レジオネラ対策とコンプライアンス(遵法)経営

イギリスの建築設備技術者協会による1991年の指針「在郷軍人病の危険性の低減」によると「正しいコミッショニングは施設の満足な運転にとって決定的に重要である」としている。コミッショニングとは、我国でも性能検証として、建築設備の機能が新設時に十分に発揮されるようになっているかの確認作業であり、ビルの引き渡し過程での重要項目とされているが、イギリスの指針ではレジオネラが所要の条件に適合しないことはコミッショニングの不適切として、設備設計会社に通報されて然るべきことと考えられている。このほかにも、日本と海外の指針では主に3つの特徴的な相違がみられる。その第1は作成主体である。アメリカやイギリスではともに学会が主体となっているが、我国ではビル管理教育センターと国の外郭団体であり、国の担当部局の直接的監修を受けているのと大きく異なる。第2は、題名である。我国の「レジオネラ症防止指針」に対してイギリスは「在郷軍人病の危険性の低滅」、アメリカは「建築物の水利用システムに関するレジネラ症の危険性の低滅」となっている。「防止」と厳命されると、担当者は緊張して自由に口をきくことができなくなり、これに対して「低減」と期待されると、自由な発想で予期以上の実力が発揮される可能性もある。筆者の意見としては各業界・各分野でこれを「実施要網」としてまとめることがコンプライアンス経営の趣旨に沿うものと考える。第3は、公開討議の有無である。英米の学会主導の場合は、最終決定前に、一定期間の公示と意見具申の機械が設けられている。我国の官主導の場合にはそのような機会はない。ビル管理は業界の間口が広いことが、そのまま関連法規の多数となっており、遵法という点では業務運営の基本となっている。冷却塔については、官・学・業それぞれの立場からの長年の協力により、現在のようなレジオネラに対する管理体制を創り上げてきている。循環式浴用施設分野においても、建設から管理への引き渡し、すなわちコミッショニングにも配慮を要しよう。防止指針の考え方からみて、これも解決への重要な視点の一つと考える。


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