属イオンの影響については今回は確認出来なかった。また、実験結果②が示すように反応阻害物質の濃度がDNA増幅反応に影響を受けることも示唆された。反応阻害が認められた4試料の内の1試料は培養によりレジオネラ属菌が検出されたが菌数、菌種から阻害物質が存在していなければLAMP法は陽性であると考えられる。DNA抽出液を精製することにより阻害物質は除去できたが、抽出されたDNAは検出限界値以下であり、一方、希釈液については計算上は陽性となるが実際には陰性であったことからもこの試料はDNAが抽出出来ていない可能性が高いと考えられる。以上の結果から、LAMP法においても偽陰性となる可能性が明らかになった。LAMP法によるレジオネラ属菌検出時には、同時に反応阻害確認を行う必要性が認められた。


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