*〈臨床検査〉「Clinical Microbiologistとしての活動を」賀来氏が感染管理のシステム化で指摘第43回東北医学検査学会

2002/11/01のMedical Academy NEWSによると、第43回東北医学検査学会が10月19、20の両日、秋田市の秋田キャッスルホテルで開かれ、賀来満夫氏(東北大学大学院医学系研究科病態制御学)から、感染症の被害を最小限に食い止める感染管理システムの構築に、臨床検査技師が果たす役割の重要性が報告された。感染管理のシステム化では、サーベイランスの実施が最も重要な作業となるが、精度の高いサーベイランスには、臨床サイドと検査部の協力が不可欠になるため、賀来氏は「サーベイランスがうまくいくかどうかのカギは検査部が握っている」とした。また、臨床微生物の専門家(Clinical Microbiologist)として、いままで以上に微生物に関する知識を深め、臨床側に情報提供すれば、より貴重な存在になるとの考えを示した。 わが国では、セラチアによる院内感染、レジオネラ菌のアウトブレイクなど、感染症に関するさまざまな問題の発生が後を絶たないが、欧米では、WHOや米国のCDCを中心に感染症に対して活発な活動が行われ、多くの施設で感染制御に関する精力的な取り組みが行われている。 欧米では、感染症の疾患としての特殊性が理解され、感染症の問題は単に1医療施設だけの問題(リスク)に止まらず、広く社会全体にかかわる危機(クライシス)であるという共通認識があるが、わが国では欧米に比べ感染症に対する危機意識の薄さに加え、感染管理の組織化が立ち遅れており、いかに感染危機管理のシステム化を構築できるかが大きな課題となっている。 米国CDCでは、より効果的な感染管理システムを構築するためには、感染管理室や感染制御部を設置するなどして、チーム医療による感染管理を行うことが望ましいとしている。感染対策チームでは、●サーベイランスの実施、●患者の医療・看護・介護に当たる人たちへの直接的指導と訓練、●感染に対する基本指針や手技の確立、●感染に関する情報や専門家の指導の提供、●アウトブレイクや集団発生の調査――が基本的作業となる。 なかでも、サーベイランスの実施は最も重要な作業であり、サーベイランスは、検査部のデータをもとに、病棟と患者の情報を合わせて進めていく方法が最も完成度が高いとされている。 米国では、主に看護師がサーベイランスを行っているが、この基礎になるデータは臨床検査技師が出している。そのため、臨床検査技師には臨床微生物の専門家(Clinical Microbiologist)としての役割が期待されている。 Clinical Microbiologistを目指すためには、いままで以上に微生物に関する知識の習得が必要になる。コンピュータを駆使して、疫学、病原性、伝播性、薬剤感受性などの情報を仕入れ、医師に分かりやすく情報提供すれば、臨床側にとって貴重な存在になる。 賀来氏は、「ベッドサイドにも積極的に出向いてもらいたい。われわれの施設では、月曜日と水曜日の午前中2時間かけて病棟を回り、月曜日には血液・免疫内科に出向いている。患者さんの病状や病態が実際にどうなっているのか、どのような状態で検体が検査部に送られてくるのかなどを臨床現場に出向き、肌で感じてもらいたい」とした。 また、情報ネットワークの構築も感染管理を行う際の重要な要素となる。基本的作業の1つである、感染に関する情報や専門家の指導の提供において、検査部はベースとなる疫学的な情報を持っているため、情報ネットワークのメッセンジャーとして、検査技師は大きな役割を担っていることになる。 わが国には、感染症の専門医が少なく、医学部で細菌学は習うものの、臨床細菌学を習う機会はほとんどなく、医師の感染症に関する知識は十分ではないのが現状。医師が微生物に関する詳細な知識を把握することは困難であるため、臨床検査技師が臨床細菌学の専門家として、さまざまな情報を臨床側に伝えて行く必要がある。 賀来氏は、「例えば、レジオネラの診断を行う際に、医師にレジオネラ菌の尿中抗原キットの存在を知らせるなどといった情報提供をするだけでも、臨床側の見方は変わるのではないか」と述べた。

記事掲載誌   掲載日 2002年11月1日 記事番号 222