温浴施設の微生物汚染の現状と対策

1.はじめに
近年では、日帰り入浴施設や旅館、ホテルなどで、多くの人々が温泉水や炭酸湯、泡風呂など様々な形態の温浴施設を利用している。温泉施設では、レジオネラ問題を中心として、微生物汚染の対策を解説する。

2.浴槽水のレジオネラ問題の経緯
2000年に静岡県と茨城県で、2002年に宮城県と鹿児島県で、開業して間もない入浴施設を感染源とするレジオネラ症の集団発生が起きた。温浴施設の微生物汚染、とりわけレジオネラ属菌汚染に対する関心が高まり、実態調査と汚染防止対策がなされてきた。

3.温浴施設の微生物汚染状況
1)レジオネラ属菌
日本全国の温浴施設浴槽水のレジオネラ属菌検出率は2001年は30.9%、2003年にかけて低下し14.0%と約半分になったが、その後は2012年まで大きな変動はなく13.0%程度である。温泉水は浴槽水全体(水道水含む)よりも高い検出率である。温泉水の利用形態の違いでは、掛け流し式は循環式と大差ない検出率、菌数である。掛け流し式温泉浴槽水は、残留塩素濃度管理が適切に行われない場合が多く、レジオネラ属菌の検出率が高い事が示された。
2)アメーバ類
合計237施設の温泉浴槽水試料685検体を調査した結果、何らかのアメーバ陽性検体は315検体(検出率46.0%)であった。

4.温浴施設の衛生管理基準
温浴施設の衛生管理要項は、「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」に示されている。特に留意するべき事項として「レジオネラ症の発生の事例を踏まえて、浴場施設の衛生管理、構造設備上の措置を行う必要がある」としている。床や壁、排水口等に汚れや、真菌類等微生物の付着が無いよう、清掃消毒により清潔で衛生的に保つことが求められている。

5.温浴施設の微生物汚染対策
浴槽水のレジオネラ属菌防止対策は、設備構造面と維持管理面から考える。
温泉水で、アンモニウムイオン含有、遊離塩素の消費が速く消費量が大きい、pHが高い等の水質では、遊離塩素管理による対策が困難である。こうした温泉水使用の場合は、浴槽水中にモノクロラミンを3mg/L程度維持することで、レジオネラ属菌抑制対策が改善される。浴槽水から高菌数のレジオネラ属菌が検出される割合は小さいが、100CFU/100ml未満の菌数が検出される浴槽水は10.5%と少なくない。残留塩素が維持されていても検出される場合があり、バイオフィルムの存在が原因と考えられる。対策は、化学洗浄によりバイオフィルムを除去することであるが、設備構造を十分に理解したうえで洗浄残しを無くす必要がある。

6.レジオネラ属菌検査
浴槽水のレジオネラ属菌検査は、温浴施設の営業自粛にも影響する重要な検査である。検査は培養法と遺伝子法があり、培養法は菌数を定量化でき、定期検査に使用される。検査機関は、外部精度管理などを利用して検査精度の維持向上に努めることが望ましい。イギリスのPHE(Public Health England)で外部精度管理プログラムを運用しており、実用的な検査精度の評価ができる。遺伝子法は、迅速検査の特徴から除菌洗浄後のレジオネラ属菌不検出を早急に判断するのに使用する。遺伝子法では死菌の存在も陽性と判定するため、培養法に比べて陽性率が高い。最近では、EMA-qPCR法の採用により、遺伝子法陽性、培養法陰性の不一致を60%削減し、より正確な判定ができる。レジオネラ属菌対策は、正確、迅速な検査に基ずいて行うことが大切である。


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