*◎社説レジオネラ感染湯恋しい季節、用心を

2002/11/04の中国新聞朝刊 によると、根強い人気のある温泉や公衆浴場でレジオネラ菌に感染するケースが多発している。宮崎県内では今年、お年寄りら7人が死亡する事件が発生。あらためて感染症の恐ろしさを見せつけた。厚生労働省が、対策の遅れをきたさないよう都道府県に対し、感染疑惑のあった施設は早めに使用中止する措置を指示している。お湯の恋しい季節、十分な用心を求めたい。 衝撃的な集団感染は、宮崎県日向市の第三セクター「日向サンパーク温泉」。9月中旬までに7人がレジオネラ肺炎で亡くなった。7月にオープンしたばかりのうえ大浴場、露天ぶろ、サウナなどを備える最新施設の出来事で、余計に注目される形となった。中国地方でも、山口県で厚労省の水質基準(100ml当たりレジオネラ菌10個未満)を満たさない温泉や浴場を一時営業停止した。広島県では急きょ、公衆浴場許可施設の総点検を実施。多くの人が身近な不安を感じるのは無理もない事態である。 レジオネラ菌感染がやっかいなのは、最新設備でも起こりうるという点にある。菌は自然界に存在し、川や湖の表面にいる。人工的な環境下の摂氏36度くらいで最もよく増殖するといわれる。浴場や温泉などが感染場所となるのはそのためである。特に循環式浴槽の循環器周辺の生物膜(ぬめり)が保護する役割を果たして増殖し、菌を含む細かい水滴を入浴者が吸引して感染に至るのが典型例である。 日向市のケースは死者の多さで大問題となったが、ここ数年も死者を伴う感染事件が頻繁に発生してきた。一昨年は静岡県、茨城県の温泉や福祉センター入浴施設で複数の死者が出ている。しかし、厚生労働省がレジオネラ症を感染症の届け出対象にしたのは3年前の春と、後手を引いたのは否めない。水質基準などの公衆浴場に関する指針についても、自主検査に委ねられて強制力はない。 公衆浴場法や自治体の施行条例も「清潔を保つ義務がある」といった精神規定の色合いが濃く、直接的な罰則もないため管理に対する緊張感は、いまひとつと言わざるを得ない状態である。また、公衆浴場や温泉の周辺は、根強い人気と裏腹に運営面で従事者の高齢化や、事業の零細化という実情も抱えているといわれる。温泉や浴場などは多くの人が出入りするリラックス施設という側面もあって、繁忙期ほど管理が甘くなる傾向がある、と言う関係者もいる。 法律や自治体の条例強化という選択も考えられる。一方で感染防止は、最終的には当事者の衛生管理の徹底がカギとなる。指導や調査という行政の役割が重要であるのと並んで事業者を対象とする講習会や、利用者側の安全意識向上などまで含め、日常の対応の積み重ねも欠かしてはならない。

記事掲載誌   掲載日 2002年11月4日 記事番号 217