レジオネラ症の国内外の動向

患者発生状況
レジオネラ症は4類感染症(全数把握)であり、診断した場合にはただちに保健所に届ける義務がある。患者の届出数は2004年までは年間150例程度であったが、2005年から増加し新型インフルエンザの大流行があった2009年にいちど減少したものの、その後一貫して増加している。2014年は暫定値ながら1,236例となった。

環境における生息状況
現在、レジオネラ属菌には57種が報告されていてそのうち、人から分離あるいはDNAが検出された菌種、肺炎患者で血清抗体価の上昇をもたらした菌種は30種である。道路の水たまりやシャワー水(浴用施設)の検出率が高く、次いで浴槽水、冷却塔水、修景水となっている。多数の加湿器の調査はまだなされておらず検出率は不明である。

培養法(斜光法)
実体顕微鏡を用いてコロニー観察し、その特徴的なモザイク様コロニーの外観を観察すること、コロニー由来のDNA検査を合わせて実施すること、長波紫外線下の青色自発蛍光観察と組み合わせることによって多様性のあるレジオネラの菌株を、3日目まで培養を短縮し分離できる。

遺伝子迅速検査
平成27年3月末に「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」が厚生労働省健康局生活衛生課長通知として改正され、迅速検査の利用が記載されている。塩素消毒すると菌は増殖できなくなり培養法で不検出となるが、核酸はしばらく残り検出される。レジオネラの核酸が検出されることは、レジオネラの増殖する環境が存在したことを示唆し、洗浄効果の判定(陰性証明)とともに衛生管理に役立てることができる。
伝子増幅による生菌の選択的な検出は、EMA処理により死菌由来のDNAの増幅を抑制することで実現され、培養法との相関という意味では冷却塔水より浴槽水の検査に適している。LC ENA qPCR法は平板培養法と高い相関を示した。EMA qPCR法の平板培養法に対する感度、特異度は、いずれもLA MP法より高かった。LC EMA qPCR法と平板培養法の菌数比較では高い相関を示し全体として平板培養法の菌数を反映していた。

ATP測定を利用した衛生管理
ATPを利用して日常的にバイオフィルムや浴槽水中の菌数を管理すれば、レジオネラ検出率を低くすることが可能である。ATPにより相対発光値を閾値以下に保つことによりレジオネラの汚染リスクを下げる衛生管理方法を例示した。

国内散発事例
日本では7月にレジオネラ症の患者が多く、梅雨時期の温度と湿度が菌の増殖に都合が良いためと考えられている。家庭の24時間風呂で感染した事例、少数の菌でも感染する溺水事例、24時間風呂における水中出産による新生児感染事例、腐葉土からの感染事例、高圧洗浄機を使用して感染した事例、公衆浴場のシャワーからの感染事例、太陽熱温水器を利用した給湯系からの感染事例がある。

国内集団感染事例
日本における2008年以降の集団感染の事例では、1事例あたり2〜9例の確定症例が報告されている。高齢者福祉施設の事例を除き全て入浴設備が感染源となっているのが特徴である。

海外散発事例
日本で報告されていない事例としては、歯の治療に関連して感染した事例、粉ミルクによる新生児の感染事例が報告されている。

海外集団感染事例
海外の大規模な集団感染事例では、入浴設備による感染は少数で、冷却塔を感染源とするものが多い。50名以上の患者の報告された事例は少なくとも34件ある。

外部精度管理
適切に検査されず非検出あるいは検出される菌数が少ない検査機関に検体が集まることがないように、検査機関の外部精度管理が必要である。ヨーロッパなどではHealth Protection Englandにより、米国では米国CDCにより実施されている。

分子疫学
SBTにより、結成分1の国内分離株を遺伝子型でグループ分けすると、浴槽水分離株が多く含まれるB1、B2、B3、冷却塔水分離株が多く含まれるC1、C2、土壌水たまり分離株が多く含まれるS1、S2、S3、感染源不明の臨床分離株が多いUグループの大きく9つに分かれることを見出した。

防止対策
遊離塩素消毒がすべての浴槽の安全を担保するとはいいがたい。研究班では、米国の水道で実用化されているモノクロラミン消毒に着目し、モノクロラミン消毒の入浴施設への応用について検討を行った。改正された「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」で、モノクロラミン消毒が掲載された。


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