*広がるレジオネラ菌被害*循環式温泉増加が背景に*ろ過器で繁殖しやすく*目立つ安全意識の欠如

2002/11/01の北海道新聞朝刊では、温泉ブームで全国的に温泉施設が増える中、入浴で重い肺炎を起こすレジオネラ菌による集団感染事故が後を絶たないことを指摘している。今夏、宮崎県日向市で起きた集団感染事故は死者7人に上る過去最悪の規模に拡大した。健康的で清潔なはずの温泉施設でなぜ、集団感染が多発するのか。その背景として、いくつもの浴槽を備えた大型施設が増えていることが浮かび上がってきた。 環境省によると、2000年の全国の温泉施設数は約6200と10年前に比べてほぼ倍増。旧来の「温泉ブランド地」以外の場所で、いくつも浴槽を備えた豪華な大規模施設が増えているのが最近の特徴だ。 それを支えているのが、1000メートルや2000メートルの地下深くでも温泉を掘り当てる掘削技術の発達と、湯を再利用する循環装置の開発である。 「日本全国、地中深くを掘ればどこにでも温泉が出ておかしくない。地中深くは湯の噴出量が少ないのが問題点だが、循環装置を使うことで克服できた」とある専門家は解説している。 だが、皮肉なことに、こうした新しい大規模施設が増えるのに連れ、集団感染は増加してきた。日向のほか、これまでに死者が出た茨城、静岡、鹿児島の集団感染は、温泉と水道水に湯の種類は分かれるが、いずれも循環装置を使った大規模施設だった。 レジオネラ菌に詳しい遠藤卓郎・国立感染症研究所室長によると、循環装置で長期間湯をためていると、ろ過器などにたまった湯あかなどを養分として菌が繁殖しやすくなる。 遠藤室長は「利用者には新しく大きな温泉なら安心という風潮があるが、大きい施設ほど安全管理が難しい上に、湯量の関係から循環式になる。経営者は一層の衛生管理意識を持つことが必要」と指摘する。 過去の集団感染の教訓から厚生労働省は昨年、1週間に1度の湯の交換や塩素消毒の方法などを定めた対策マニュアルをまとめた。 だが、罰則規定もなく、どれだけ効果があるのか疑わしい。実際に北海道や鹿児島、山梨県の過去の調査では半数以上の施設が、厚生労働省のレジオネラ水質基準を満たしていなかった。同省幹部は「全国の公衆浴場の3、4割は基準を満たしていない。特に自治体などが新規参入した場合は、経験がないためか安全意識が欠如している場合が多い」と実情を明かす。 全国の温泉を調べた松田忠徳札幌国際大教授は「温泉はわき出た瞬間から劣化する。湯を1週間に1回しか交換しなかったり、消毒のために塩素を大量に入れたりするのでは、もはや温泉ではない。利用者の側にも分かるように情報公開が必要だ」と訴えている。

記事掲載誌   掲載日 2002年11月1日 記事番号 221