温泉:3新鮮さ魅力「かけ流し」(四夜一話)【名古屋】

2004/05/26の朝日新聞 夕刊によると、岐阜県上宝村の福地温泉では、予約時に「温泉はかけ流しですか」という問い合わせをする客が増えてきたという。 いまの温泉は、入浴で汚れた湯を機械でろ過して何度も使うため、湯を節約できて温度管理も楽な循環型が主流。風呂の大きさが競われた80年代から広まった。福地温泉でも循環型を採り入れたり、最高78度の源泉に水を加えて温度を下げたりしている宿があったが、「温泉の中身が問われる時代になった」そんな危機感で、全13軒の宿の経営者が循環と加水をやめることでまとまり、具体的な方法を検討しているという。 大手旅行会社の日本旅行(本社・東京)は昨年のパンフレットから、宿ごとに温泉の「循環」「加水」「加温」の有無を表示している。パンフレットによると「源泉100%かけ流し」の宿は「飛騨・南信州」地区で57のうち二つ、「伊勢・志摩・南紀」の59の中でも二つだけだという。 愛知県の昨年の調査では、新鮮な湯を月に1回しか補給しない温泉施設が、県内278施設の約1割にのぼったという。 神奈川県温泉地学研究所の元所長、平野富雄さん(66)は、循環した温泉を「気の抜けたビール」に例える。 地下で閉じこめられた温泉の成分は、わき出た瞬間から揮発や酸化が進み、活力を失い始める。長時間循環した湯はもとの成分と雲泥の差が生じ、暖める効果しか期待できないというのだという。 平野さんらは、今年3月、NPO法人「源泉湯宿を守る会」(東京都台東区)を立ち上げた。参加する宿には、注ぎ込まれる源泉の量や成分を、湯船ごとに表示してもらう。裏付け調査もする。「情報公開を進めることで、温泉客が本物の大切さに気づいてくれるはず」と期待する。

記事掲載誌 朝日新聞夕刊 掲載日 2004年5月26日 記事番号 532