モノクロラミン消毒による浴槽レジオネラ属菌の衛生対策

目的
循環式浴槽では肺炎の起因菌であるレジオネラ属菌の汚染が問題となっている。死亡例を含む集団感染が繰り返されたことから、厚生労働省(当時は厚生省)の指導のもとで緊急避難的に遊離塩素消毒による管理が行われ、そのまま平常時の対応となった感がある。しかしながら、今日に至るまで浴槽からレジオネラが検出されており、遊離塩素消毒が全ての浴槽の安全を担保するとは言い難い状況にある。井水や温泉水など多様な水質(泉質)が存在し、また薬湯では添加された薬物成分と塩素が反応したり、高pHの条件下では遊離塩素の効果が減じたりしているものと考えられる。また臭気などが敬遠されて塩素の使用が必ずしも徹底されない恐れもあり、多方面から代替消毒方法が求められている。本研究では米国の水道で実用化されているモノクロラミン消毒(結合塩素の1種)に着目し、モノクロラミン消毒の浴用施設への応用について検討を行った。

方法
モデル循環式浴槽を用い、2週間にわたってモノクロラミン消毒下で入浴を行い、この間のレジオネラ属菌や塩素濃度を測定した。モノクロラミン溶液は、アルカリ性(pH8.4)条件下の井水1Lに次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、次いで塩化アンモニウム水溶液を添加・混合することで生成した。生成したモノクロラミンをモデル循環式浴槽に加え、その後は不足した塩素を1日1回程度追加し、濃度維持 (3mg/L)に努めた。塩素濃度はDPD吸光度法(全塩素(結合塩素と遊離塩素の和)、あるいは遊離塩素)、インドフェノール法(モノクロラミン)、DPD/FAS滴定法(遊離塩素、モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミン)、サリチル酸法(モノクロラミン)、およびHS-GC/MS法(トリクロラミン)の各種方法により測定した。

結果
2週間の消毒管理期間中、レジオネラ属菌とアメーバは検出されなかった。同時に測定した従属栄養細菌数も低く、微生物の増殖は抑えられていた。DPD吸光度法(全塩素)は、他の複数のモノクロラミン測定方法と同等の測定値が得られたことから、DPD吸光度法による全塩素濃度はモノクロラミン濃度に相当するものと判断され、現場向きの測定法として利用が可能であった。DPD/FAS滴定法では、ジクロラミンがわずかに検出された程度にとどまり、塩素臭の主要な原因となるトリクロラミンは検出されなかった。高感度なHS-GC/MS法による測定においても、トリクロラミンは検出されなかった。なお、ボランティア入浴者から、いわゆる塩素臭がほとんどなかったとの感想を得ており、モノクロラミンによる消毒では臭気の低減が期待できた。

結論
浴槽における遊離塩素消毒の代替法として、モノクロラミン消毒が有効であることを見出した。


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